インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントとは、正しい情報を伝えられた上での双方の合意を意味する概念のことを指します。たとえば、治験を受ける被験者が、治験の内容について医療従事者から説明を受け、十分に理解した上でそれに合意することです。
通常、ジャーナルは人の参加が関与する研究において、著者あるいは研究者が事前にインフォームド・コンセントを取得していない場合、出版をおこないません。

 

まずはこちらのわかりやすい例をみてみましょう。

「あなたはアフリカでエイズの有病率について研究を終えたところです。患者のことを読者により深く知ってもらおうと、フィールドワーク中に撮影した笑顔のかわいい少年の写真を(彼が罹患する病名とともにキャプションを付けて)原稿に入れました」。

さて、この行為の何が悪いのでしょうか?

1998年4月、上記のような記事が『カナディアン・メディカル・アソシエーション・ジャーナル(CMAJ)』に掲載されました1

。その後、その記事の内容に疑問を抱いたある読者からジャーナルは強い非難を受けました2

その読者が疑問に思ったのは、「その少年の保護者は写真の公表に文書で同意したのか」、つまりこの出版に伴う機密保持を侵害しているのではないかと疑ったのです。その読者は、この違反行為が科学的目的に不可欠なことであったのかという点も追求しました。その後、CMAJの編集長は、「誤りを犯したしたこと、そして同意を得ずに患者の症状に関する情報だけでなく、その患者の写真までも掲載したこと」について謝罪文を掲載しました3

Informed Consent

Ethical Guidelines

この例のように、人を対象とするの参加が関与する研究においては、以下の理由から文書によるって記されたインフォームド・コンセントが重要です6:

1. これらの書類は、研究に参加することに同意した後でも、参加者が知りたくなるかもしれない詳細(撤回したい場合の連絡先等)の永久的な記録となりうる

 

2.  これらの書類には詳細な情報(電話番号やファックス番号)が記載可能であり、会話よりも効果的に伝えられる

3.  倫理委員会や治験審査委員会は、参加者から同意が得られたことを確認するリソースを持っていない恐れがある。従って、研究を進めるうえでの倫理的な承認をこれらの機関から得るには、文書によるインフォームド・コンセントが不可欠となる。

4.  インフォームド・コンセントは、その研究に関する訴訟の際に法的文書として証拠となる。

5.  研究者が適切な倫理的慣習に従っているということを参加者が知らされた場合、その参加者はその研究者をより信用する傾向にあり、長期的な利益につながる。簡単に言うと、もし私たちが患者の安全を保障できなければ、遺伝子治療への人々の支援や他の潜在的な救命治療法は消えてなくなり、参加を志願する人達も出てこなくなるだろう。5

6.  後に参加者のデータを使用したい人が(例:追跡調査のため)、これらの書類を利用して参加者の連絡先詳細を入手できる。


研究開始時にインフォームド・コンセントを得なかったことによる代償は、とても高くなりえます。アメリカでの一例では、インフォームド・コンセントを入手していなかったために500万以上の血液サンプルが破棄されなければなりませんでした6
さらに、有名ジャーナルの多くは、インフォームド・コンセントの入手を怠ることは原稿をリジェクトする根拠として十分であるとみなします。
たとえば、『American Journal of Psychiatry』は著者へのガイドラインで「文書によるインフォームド・コンセントか治験審査委員会の承認が投稿時の提出書類に含まれていない場合には、レビューされません。」と明言しています7

他にも、『Journal of the American Medical Association』のように、論文の研究方法のセクションにおいて治験審査委員会や倫理委員会による正式な手続きを踏んでいることを言及するよう、著者に求めているジャーナルもあります8

Ethical Guidelines

要するに、インフォームド・コンセントを入手し、その旨を適切に報告することは、論文の研究・執筆のそれぞれの段階で不可欠なのです。それが研究者として、また執筆者としての信用を確立します。現在、ジャーナル編集者は、“匿名性が確実に保障されなかったり、文書によるインフォームド・コンセントを入手していないときは、科学的・学問的にいかなる価値があっても、原稿は出版しない”2のです。

インフォームド・コンセントに関する情報

ヘルシンキ宣言
人を対象とする医学研究のための倫理的原則に関する声明 
http://www.wma.net/en/30publications/10policies/b3/17c.pdf 

 

生物医学雑誌への統一投稿規程:
生物医学雑誌へ投稿する際の倫理的要求事項に関するガイドライン 
http://www.icmje.org/#sthash.P0G1GkvL.dpuf

 

アメリカ心理学会(APA)発行:
論文作成マニュアル 第6版-研究、特に行動科学の場合に関する参加者の機密性や権利についての詳細な定義説明を提供
http://www.apa.org/pubs/books/4200066.aspx

 

Council of Science Editorsによる科学ジャーナルの出版における高潔性の奨励についての白書:
研究対象の人や動物の不当な扱いとなる行為の例一覧
http://www.councilscienceeditors.org/i4apages/index.cfm?pageid=336

 

米国医師会スタイルマニュアル:
医学ジャーナルへ出版する記事を執筆する際に考慮すべき倫理的、法的事項が含まれる
http://www.amamanualofstyle.com/view/10.1093/jama/9780195176339.001.0001/med-9780195176339-chapter-5#sthash.P0G1GkvL.dpuf

 

 参考文献

  1. Rasid, M. (1998). AIDS in Africa: A personal experience. Canadian Medical Association Journal, 158(8). 1051–1053. Available at http://ukpmc.ac.uk/articles/PMC1229229/pdf/cmaj_158_8_1051.pdf 
  2. Barnes, R. (1998). Confidentiality in medical publishing. Canadian Medical Association Journal, 159(5). 443. Available at http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1229634/pdf/cmaj_159_5_443.pdf
  3. Hoey, J. (1998). Patient consent for publication—an apology. Canadian Medical Association Journal, 159(5). 503–504. Available at http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1229651/pdf/cmaj_159_5_503.pdf
  4. Pedroni, J. A., & Pimple, K. D. (2001). A Brief Introduction to Informed Consent in Research with Human Subjects. Available at http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.92.6284&rep=rep...
  5. 59th WMA General Assembly, Seoul. (2008). World Medical Association Declaration Of Helsinki: Ethical Principles for Medical Research Involving Human Subjects. Available at http://www.wma.net/en/30publications/10policies/b3/17c.pdf
  6. Resnik, D. B. (2009). Do informed consent documents matter? Contemporary Clinical Trials, 30(2). 114–114. doi: 10.1016/j.cct.2008.10.004. Available at http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2670580/
  7. Shalala, D. (2000). Protecting research subjects—what must be done. New England Journal of Medicine, 343(11) 808–810.
  8. Akst, J. (2009). Consent issues nix blood samples. The Scientist. Available at http://www.the-scientist.com/?articles.view/articleNo/27876/title/Consent-issues-nix-blood-samples/
  9. International Committee of Medical Journal Editors. Uniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals: Ethical Considerations in the Conduct and Reporting of Research: Privacy and Confidentiality. Available at http://www.icmje.org/recommendations/browse/roles-and-responsibilities/protection-of-research-participants.html 
  10. The American Journal of Psychiatry. Guidelines For Authors On Preparing Manuscripts. Available at http://ajp.psychiatryonline.org/ajp_ifora.aspx
  11. Journal of the American Medical Association. Instructions for Authors. Available at http://jama.jamanetwork.com/public/InstructionsForAuthors.aspx
  12. Levine, S. B., & Stagno, S. J. (2001). Informed consent for case reports: The ethical dilemma of right to privacy versus pedagogical freedom. Journal of Psychotherapy Practice and Research, 10. 193–201. Available at http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3330645/

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