効果的なグラント申請書の書き方

効果的なグラント申請書の書き方

研究の成功には外部の研究助成金が多くの場合で不可欠です。出版へのプレッシャーが財源に負担をかけ、現在では助成金の入手がより難しくなっているため、グラント申請書を執筆するスキルの重要性は高くなっています1。現在では、研究者に先駆的な研究アイディアの構想があるかどうかは問題でなく、プロジェクトの資金集めのためにグラントの委員会を納得させる非常に説得力のある提案書を提出することが必要なのです。残念ながら、グラント申請書の執筆は概して実際の研究より非常に難しいことと考えられます2
 

効果的なリサーチプロポーザルの10の特性

1.  科学の前進と、人類の知識、社会、もしくは環境に恩恵を与えることを目的とする

2.  測定可能で焦点の合った目的がある

3.  結果を一般化できるようなサンプルである
 (女性、少数派等をサンプルの中で必要に応じ適切に示す)

4.  研究の目的達成のために充分な厳密でよく考え抜かれた適当な方法を使用している

5.  研究の最中に発生しそうな予測可能な問題点と、それらの問題点を克服する代替案を考慮している

6.  適切な訓練、経験、専門性を兼ね備えた研究者たちによって遂行される

7.  目的の達成を可能にするような環境で遂行される
 (例:研究施設による適切なサポートや必要な設備へのアクセス)

8.  実施する作業に相応の時間と資金を要求している

9.  倫理規定に従い、適切な倫理委員会による承認を得ている

10. 他のメンバーを統率できる、先頭に立つ独立した研究者がいる1,3, 4


提案書を書き始める前に

グラント申請書の必要事項は学問分野やその機関の規定により異なりますが、あなたの研究トピックやターゲットとするファンディング機関に関わらず、念頭に置くべき重要なポイントがいくつかあります。


そのファンディング機関について可能な限り詳細に調べる 

欠点 のない研究デザインを概説し、完璧に書かれた申請でも、そのファンディング機関の目的やミッション4を確かめる努力を惜しめば、リジェクトされる可能性は高いです。グラント審査委員会は機関のミッションに対するその研究の関連性に注視しますので、申請にはあなたの研究がいかにそのファンディング機関が定めるゴールと目的を満たすための手助けとなるのかを明示しましょう6。そのファンディング機関を、あなたと同じような関心や目標を持つ、あなたの研究「パートナー」としてとらえましょう。もしその機関のミッションが定かでない場合、申請が関連性がないことを根拠にグラント執筆後にリジェクトされるよりもむしろ執筆前に、その申請の適切性を判断するためにファンディングの管理者に連絡しましょう1



対象読者を理解する

申請は、多くの場合その分野の専門家よりもむしろ専門外の学識者や他分野の研究者らに読まれます7。専門用語や頭字語は避けましょう。ファンディング機関のホームページに大抵掲載されている審査委員会の詳細について確認することもひとつの実践すべき良い手段です。これは、あなたの専門分野のどの点について詳細に説明するべきかを決める際に役立ちます。



申請に関するスポンサーのガイドラインをしっかりと読む

重要な点(例:取り上げるべき課題や入れるべきセクション)を確実に見逃さないようにできます。提出する必要のある全ての項目(例:研究者たちの履歴書、予算の箇条書き、研究機関内の審査委員会からの承認等)と、それらの情報収集のために自分が誰に連絡を取る必要があるかをリストにしましょう1。次に、ページレイアウト、フォントサイズ、スタイル、行間隔等に関する詳細なガイドラインを理解しましょう。その機関のガイドラインに合致しないグラント申請は多くの場合で審査なしで返却されます。さらに、フォーマット、文法やスペルに関するエラーは、グラント委員会がその申請者は研究を遂行する際にもずさんであったり不注意であると捉えることに繋がりかねません8



グラント申請書内の各セクション

ほとんどの申請書は以下の副題を含みます。



アブストラクト

研究論文と同様に、アブストラクトはファンディング機関が最初に目にする部分です。実際、その機関はアブストラクトだけに目を通し、その内容により申請書を審査委員に回すかの判断をするかもしれません8。以下、アブストラクトの重要な点です。

 

  • 専門外の人でも理解ができること
     
  • 研究の全ての重要な点を強調した簡潔且つ包括的な申請の要約であること
     
  • 問題の本質、それに対する研究の必要性、テストすべき仮説と期待する成果、研究手法もしくは取り組み、そしてその研究の重要性や斬新性についてを明確に提示していること


序論

グラント申請全体の土台となるセクションです。この3点に気をつけましょう。

 

  •  あなたの研究の実地応用の可能性と重要性を強調5,8
     
  • 研究の仮説や特定の目的を明白に示すこと
     
  • 既存の関連文献に徹底的に目を通し1、欠落する部分をどのようにあなたの研究が埋め、間違いを訂正したり、論争を解決したりするのかを説明すること


研究デザインと手法

このセクションは審査委員があなたの提案する研究が確約する結果を生み出すかどうか判断するための基準となります。このセクションのねらいは以下のようになります。
 

  • 申請する研究作業の詳細なスケジュールを準備し、要求時間内で実現可能かを示すために、それぞれの重要な作業の開始と完了がいつなのかを示す

     
  • 研究対象集団と、研究サンプルに偏りがあると捉えられないように、包除基準を詳細に示してどのように参加者が招集されるかを説明

     
  •  参加者への報酬や、無作為抽出、サンプルサイズ、検出力計算に関する詳細を提供

     
  • 使用するデータ収集方法を説明して、採用する技術/計器が有効で信頼できることを示すために引用文献や製造者について提供

     
  • 適切な倫理委員会による承認を増補しあなたの研究手法が倫理的に確かであることを示す

     
  • 全ての変数を一覧にし、分析にどのように使用するかに言及

     
  • データとその質の保証(例:重複の回避や正確性のための別の方法による確認)をどのように管理するか説明

     
  • 使用する統計手法とソフトウェアの詳細を用意すること


予備研究

申請書を提出する前に予備的、もしくは試験的な研究の実施を済ませておくべきでしょう。これらの研究からのデータを準備することは以下の点を示すためにも極めて重要です。

 

  • その分野における高度な専門知識を持ち、研究の遂行方法を知っている
     
  •  充分な下準備が済んでいる
     
  •  予備研究の結果から、そのプロジェクトが実行可能であることを示す
     
  • 仮説には価値がある
     
  • 研究機関からの充分なサポートがある



限界

審査委員はその分野におけるエキスパートである可能性が高いですので、あなたのプロジェクトが極端に野心的であると批判されないように、自分の研究のいかなる現実的な限界も充分に説明しましょう。「審査委員の視点に立ち、彼らが何を質問し、何を知りたいかを予測して準備すること」が最善の方法です1



予算

このセクションには通常あなたの研究で必要とする費用の概要を表にしたものを入れます。準備をする際には、以下の点を忘れないようにしましょう6

 

  • 必要な装置と備品の現在の価格をチェックする(価格は週ごとに変動することもあります)
     
  •  研究手法をよく見てそこにリストアップされている全細目(例:もしあなたが参加者に質問事項を郵送するのであれば、現在の郵便料金を考慮する必要があるかもしれません)の予算を組む
     
  • 可能な限りその費用の根拠を説明する9


人事

言うまでもなく、審査委員たちはその研究が効率的且つ効果的に遂行されるかを判断する必要があります。

 

  •  研究者らがその分野における高度な専門知識を持つことを示す詳細(例:全ての先行研究やその中でも直近のものや関連するもの、h指数や他の被引用数)を準備する

     
  • 各研究アシスタントが、参加者の招集やデータの収集等にいかに貢献するかを説明し、全てのメンバーがこれらの目的のために教育されていることを示す証拠を提供すること


研究環境と研究機関のリソース

このセクションの目的は、研究の成功のためにあなたの大学や研究機関が援助してくれることを審査委員に証明することです。例えば以下のような点を強調しましょう。

 

  • 該当する、もしくは関連する分野のエキスパートであるスタッフと学部の存在
     
  • 研究スペースや図書施設のような独特で適切な設備がある
     
  • 経験と資格のある研究アシスタントがいる
     
  • 信用と高い価値の研究で歴史がある
     
  • あなたの研究に必要な助成金の一部をすでに提供している



付表に入れられる項目

  • 使用する予定の計器や質問事項のサンプル
     
  • あなたの研究への充分な時間とリソースの提供を保証することを裏付ける部門長や学部長による手紙10

同僚や上司、以前の指導者からの実績に関する特定の例や研究姿勢の特性を示した推薦状10



結論

良い申請書の執筆は容易ではありません。とは言え、入念に仕上げられた申請書とは、あなたが必要とする研究資金を提供するだけでなく、研究の適切な準備や、将来のグラント取得のチャンスを増やすことに繋がる可能性を持つのです。

 

 

Bibliography

1. Chung KC, Shauver MJ (2008). Fundamental principles of writing a successful grant proposal. Journal of Hand Surgery, 334: 566–572.

2. Davies TF (2005). The eventual pain and joy of grant writing. Thyroid, 15: 1113.

3. National Institutes of Health (1997). Review criteria for and rating of unsolicited research grant and other applications. NIH GUIDE, Volume 26, Number 22. [http://grants.nih.gov/grants/guide/notice-files/not97-010.html]

4. National Institute of Allergy and Infectious Diseases. New Investigator Guide to NIH Funding. [http://www.niaid.nih.gov/researchfunding/grant/pages/newpiguide.aspx#new06]. Last updated September 27, 2012.

5. Barnard J (2002). Keys to writing a competitive grant. Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition, 35: 107–110.

6. Levine SJ. Guide for writing a funding proposal. [https://www.msu.edu/course/aec/874/Pages/Levine.GuideForWritingAFundingP.... Last accessed Oct 2, 2012.

7. Przeworski A and Salomon F (1998). The art of writing proposals: some candid suggestions for applicants to social science research council competitions. Social Science Research Council. [http://www.anth.ubc.ca/fileadmin/user_upload/anso/files/grad/The_Art_of_...

8. Inouye SK, Fiellin DA (2005). An evidence-based guide to writing grant proposals for clinical research. Annals of Internal Medicine, 142: 274–282.

9. Goldblatt D (1998). How to get a grant funded. British Medical Journal, 317: 1647.

10. Gill TM et al. (2004) Getting funded. Journal of General Internal Medicine, 19: 472–478.

 

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