なぜ気候変動と極地調査はあなたの暮らしと地球に影響を与えるのか?

 なぜ気候変動と極地調査はあなたの暮らしと地球に影響を与えるのか?

デンマーク生まれのアメリカ人、エレ・ゴールドマン博士(Dr. Helle Goldman)は、Polar Researchの編集長を務める人類学者です。ノルウェー極地研究所(Norwegian Polar Institute、NPI)が発行する同誌は、複合領域を対象とした、査読付きの国際学術誌です。北極圏にあるトロムソ(Tromsø)在住のゴールドマン博士は、ノルウェーの気候・環境省の一部門であるノルウェー極地研究所(Norwegian Polar Institute, NPI)に勤務して16年。アフリカ東海岸のインド洋上にあるザンジバル(Zanzibar)でフィールドワークを行い、ニューヨーク大学(New York University)で社会人類学の修士号(1990年)と博士号(1996年)を取得しました。休暇には、ボツワナのオカバンゴ・デルタ(Okavango Delta)の片隅に家族が所有する、数ヘクタールの原生地を訪れます。また、小説の編集や、ノルウェー語から英語への書籍翻訳をすることも。これまで翻訳を手がけたものには『Norway in the Antarctic: from conquest to modern science南極におけるノルウェー:征服から現代科学まで)』(著者:J.-G. Winther 他。出版社:Schibsted)等があります。(博士が出版に関わった書籍の多くは、注文購入が可能。)

<写真提供:アン・クリスティン・バルトン(Ann Kristin Balton)、NPI>

 

前回のインタビューでゴールドマン博士は、自分の編集長としての役割と、査読者の役割、そして両者がどのように協力して論文の掲載可否の決定を下すのかについて話してくれました。今回は、極地科学の重要性、論文投稿時にミスを防ぐ方法、投稿誌を選ぶ際に考慮すべきことについて語っています。

 

貴誌を読むべき理由を聞かせてください。

他の極地関連の学術誌と合わせて、Polar Researchは皆さんにぜひ読んで頂きたいジャーナルです。なぜなら、極地科学(polar science)は今、とても重要だからです。気候変動の程度や、気候変動が生態系に与える影響など、現在の重要課題には、北極・南極を研究することによってしか答えが得られないものがあるからです。極地は、地球上の他の地域と分断された、氷と雪に覆われた変化のない場所ではありません。極地で起こっていることは、地球環境システムと密接に関連しています。地球の変化の中でも主要なものは、まずは北極や南極で検知されます。極地でのそのような変化(例えば大規模な氷床融解や北極海の海氷減少など)は、人口が最も密集している地域を含む地球全体に、多大な影響を及ぼすのです。近年の「国際極年」(International Polar Year)は、こうしたメッセージを一般の人々に身近なものとして伝えることに貢献してきました。自然界は変化し続けています。変化の様子や理由を知りたければ、海や極地に目を向けましょう。そこには、わくわくするような面白さがあるはずです。

Polar Researchをお勧めするもう1つ理由は、完全に無料だということです!オープンアクセスに特化した出版社であるCo-Action Publishingの協力により、Polar Researchは、極地研究の主要学術誌として初の完全オープンアクセス誌(参考資料も含む)となりました。読者からは好評を得ており、2013年の閲覧(ダウンロード)回数はおよそ10万回でした。閲覧者が多い国は、米国、ノルウェー、中国、英国、カナダの5ヶ国です。

2011年には、二酸化炭素排出量削減のため、印刷版を廃止しました。これもまた、Polar Researchを読む動機になるでしょう。個人的には、紙の本や雑誌にはとても愛着があります。自宅の本棚には本があふれていますし、母親の家の地下室にも、本が詰まった段ボール箱がいくつもありますから。紙の雑誌を手に取り、重さを感じながらパラパラとめくる感覚が好きなのです。自分が探していたものとはまったく関係のないテーマに行き当たり、予期せぬ洞察が得られるワクワク感は、何ともいえません。しかしながら、印刷版の継続に説得力を持たせるのは、現代社会では困難でした。印刷版の廃止は、環境に配慮した結果というだけではないのです。人々はもはや、学術誌を隅から隅まで読まなくなり、自分の仕事に役立つ記事をインターネットで探すようになったのです。

 

著者が投稿誌を選ぶ際のアドバイスをお願いします。

投稿を検討している学術誌の守備範囲をよく知るようにしましょう。新奇性等の要素にどの程度重きを置いているのか、そういった点で自分の論文がどの程度評価されそうか、といったことを考えてみるとよいと思います。同僚たちに影響を与えたいなら、彼らが読んだり論文を投稿したりしている学術誌を検討してみましょう。より幅広い読者層に読んでもらいたいなら、それまで注目していなかった学際的なジャーナルを検討してみましょう。つまり、学術誌の読者を考え、誰に自分の論文を読んでもらいたいかを考えるのです。

また最近では、自分の論文を、読者に自由にアクセスして読んでもらうかどうかを考えることも重要です。オープンアクセス誌にするか、それとも購読料を払って読む従来型の学術誌にするか。いずれの場合も、著者が掲載料を支払わなければならない可能性があるので、注意してください。投稿先に関わらず、論文を投稿する際は、投稿料の有無とその金額を必ず確認しましょう。定評のある学術誌は、そうした費用を明示しています。一方、「ハゲタカ出版社」と呼ばれる出版社が発行する怪しい学術誌は、驚異的な速さでの出版を約束しますが、費用には触れないままで、最後に驚くような請求書を送りつけてくることがあります。

アドバイスをもう1つ。どれほど評価の低い学術誌であっても、別の学術誌に投稿する際は、必ずその学術誌の規定に沿ってフォーマットを整えてください。こんなことを言うのは心苦しいのですが、カバーレターを書き直し、必ず正しいジャーナル名が記載されているようにしてください!また、それ以前に投稿した学術誌の査読で指摘された箇所は、必ず訂正しておきましょう。学術誌Aの査読者と同じ人がたまたま学術誌Bであなたの論文の査読者になったとします。学術誌Aの査読で時間をかけて指摘したあなたの論文に、修正の跡がほとんど見られないとしたら、学術誌Bでの査読結果がどんなものになるか、想像がつきますよね?けっして良い結果にはなりません。

 

貴誌に投稿するべき理由は何でしょう?

北極・南極の研究者や環境管理に関わっている人々など、幅広い読者と知見を共有したければ、1つの分野に特化した学術誌ではなく、学際領域を扱うPolar Researchに投稿すべきです。

本誌の査読は厳しく、何度も修正が必要なことも珍しくありませんが、論文もそれだけ磨かれます。受理された論文は、丁寧に編集を行います。質の高い査読と編集サービスに感謝の声を寄せてくれる著者も大勢います。

この機会に、もう1つ触れておきたいことがあります。印刷版を発行しない電子出版だけの学術誌は、出版費用があまりかからないと誤解している人々がいるようです。つまり、研究者は論文を「寄付」し、査読者は無料で査読を行い、受理された論文はあっという間に電子版用にレイアウトされてオンライン出版される、と思っているのですね。お手軽で安いんでしょ?と。実際には、印刷版でも電子版でも、論文投稿から出版までには、多くの有能な専門家たちの力が必要であり、彼らへの報酬も支払わなければなりません。出版に慣れた著者の論文であっても、テキストや図表を一定の出来栄えまでもっていくには、裏側で多大な労力が必要とされます。そのことを実感してもらうために、「編集前」と「編集後」を掲載したいという思いに駆られたこともあります。きっと読者は驚くでしょうし、著名な寄稿者も決まりの悪い思いをすることになるでしょう。もちろん、実際にそんなことをするつもりはありません。査読、編集、制作の過程で「付加される価値」が軽視されている、ということが言いたいのです。一定の水準に達するためには、コストがかかります。電子版のみのオープンアクセス誌でも出版費用を請求することがあるのは、そのためです。

 

全3回のインタビュー記事の最後に、ゴールドマン博士は、研究者間の境界と国際的相違を超えた科学について語ります。お見逃しなく!

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