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質問: 剽窃検知ソフトを使用している編集者はどれくらいいるでしょうか?
これは興味深い質問ですね。剽窃は、発表された文献への最大の脅威の一つと考えられており、剽窃を理由とする論文撤回の割合は、ここ最近増加しています。その結果、投稿された論文に剽窃がないか前よりもっと警戒するようになっています。剽窃検知ソフトは重複発表の可能性を減らすのに非常に役立ち、その結果文献の質を高めています。しかしながら、ソフトに完全に依存することで、質の高い論文の発表の妨げになる可能性もあるのです。論文の内容が高度に専門的で専門用語も多い場合のように、時として剽窃検知ソフトの結果が不正確な場合があるからです。
この問題は、先日COPE (Committee on Publication Ethics)が委託した研究で、一部取りあげられました。著者のチャン・Y氏とジャ・X氏は浙江大学のジャーナルに所属しています。2人は英語を話すジャーナル編集者と英語を話さないジャーナル編集者を対象に綿密な調査を行い、投稿論文に対しCrossCheck (iThenticate を搭載した剽窃検知ソフト)をどのくらい使用しているか調べました。彼らの研究知見をいくつかここでご紹介しましょう。
回答者219名のうち、42% の編集者が投稿のプロセスでCrossCheckを使用していました。このツールへどのくらい依存しているか聞いたところ、編集者の過半数(66%)が、CrossCheckからの報告と 編集者による査定/査読者からのコメントの両方に頼っていると答え、ソフトの出す結果に完全に依存していると答えた編集者 (20%) は、類似性スコアが容認しがたいほど高い場合は論文を完全に却下していました。その他、剽窃が疑われる箇所について査読者のアドバイスを求めると答えた編集者が10%、論文著者に説明を求めると答えた編集者が少数いました(4%)。 平均すると、編集者は、全体の類似性の指標で50%以上の結果が出た論文は容認しがたいと感じ、「却下」という判断を出そうと思うようです。
さらに、編集者の大半が直接コピーや内容のペーストは認められず、テキストはできる限り言い換えをし、適切な引用をつけるべきだと考えていました。しかし、論文の「材料」や「方法」では、ある程度のコピーやペーストについて比較的寛大になれるだろうと答えた編集者もいました。というのも、「材料」や「方法」には、専門用語が含まれていることが多く、根本的には変えることのできない典型的な書き方があるのが普通だからです。
それでは、質問にお答えしましょう!
多くのジャーナル編集者は、剽窃検知ツールの限界を理解し、著者や査読者と相談し、慎重に使用しているようです。また、内容の言い換えが非常に難しい場合があることもわかっているので、そうした場合には大目に見る傾向があります。にもかかわらず、剽窃検知ソフトに過度に依存し、類似性指標が高ければすぐに論文を却下する編集者もいるようです。上で取りあげたような調査や教育的な取り組みは、ジャーナル間で異なっている実践を、標準化しようとする試みの支えのとなるでしょう。
論文著者の皆さんに勧めたいのは、投稿前に剽窃検知ソフトで論文を自己診断し、類似性指標が50%以上の場合は注意した方がいいということです。類似している主な部分が「材料」「方法」の箇所であったり、言い換えが全くできない専門用語である場合は、カバーレターでそのことを説明してもよいでしょう。今回のケースでは、先行研究と類似しているように見える部分を見直し、できる限り内容の言い換えを行うことを勧めます。英語を話せる同僚や校閲サービスの助けを借りましょう。必要な引用元は必ずすべて引用しなければなりません。また、ジャーナルの編集者に手紙を書き、なぜ論文の一部が剽窃チェックで注意を受けたのか説明し、もう一度判定を考え直してくれるよう依頼します。手紙の中では、自分の研究の新しさと、これまでの研究をこえた価値があるかを繰り返し述べることを忘れずに。