平壌科学技術大学、米政府による渡航禁止措置を懸念
米政府は、「長期に渡る拘束」のリスクがあるとして、自国民の北朝鮮への渡航を禁じることを発表しています。この措置により、すべての米国民が北朝鮮に渡航できなくなり、例外的状況下で渡航する場合も、特別に承認を受ける必要が生じます。米政府は北朝鮮に滞在中の米国人にも出国を求めており、禁止令が実施されれば、総長をはじめとする40人の米国籍職員が在籍する平壌科学技術大学(PUST)に、深刻な影響を及ぼすことになりそうです。
ここ数年の北朝鮮による米国民への処遇や、金正恩氏による大陸間弾道ミサイル発射実験の影響で、両国の緊張状態は高まっています。2016年には米国籍の学生1人が北朝鮮に拘束され、PUSTで働く2人の韓国系米国人研究者は現在も捕虜として拘留されています。数か月間PUSTで会計学を教えていたキム・サンドク(Sang-duk Kim)氏と、同大学の試験農場の管理を任されていたキム・ハクソン(Hak-song Kim)氏は、大学の職務とは関係のない「敵対行為」を行なった疑いで、北朝鮮当局に拘束されました。
PUSTは、北朝鮮で外国籍職員を採用している数少ない学術機関の1つですが、この禁止措置によって40名の職員の入れ替えを迫られるため、厳しい運営事情に直面することが予想されます。政治的な緊張によって米国人の雇用ができなくなるばかりか、韓国人研究者の招聘も難しくなる可能性があります。韓国系米国人で、コンピューター科学を専門とするPUSTの学長、パク・チャンモ(Chan-Mo Park)氏(82歳)は、今回の禁止措置が、英語で授業を行う教育プログラムに大きな影響を及ぼすことを懸念しています。同氏は、同大学がほかにも複数の問題に直面していると説明しています。国連の制裁決議によって中国からの研究資材の購入が困難になっているほか、卒業生に、サイバーテロリズムへの関与の疑いがかけられています。これに対し同氏は、「PUSTがハッカーや“サイバー戦士”の育成と一切関係がないことは、私が保証できます」と明言しています。
外国人に門戸を開いているPUSTは、北朝鮮において貴重な存在であり、その学術的交流が讃えられてきました。しかし、2017年5月、CNNは同大学の職員と学生への統制疑惑を報じています。ジョンズ・ホプキンス大学米韓研究所のマイケル・マッデン(Michael Madden)客員研究員は、PUSTは入学前の学生に対して「政治思想に関する厳しい調査」を行なっており、「外国人職員と接触した場合は報告すること」を義務付けていると述べています。記事では、海外留学を希望する学生に対して、PUSTが授業料の免除を提示していることにも触れています。
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