生産性が高い研究者の9つの習慣

生産性が高い研究者の9つの習慣

研究は一筋縄ではいかないものです。研究者は、マルチタスクを抱え、締め切りに追われながら、管理業務もこなしています。こうした状況と向き合いながら成功を収めるには、どうすればよいのでしょうか?この記事では、研究生活をスムーズに進め、成果を上げられる研究者になるための習慣を紹介します。


目標を設定する


現実的で明確な目標を設定することは、成功を収めるために大いに役立ちます。目標を設定することで、日々の取り組みと長期的な行動に方向性が生まれます。目指すべき目標があれば、モチベーションの維持にもつながるでしょう。


以下は、目標の設定と達成のための指針です:
 

  • 目標設定はSMARTに。設定する目標は、具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Attainable)、妥当(Relevant)、期限付き(Time-bound)でなければなりません。設定した目標が適切かどうかを確かめたいときは、これらのキーワード(SMART)が当てはまっているかどうかを目安にしましょう。
  • サブ目標を設定する。目標を小さく分割することで、より大きな目標を管理しやすくなります。小さな目標を11つクリアしていくことで、達成感を得ながら進めます。
  • 進捗を管理する。定期的に自分のパフォーマンスと目標を見直しましょう。こうすることで、パフォーマンス向上や目標達成のための修正点が見つかります。
  • アカウンタビリティ・パートナーを持つ。アカウンタビリティ・パートナーとは、順調に進んでいることを確かめるために、自分の目標や進捗を報告する相手です。これは、目標を共有し合えて切磋琢磨できる同僚などにやってもらうのが理想的です。


秩序を保つ


「今日一日、私は何をしていたのだろう?」――このように思う日が頻繁にある方は、本来なら一日を支配するべきところを、一日に支配されてしまっているということです!研究者には、研究の実施、論文の執筆、分野の最新情報の入手、共同研究者への対応など、日々やるべきことが山積みです。こうした状況の中、多くの研究者は、業務を整理することで複数のタスクをこなしています。整理されていれば、優先順位が明確になって、マルチタスクが進めやすくなり、タスクの漏れもなくなるでしょう。


秩序を保つことで生産性を上げられるものは、以下の通りです:
 

  • 一日(時間):各タスクに、一日の中の決まった時間を割り当てましょう。たとえば、論文執筆は午前中か夜間(もっとも集中できそうな時間)に行う、管理業務などは昼食後の比較的集中力の落ちる時間帯に行う、といったことです。
  • データ:研究データの管理には、データ管理ツールを活用しましょう。また、研究に役立ちそうな論文は文献管理ツールで、引用文献はAnnotated Bibliography(注釈付き参考文献)で整理することができます。資料を整理しておけば、必要なときに必要なものをすぐに引き出すことができます。
  • コミュニケーション:受信箱にフォルダを作り、メールを種類別にフォルダ分けしておけば、読み直しや返信がスムーズになります。


時間を管理する


適切な時間管理は、研究プロジェクトの健全性だけでなく、自分自身の健康を維持するためにも重要です。適切に時間を管理できないと、精神的にも不安定になり、疲労やストレスが蓄積してしまいます。これが長期間続けば、燃え尽き症候群につながることもあるでしょう。研究室の外での生活を確保する意味でも、時間管理は大切です。


時間を管理するための第一歩は、時間を追跡することです。ミシガン大学アナーバー校の生態学者、メーガン・ダフィー(Meghan Duffy)氏は、「時間をうまく管理するためには、時間をどう使っているかを知ることです」と提案しています。ダフィー氏は、ポスドク時代に自分の時間の使い方を記録するようになり、その結果、ニュースを読むのに多くの時間を費やしていることに気付きました。自分が時間をどのように使っているかを知ることができれば、どの活動を続け、どの活動をやめたり減らしたりすべきかを判断できるはずです。

抱えているタスクに対して、以下の戦略で臨んでみましょう:
 

  • 優先順位を付ける。優先順位を付けることで、時間と成果に集中できます。優先順位を決めるには、「prioritization matrix」などのツールも便利です。これは、フォーカスすべきタスクを、緊急性と重要性という2つの基準で判断するものです。
  • 特定のタスクを一括処理する。メールを受信するたびに読んで返信するのではなく、一日の決まった時間にまとめて対応しましょう。
  • 可能であれば外注・委託する。こうすることで、自分が充実感を持てるタスクに時間とエネルギーを使うことができます。


時間管理のための方法については、次の記事も参考にしてください:10 Tried and tested time management tips for researchers


情報をアップデートし続ける


科学は絶え間なく進化しています。したがって、研究者として、業界の動向や分野の最新情報に敏感でいることが重要です。情報をアップデートし続けることで、優れた共同研究者との出会い、研究に役立つ情報、新たな助成金獲得の機会、学会への参加機会など、新たなチャンスを手にするきっかけが得られるでしょう。情報に強い研究者は優れた研究者と言っても過言ではありません。したがって、情報をアップデートし続けることはきわめて重要です。


しかし、忙しいスケジュールの中で情報をインプットするための時間を捻出するには、どうすればよいのでしょうか?上記の時間管理術とは別に、以下のようなことを心掛けましょう:
 

  • 毎日少しずつでも時間を捻出する。一日10分(コーヒーブレイクの時間など)でも構わないので、関連するニュースや情報をインプットする時間を毎日確保しましょう。わずかな時間でも、日々積み重ねることで、大きな成果となります。
  • 速読術を身に付ける。速読術を身に付ければ、時間をかけて深く掘り下げなくても、要点だけを素早く把握することができます。これにより、関連性の高い情報かどうかを素早く判別することができます。「情報過多」な現代社会においては、きわめて有益な能力と言えるでしょう。


積極的でいること


積極的でいるということは、一歩先を行くために、先を見越して考えるということです。


具体的には、研究が遅滞なくスムーズに進むように、すべての研究要件をあらかじめよく確認しておくといったことです。また、研究プロジェクトが直面し得る困難(承認取得の遅延など)を予測し、それらへの対処を準備しておくことも必要です。場合によっては、バックアッププラン(プランB)を用意しておき、プランAが失敗したときに備えておく必要もあるでしょう。


論文出版も、積極性が重要となる領域です。論文を書き始める前にターゲットジャーナルを決めておけば、そのジャーナルのスタイルに合わせて原稿を作成できるので、時間を節約できます。また、ジャーナルの査読プロセスや論文の撤回方針を事前に確認しておけば、予期せぬ遅延が発生した場合の策も練っておけます。さらに、ジャーナルがあなたの論文の査読者選びに苦戦する場合に備えて、あらかじめ査読者候補をリストアップしておくのもよいでしょう。


積極的でいることは、キャリアに大きく役立ちます。たとえば、積極的でいれば、今後のスタンダードになりそうな技術やアプローチを見つけたら、それに関する知識とスキルを習得するための努力をすぐに始められるでしょう。


ネットワークを構築する


研究は基本的に研究室で行われるものですが、研究室の外で進行するものも多くあります。キャリアのどの段階にいようと、研究室の外でのネットワーク(エコシステム)作りは不可欠です。それは、以下のような理由からです:
 

  • 新たな可能性が開ける:ほかの研究者と交流を持ち、ほかの研究者のやっていることを学ぶことで、見識が広がります。新たな視点やアイデアが得られるきっかけにもなるでしょう。
  • 研究の認知度を高めるのに役立つ:自分の研究を他者に紹介することで、研究をより多くの人に知ってもらえます。また、これこそが科学の肝ですが、その研究の恩恵を受ける人も増えるでしょう。
  • 将来的な機会の創出につながる:構築したネットワークが、将来的に何らかの機会を創出するきっかけになることもあるでしょう。ラ・トローブ大学(メルボルン)研究インパクトチームのシニアコーディネーター、ウェイド・ケリー(Dr. Wade Kelly)博士は、「私が現在の職に就けているのは、助けてくれる人々や、仕事の機会に関する情報を共有してくれる人々とのネットワークを作るための努力を惜しまなかったからです」と述べています。
  • 絆を育む:良い経験も悪い経験も、共有し合えば共感が生まれます。また、互いに学び合う機会にもなるでしょう。


ネットワークの構築には時間と労力が必要ですが、テクノロジーのおかげで、今日ではその負荷は少し軽くなっています。もちろん、現実世界でのコネクションが理想的ではありますが、Q&Aフォーラムやソーシャルメディアプラットフォームを通したバーチャルなコネクションもまた、価値あるものと言えるでしょう。


長所を活かす


誰にでも長所と短所があり、人は長所を活かすことで最大限の成果を挙げることができます。自分の長所を把握していれば、日々の仕事の生産性が上がり、より早く成長することができるでしょう。たとえば、朝から集中力を発揮できる人もいれば、夜から本領を発揮する人もいます。あるいは、ネットワーク構築やデータ収集には長けているのに、それらを整理したり保存したりするのが苦手な人もいます。このような場合は、データ管理が得意な人に協力してもらうことです。ボストン大学(マサチューセッツ)の生態学者、リチャード・プリマック(Richard Primack)氏は、「自分がやりがいを感じる仕事だけをやるようにしている」と述べており、「嫌な仕事に多くの時間を割いていたら、充実したキャリアはならない」と指摘しています。生産性の高い研究者は、自らの「得意エリア」を把握しており、その「エリア」に集中することで最大の結果を得ているのです。


ただし、以下の点に注意しましょう:
 

  • 自分の長所を知るには時間がかかる。自分の長所を見つけるには、トライ&エラーを経るしかありません。したがって、若手研究者のうちは、さまざまなタスクや活動を経験しましょう。その中での失敗の経験を通して、自分の長所が見つかるはずです。
  • 「得意エリア」を「楽なエリア」にしない。自分自身に挑戦し続けるためにも、時にはコンフォートゾーンから出ることも重要です。これは、成長につながるだけでなく、新たな長所を発見するきっかけにもなるでしょう。


自分自身を労わる


研究者としての生活には、ストレスが付き物です。重要なのは、そのストレスを放置するのではなく、しっかりと向き合うことです。ストレスを管理する術がないと、最終的には、研究だけでなくあなた自身にも綻びが生じてしまいます。肉体と精神の両面から、自分を見つめましょう。なぜなら、これらは互いに影響を及ぼし合うことがあるからです。


以下に、簡単な自己管理法を紹介します:
 

  • よく休む。週末は、趣味などを楽しむ時間を確保しましょう。休暇も、取れる時に取っておきましょう。また、仕事中も、合間を縫って小休憩を挟むようにしましょう。
  • よく眠る。静かで落ち着ける環境で、十分な睡眠を取るようにしましょう。
  • 運動する。研究はきわめて知的な活動です。ジョギング、ヨガ、ハイキングなどの運動を取り入れることで、脳と肉体のバランスを取りましょう。もちろん、運動は健康を維持する上でも重要です。
  • 相談する。思いや感情を自分1人で抱え込んでしまうのは不健全です。抱えている悩みなどは、話を聞いてくれる友人や同僚、先輩に打ち明けてみましょう。それでも気が晴れず、自分だけでは手に負えないと感じたら、専門家の助けを借りることも検討しましょう。


自分を優先させることが仕事に悪影響を及ぼすと考えているのなら、それは真逆です。自分を労わることで、生産性は上がります。その実例として、燃え尽きそうになる寸前で、仕事をしながら自己管理をする術を学んだある研究者の体験談を読んでみてください。


成功を祝う


成功は、苦労の末にようやくつかみ取れるものです。したがって、成功したら、ぜひそれを祝ってください。「論文のフォーマット整理が終わった」、「論文がアクセプトされた」など、大小を問わず、何かを達成するたびにそれを祝いましょう。こうすれば、最終目標に到達するための一歩一歩を確認することができるでしょう。


また、たいていの場合、研究は1人で行えるものではないため、成功に貢献した人々と喜びを分かち合うことも大切です。何かを達成するたびに、関わってくれた同僚、指導教官、査読者、共著者、共同研究者に感謝しましょう。史上もっとも偉大な科学者の1人であるアイザック・ニュートンは、次のような名言を残しています:「私が他の人よりも遠くを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです」。


今後、みなさんが研究者として成果を出し、成功をつかむ日が来ることを願っています!


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参考資料:

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