野口ジュディー先生の科学英語コラム第3回【英語でのオーラル・ポスタープレゼンテーションの極意】
この連載の第1回で取り上げたジャンルの概念を理解した上で、第2回でご紹介した文書の構造の把握の仕方やhint expressionsを上手に使えば、プロフェショナルの“難しい”文書を読み書きできるようになります。ただし、自分の研究について話し、ディスカションなどができるようにならないと、本当の研究者にはなれません。今回は、成功するプレゼンテーション術を取り上げましょう。
実は、学会発表やポスターセッションなども「ジャンル」として考えるのが成功への近道になります。たとえば、学会でのオーラル・プレゼンテーションでは、大体決まった順番で情報を伝えます。まず、研究全体の紹介と目的を述べ、研究対象と研究方法を知らせ、得られた結果の報告とその解説を行い、結論に導きます。謝辞を述べて発表を締めくくり、会場との質疑応答を行います。このようなフレームワークは、プレゼンテーションを扱った様々な本にも載っていますが、学会でのオーラル・プレゼンテーションを「ジャンル」として扱って解説している本は、今回ご紹介するもの以外にありません。
第2回で説明しましたhint expressionsは、論文を書く際に活用できますし、プレゼンテーションでも同じように利用できます。ここで、JECPRESE(The Japanese-English Corpus of Presentations in Science and Engineering)(林ら2012) という、実際に行われたプレゼンテーションをコーパスとして構築し、英語と日本語で検証したウェブサイトをご紹介しましょう。JECPRESEは65件の英語の発表と311件の日本語の発表で構成され、英語と日本語の両方でコンコーダンス検索ができるようになっています。また、ジャンルの特徴を示すムーブ(表現意図)の検索もできるようになっています。
たとえば、発表の導入部分で、研究を行った理由を説明したいのであれば、JECPRESEから以下のようなhint expressionsが見つかります。
For understanding …, we have to consider all of this together, …
The problem with this is that …
And we were also asked to design a sustainable alternative for …
また、以下のような表現を利用して、プレゼンテーションを上手に締めくくることができます。
One further thing that was a challenge was…
Here's a recap of what we went over today.
So in conclusion we have designed …
オーラル・プレゼンテーションは、書いたものと違って、発表者が声を出して説明し、その場で相手に分かってもらう必要があります。ここで重要になるのがprosody(韻律)です。個々の単語の発音だけでなく、音節の強調、抑揚に気を付けましょう。大きな間違いにつながるのが、カタカナ発音です。間違いを避けるために、英語の発音を自分の思い込みに頼るのではなく、本当の音を聞き取り、発音することを普段から心がけましょう。
たとえば、「information」「event」「occur」という単語は、音節で単語を区切ると何番目の音節を強調して言いますか? 近い音として、それぞれ「in for MA shun」「e VENT」「o CUR)」と表せます。カタカナ発音とはずいぶん印象が違います。カタカナ発音では「information」「event」「occur」とは理解してもらえないことも多いでしょう。また、専門語彙のカタカナ発音も多数見受けられます。間違ったカタカナ発音で、「genome」を「ゲノム」と思い込んでいませんか?
ジュディー先生の本の紹介:このような音声に関する注意や、発音練習の仕方だけでなく、ポスタープレゼンテーションと口頭発表の準備から実際の発表までを「Judy先生の成功する理系英語プレゼンテーション」にまとめています。英語の発表が初めてという人や、まだあまり慣れていないという人に特にお勧めです。
※JECPRESE, The Japanese-English Corpus of Presentations in Science and Engineering
※日英の理工系口頭発表コーパスの構築と検索サイトJECPRESE
(林洋子、国吉二ルソン、野口ジュディー、東條加寿子 / 2012)
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