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雑誌の危機(Serials Crisis):国立台湾大学、エルゼビア発行誌の購読を打ち切り

Jayashree Rajagopalan | 2017年6月22日 | 10,597 ビュー
雑誌の危機(Serials Crisis):国立台湾大学、エルゼビア発行誌の購読を打ち切り

国立台湾大学(NTU)附属図書館は、高額な購読料を主な理由として、エルゼビアのジャーナルデータベース「ScienceDirect(サイエンスダイレクト)」の購読を、2017年をもって打ち切る予定であることをホームページ上で発表しました。NTUの総長、副総長、教員らも、この決定を支持しています。


同図書館は現在、エルゼビアが発行する784誌を含め、計約4700誌のジャーナルを購読しています。エルゼビアのジャーナルが購読誌全体の約17%を構成しており、購読費全体の33%を占めています。近年の購読料の高騰に対してNTUはこれまでにも対策を講じており、エルゼビアのジャーナルの購読誌数は、2008年の833誌から、2016年の784誌まで削減してきました。しかしながら購読料の高騰は著しく、状況の改善は見られませんでした。発表によると、NTUがエルゼビアのジャーナルの購読を2年間更新(2017~2019年)した場合、エルゼビアは2018年と2019年の年間購読料を4%値上げするとしています。NTUは、この価格モデルに対応し続けることは不可能であり、最終的に学内のほかの重要資源の確保に支障をきたしかねないと判断し、価格交渉が両者納得できる形でまとまらない場合はエルゼビアのジャーナルの購読を打ち切ると決定しました。また、NTUの図書館は、この決定による学生や教職員への影響を軽減するために、一連の措置を取る準備を進めているとしています。


高額な購読料によって危機に瀕している学術機関や図書館は、NTUだけではありません。ジャーナル購読料の高騰によって学術機関の運営が困難になることを、ハーバード大学は2012年の時点で主張しています。同大学は学生に「研究発表はオープンアクセスジャーナルを通して行い、有料ジャーナルでの出版を控える」よう働きかけてきました。購読料の高騰は、学生にオープンアクセスジャーナルでの出版を奨励する大学が増え続けている要因の1つと言えるでしょう。ジャーナル購読料の急激かつ持続的な上昇に、図書館、大学、その他学術機関、研究者たちが対応できていないこの状況は、「the serials crisis(雑誌の危機)」と表現されています。図書館や大学は、教員や学生のニーズを満たすために学術誌の購読が必要不可欠である中、上昇を続ける購読料を賄うための予算管理に苦しんでいます。


発表によると、NTUの決定に続くように、台湾の複数の大学がエルゼビアのジャーナルの購読の打ち切りを予定しています。NTUとエルゼビア社との交渉が、双方満足できる結果となるか現時点では分かりませんが、NTUの図書館は、今回の決定は断腸の思いで下された避け難い判断であったとして、学生と教職員の理解を求めています。より広い視野で見ると、この件は世界規模で取り組んでいくべき問題であり、学術出版の商業的構造を持続可能なものへと変化させていく必要があると言えるでしょう。

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