ジャーナル編集者はサラミ法にどう対処すべきか:ケーススタディ

ジャーナル編集者はサラミ法にどう対処すべきか:ケーススタディ

事例:あるジャーナルの編集委員が、自誌の出版論文と別誌で最近出版された論文の内容が重複していることに気付き、ジャーナル編集者に知らせました。編集者は、問題をより良く把握するために、自誌論文の査読者に状況の調査を依頼しました。


調査の結果、査読者はこれが

サラミ法である疑いを強めました。著者は、単一の研究結果を3つに分割し、それらを3誌にまたがって出版しているらしいことが分かったのです。編集者は著者とコンタクトを取ろうと試みましたが、返答は得られませんでした。決定的な証拠をつかめずにいた編集委員は、論文の撤回ではなく、懸念の表明を行うことにしました。


数ヶ月後、論文の撤回を要求する匿名のメールが編集者に届きました。メールには、「論文は明らかにサラミ法の事例であり、このような非倫理的行為への対処として懸念の表明だけでは不十分である」と書かれていました。それどころか、メールの差出人は、論文を撤回しなかったジャーナルが不正行為を助長しているとさえ感じているようでした。この状況にどう対処すべきかはかりかねた編集委員会は、編集者を通じてエディテージ・インサイトに相談することにしました。


対応:サラミ法が疑われる論文について、ジャーナルのここまでの対処方法に問題はありませんでした。その対応は、出版倫理委員会(COPEのガイドラインにも準拠していました。不正行為の決定的証拠をつかめていない調査段階での論文撤回は適切ではないため、懸念の表明に留めたのは正しい選択であったと言えます。


しかしながら、エディテージ・インサイトはこの問題に対し、懸念の表明に加えて以下の対応も取るようアドバイスしました:
 

  1. 不正の疑いとその調査プロセスおよび受信した匿名メールについて、ジャーナルの出版元に知らせる。
  2. 不正の疑いについて、責任著者(corresponding author)に再度説明を求める。
  3. サラミ法の事例に該当するかどうかを確定するための再調査を行う(この件に関係する編集者/査読者2人以上の意見を求める)。
  4. ほかの2論文が出版されたジャーナルの編集者に不正の疑いについて知らせる。
  5. 責任著者の所属先に不正の疑いがあることを知らせ、調査への協力を仰ぐ。
  6. 必要に応じてCOPEにアドバイスを求める。


匿名メールに対しては、「本件は調査中であり、調査が完了次第COPEのガイドラインに則って然るべき措置を取る予定である」と伝えるようアドバイスしました。


まとめ:懸念の表明は、論文に信頼性を欠く可能性があることを読者に伝えるために行われるもので、完全な撤回に先がけて行われることもあります。編集者が誌面上で懸念の表明を行うのは、その一件が未解決/調査中で、決定的証拠がない場合に限ります。また、編集者は論文の公正性を必要以上に疑うべきではなく、懸念を表明する前に、(臨床研究が含まれる場合などにおいて)不正が事実だった場合の影響や、守秘義務、読者に伝える必要性について慎重に検討する必要があります。


COPEの撤回ガイドラインは、論文を撤回すべきときと懸念を表明すべきときの条件について、以下のように詳しく定めています:


ジャーナル編集者は、以下のような場合に論文の撤回を検討しなければならない:

  • 不正行為(データのねつ造など)または純粋な誤り(計算ミス、実験ミスなど)の結果、論文が信頼性を欠いているという明確な証拠がある場合
  • 論文の内容が、相互参照、承諾、正当な理由なしに過去の出版物と重複している場合(多重出版)
  • 論文に剽窃箇所が含まれている場合
  • 非倫理的な研究が報告されている場合


一方、以下の場合は懸念の表明に留めるのが適切である:

  • 著者による研究または出版不正の疑いに対して、決定的な証拠がない場合
  • 論文が信頼性に欠けているという証拠があっても、著者の所属機関が調査に消極的な場合
  • ジャーナル編集者が、不正行為の疑いに対する調査が公平もしくは決定的なものではないと感じた場合
  • 調査は行われているものの、結論が出るまでに長い時間がかかることが見込まれる場合


ジャーナル編集者は、COPEのガイドラインとフローチャートで、不正行為の疑いへの対処法を理解しましょう。対処法について確信が持てない場合には、COPEにアドバイスを求めましょう。


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