シュプリンガー・ネイチャーがプランSへの参加を表明:OA化へ前進
世界最大の学術出版社であるシュプリンガー・ネイチャー社が、著者にオープンアクセス(OA)の選択肢を提供するために、プランSの取り組みに参加することを表明しました。この発表により、同社の代表的ジャーナルであるネイチャー誌およびネイチャーブランド誌は、ついに完全OAに移行することになりました。
この決定は、cOAlition S(プランSを通じて世界のジャーナルのOA化を目指す、研究助成機関連合)と討議を重ねた結果です。同連合は、OAの実行に関するガイドラインの変更を図っています。今回の発表は、cOAlition Sが修正版ガイドラインを公開した直後に行われました。
修正された基準に基づき、シュプリンガー・ネイチャーは非OA誌について、各誌のオープンアクセス論文の割合が75%を超えた時点でOAに移行することを承諾しました。(当初提案された割合は50%。)また、オープンアクセス論文の年間増加率の推奨値は5%となりました(以前は8%)。見逃せない点は、2024年末とされていた完全OA化の期限が、必須ではなくなったことです。プランSのガイドラインは2021年1月の発効を予定しているため、出版社各社には、完全OA化までに3年間の猶予が与えられることになります。シュプリンガー・ネイチャーの最高出版責任者、スティーブン・インチコーム(Steven Inchcoombe)氏は、「今回変更された年間の目標増加率などの基準は非常に厳しいものですが、これらを達成できるよう、全力を尽くします」と述べています。
シュプリンガー・ネイチャーがプランSのガイドラインを採用するにあたっての鍵となる主張は、OA出版への需要(研究者によるもの)が、現状ではその供給(出版社によるもの)と同水準にはないため、OAへの急速な転換が実行不可能になるというものでした。その点について、シュプリンガー・ネイチャーとしては、OA出版という方法を検討してもらうことを目指し、研究者に対してオープンアクセス出版のメリット(引用やダウンロードの増加やインパクト指標の向上)をアピールするという形で、OA化を促すよう取り組んできました。
現在、シュプリンガー・ネイチャーは、価格や様式面でのOA化の細部を詰めている段階であり、OAモデルに移行するジャーナルに求められる透明性のレベルについて、より詳細な情報がcOAlition Sから発表されるのを待っている状況です。とはいえ、世界最大のOA出版社(これまでに出版されたすべての即時OA論文の約4分の1を出版)による完全OA化の決定は、業界から歓迎されています。cOAlition Sを支援する民間助成機関であるウェルカム・トラストのオープンリサーチ部門代表、ロバート・キリー(Robert Kiley)氏は、「シュプリンガー・ネイチャーがジャーナルの完全OA化に合意したことは、喜ばしいことです」と述べています。
今回のニュースは、8か月未満でのプランSの実行という点で、OAをさらに推し進めるものですが、このプランへの道のりは、けっしてスムーズなものではありませんでした。期限が一度延長され、連合は、出版社や研究者の反応を踏まえて、定期的にガイドラインを微調整しなければなりませんでした。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)の図書館員、リーザ・ヒンチリッフェ(Lisa Hinchliffe)氏は今回の件について、オープンアクセス論文と購読型論文を織り交ぜて出版するハイブリッドジャーナルに当てはまるものだと考えています。彼女は次のようにコメントしています。「連合は、もともと公表されていた厳しい許容範囲を採用するのではなく、ハイブリッドジャーナルの適切化を図る行動を取り続けているのです」。
あなたはOA誌で論文を出版していますか?今回の発表についてどう思いますか?プランSとOAはどのように変わっていくと思いますか?皆さんのご意見をお聞かせください。
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参考資料:
- Nature to join open-access Plan S, publisher says
- Revised ‘Transformative Journal’ criteria from cOAlition S are “challenging” but Springer Nature commits to transition majority of journals, including Nature
- A faster path to an open future
- Alternative conditions needed for cOAlition S’s Transformative Journal proposal to succeed
- Transformative Journals: Rationale
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