バイオサイエンス企業の「謝礼金」戦略に学術界はうんざり

バイオサイエンス企業の「謝礼金」戦略に学術界はうんざり

「我が社の製品をあなたの論文に引用してください。ジャーナルのインパクトファクターに応じて100ドル以上をお支払いします!」

2015年の夏、このような件名のEメールを多くの学術関係者が受け取りました。差出人のCyagen Biosciences Inc.はカリフォルニアに拠点を置く開発業務受託機関で、生命科学研究者に遺伝子組み換え動物のモデルやその他サービスを提供する細胞関連製品メーカーです。同社は、出版された論文にCyagen社の製品を引用するとバウチャーを提供しているようです。医学研究者に対するCyagen社のあけすけな申し出に、学術関係者は心底驚き、科学界は激しく反応しました。

Cyagen社は2015年6月以降、研究者に露骨な賄賂的戦略を仕掛けています。同社のウェブサイトには、簡潔に「PCRの新たな意味合い。それは出版(Publish)・引用(Cite)・報酬 (Reward)です」と述べられています。著名な科学ブロガーであるベン・ゴールドエーカー(Ben Goldacre)氏はブログで、Cyagen社の申し出は「明らかに金銭的な利益相反」であり、ジャーナル編集者が注意すべき事項であるとした上で、「誰かが(企業から)支払いを受け、自分の論文でその企業の製品について論じているならば、論文でそのことを明記しなければならない」と述べています。

一方、この申し出には問題がないと考える研究者もいます。この中には、Cyagen社の製品を引用した164本の論文の著者、ヴィンセント・クリストフルス(Vincent Christoffles)氏とニール・シュビン(Neil Shubbin)氏も含まれます。アムステルダム大学(オランダ)の発生生物学者であるクリストフルス氏は、Cyagen社の策略がおかしいとは考えていません。彼はその理由について「これは実験装置や抗体、遺伝子組み換えサービスなどを購入する際によくある割引と同じだと思います。科学にかかる経費が少しだけ安くなるわけです」と述べています。シカゴ大学イリノイ校の進化生物学者であるシュビン氏は、利益相反事項として開示しなかった理由を次のように述べています。「我々は論文の業績に対する割引を受け取ったわけではありません。ですから、それを正式に認めるとか、利益相反(COI)として掲載する必要性はないと思います。我々はただ、他の人が研究を再現できるような詳細を提供する意味で、製品名を「方法」のセクションに掲載したまでです」

一方、Cyagen社の広報担当者、オースティン・ジェルシック(Austin Jelcick)氏はサイエンス誌に、自分たちは現金ではなく自社の金券を提供していると語っています。加えて、同社が求める「引用」とは、Cyagen社の動物モデルが実際に使用された場合について方法のセクションで述べることであり、それは他の人が実験を再現するために必要なことであるとも述べ、「つまり我が社は、研究者がすでに行なっている行為(同社の動物モデルを使っていること)に対して報酬を出しているのです」と説明しています。

ゴールドエーカー氏は強い調子で以下のように述べています。「Cyagen社は今回、学術論文で言及することに対する金銭的報奨を提供しています。世界で一番悪い行為ではないかもしれませんが、申告するべき事実だと思います。それが当然の対応ではないでしょうか。『何かを述べることに対して報酬を受け取ったらそれを開示する』という原則に例外を設けることは賢明ではありません」

Cyagen社の賄賂的戦略は学術関係者の間に様々な反応を引き起こしました。非難されるべきだと思う研究者もいれば、その利益を否定しない研究者もいます。また、研究に影響はなく、関心がないという意見もあります。あなたはどう考えますか? 下のコメントからお聞かせください。

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