博士課程進学前に知っておくべき9つのこと

博士課程進学前に知っておくべき9つのこと

博士課程への進学を希望する学生は、世界中にいます。Facebookの博士号取得者のグループには、何千人もが登録しています。私は自分の経験から、海外の博士課程に進学する難しさをよく知っています。何十通もの不合格通知を受け取りましたが、最終的にはドイツ学術交流会(Deutscher Akademischer AustauschdienstDAAD Graduate Program Scholarship)のメンバーに選ばれることができました。それまでに2年以上を費やしましたが、私は、知っておくべきことを知らないまま、博士課程進学というプロセスに取り組んでいたようです。博士号は、ほかの学位とはまったく異なるものです。だからこそ、憧れの博士課程に願書を出す前に、準備をしっかり整える時間を取るべきだと思います。

この記事では、博士課程に出願する前に知っておけばよかったと感じることを紹介します。これらの情報を事前に知っておけば、時間の節約になり、博士課程への出願を進める際のイメージも沸きやすくなるはずです。


1. どの国の博士課程に進学するかを慎重に検討する


世界には195の国があり、当然、博士課程に進む価値のある環境がすべての国で整えられているわけではありません。進学先には、研究開発と高等教育に潤沢な予算を投じていて、持続的に発展している国を選びましょう。このような国であれば、奨学金を獲得できる機会が豊富にあり、生活面での苦労が少ないでしょう。また、博士号取得後の就職口が豊富な国を選ぶことも重要です。

似たりよったりのシステムを採用しているようで、教育へのアプローチは、国によって異なります。そのため、進学を希望する国のガイドライン、要件、プロセスなどを、出願前にしっかり確認しましょう。


2. 博士課程に進むには忍耐が必要


私の場合、修士号を取得してから博士課程への進学が認められるまでに3年かかりました。修士課程を修了してすぐ、母国の博士課程に進学したのですが、環境に不満があったので、その後もさまざまな国の博士プログラムに願書を出し続けました。このプロセスには忍耐が必要です。新たな機会を粘り強く探し続けなければなりません。あるときから、出願した数も数え切れなくなりましたが、それでも願書を出し続け、ようやく進学が認められたのです!結果が出るまでくじけずに、意志の力と自尊心を保ち続けましょう。不合格通知を受け取ったら、次に出す願書をどう改善すべきかを考えましょう。失敗から学ぼうとする姿勢を持ち続けられる限り、失敗を恐れる必要はありません。


3. 時間をかけて完璧な願書を書き上げる


これまでの科学的・学術的業績を出願書類に分かりやすく示すことは、きわめて重要なポイントです。過去に経験した研究、学会参加、論文出版、インターンシップ、奨学金などの履歴をすべて載せましょう。学生団体の一員としての経験があるなら、迷わずその情報を記載しましょう。サークルやAISECなどの国際団体についても同様です。また、選考委員にポジティブな第一印象を与えるために、CV(履歴書)やカバーレターは、目を引く見栄えの良いフォーマットに整えましょう。完璧な願書を作り上げるためには、あらゆるディテールにこだわらなければなりません。


4. 英語が母国語でない場合は、英語力認定試験を受ける


多くの大学や研究機関は、出願者の英語力を保証する証明書の提出を要求しています。つまり、それまでのカリキュラムを英語で受けてきた経験があったとしても、英語力認定証を得るために、時間とお金を投資する必要があるということです。個人的には、幅広く認められているIELTS(アイエルツ)がベストなオプションだと思います。なお、博士課程への進学を希望するなら、最低でも7.0程度の成績が必要になります。出願書類を書き始める前に、それぞれの国の博士課程出願者への要件をリサーチしておく必要があるでしょう。例えば米国の大学の多くは、博士課程の出願者に対し、大学独自の英語試験を用意しています。非英語圏の国を目指す場合は、その国の言葉を学習しておけば選択肢が広がるでしょう。もちろん、新たな言語を学ぶことは簡単ではありませんが、英・米・豪・ニュージーランド以外の国に行く場合は、その覚悟も必要になります。


5. 修士課程在籍中または修了後まもないうちに論文出版を経験しておく


私がキャリアの中で犯した最大のミスは、修士課程に在籍している間に英語論文の出版を経験しておかなかったことです。論文出版の経験は、研究者として科学を追求する準備ができていることを選考委員に示す、もっとも説得力のある材料になります。研究能力と専門性をアピールするためにも、博士課程への出願前に、少なくとも1本の論文を業績リストに載せられるようにしておきましょう。また、修士課程にサイエンティフィック・ライティングのコースがあれば、受講しておくことを勧めます。私は、母国で博士課程に在籍していた2年の間に研究論文の書き方を学び、初めての論文を出版しました。


6. 修士課程在籍中の少なくとも1学期は、学術交流プログラムに参加する


私は交流プログラムに3回参加しました。その経験を通じて、研究を進め、ライティングスキルを学び、いろいろな人々と出会うことができました。また、さまざまな習び方を経験し、分野内で人脈作りをする機会も得られました。交流先の大学の教授に推薦文を書いてもらうときは、話をスムーズに進めることができました。ただし、交流プログラムに参加すると多くの時間を取られるため、論文出版に集中する時間を確保できなくなる恐れがあるので、注意しましょう。振り返ってみると、私は交流プログラムに力を入れ過ぎたかもしれません。12回の参加に留めておけば、修士課程在籍中または修了直後に、論文出版のための時間を確保できていたかもしれません。


7. 指導教官は慎重に選ぶ


海外の博士課程に進学する場合は、指導教官がどのような人物なのかを予測するのは困難です。指導教官と初めて会うのは、おそらく面接のときになるでしょう。とは言え、大学のウェブサイトをチェックしたり、その指導教官に師事する学生にメールするなどして、指導教官の情報を集めることは可能です。修士課程と同じ大学に進学する場合は、すでに講義などを受けているはずなので、指導教官の人物像は把握しやすいでしょう。それ以外のケースでは、研究者としての業績だけでなく、実際に指導を受けたことのある学生の意見を聞くようにしましょう。


8. 自分の専門分野にもっとも近い分野の博士課程に進む


博士課程には、分野ごとに多種多様なポジションがありますが、どの分野に出願するかは慎重に検討しなければなりません。すでに経験のある分野、または修士論文の分野にもっとも近い分野に出願すれば、合格する可能性は高まるでしょう。とは言え、修士とは異なる分野をきわめたいという情熱があるなら、躊躇せずに踏み出しましょう。最近は、異なる分野に進む人も増えているようです。ただし、違う道に進む場合は、そのような選択をした説得力のある理由を願書に書けなければなりません。

また、例えば顕微鏡の扱いや、Pythonといったプログラミング言語など、分野に関連した特別なスキルを身に付けられるクラブ活動等にも積極的に参加することを強くお勧めします。これらの経験を願書に書けば、特定のスキルが要求される分野に進める可能性が高まるはずです。


9. 博士は経済的に報われないことを理解する


博士は、特定の専門分野を突き詰める意欲と情熱がある人が進む道であり、博士号を取得したからといって、安定した将来が約束されるわけではありません。博士号を持った研究者は、分野の知見への貢献と、若い研究者の育成という責務を負います。責任は大きいですが、学術界で終身雇用の地位(テニュア)を手に入れるのは簡単ではありません。博士は、効率性や経済的安定を求める人が進むべき道ではありません。もちろん、後に学術界を離れて民間企業に就職することも可能です。博士号取得者のスキルは、産業界においても高く評価されています。博士号を取得する過程で、分析能力、回復力、粘り強さなど、さまざまなスキルや力を身に付けることもできるでしょう。自分の価値に自信を持ってください!

以上のように、(とくに海外の)博士課程に進学するに当たっては、さまざまな側面があることを知っておかなければなりません。博士課程に合格するには時間かかるので、願書の作成にはなるべく早く取り掛かるようにしましょう。科学的業績を整理し、書類やフォルダにまとめておくと便利です。完璧な願書を仕上げるためには、まとまった時間を割くことも必要になるでしょう。しかし、何より重要なのは、研究への情熱と、そのキャリアパスが自分の進むべき道であることに確信を持つことです。その思いに迷いがないなら、すぐに願書の作成に取り掛かりましょう。失敗しても、それを糧にして、次はより優れた願書を書き上げればいいのです。それを繰り返すうちに、志望先の合格通知を受け取れる日が来るでしょう。幸運を祈ります!

*Photo by Andre Hunter on Unsplash

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