先延ばしを回避して目標を達成するには

先延ばしを回避して目標を達成するには

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出典: 

https://twitter.com/WorkRetireDie/status/1451241637359853576 (@WorkRetireDie on Twitter)

 

 

やるべきことがあると分かっているのになかなか手をつけられない…そんな状況に陥った経験は誰にでもあると思います。意図と行動とのこのギャップを、「先延ばし」と呼びます。研究者の場合は、論文を書き始めることに抵抗を感じて先延ばしにしてしまうことがあるようです。

 


私たちはなぜ先延ばしにしてしまうのか
 

研究者に今もっとも気になっていることを尋ねると、なかなか論文を書き上げられない、執筆が進まない、という答えが返ってくることが珍しくありません。執筆が進まないのは、次々にアイデアが湧いてくるという創造性によるものではなく、先延ばしのためと思われるケースがあります。

 

先延ばしは、生産性や時間管理能力の不足を表すものでもなければ、研究者としての適性のなさを示すものでもありません。専門家によると、先延ばしは自己規制の問題です。科学的に見ると、先延ばしの背後にあるのは、大脳辺縁系と脳の前頭前皮質との綱引きです1。大脳辺縁系は自律的に働き、生存を支援しつつ不快なことを回避します(例 「ハンバーガーを食べて、映画を見て、良い気分になろう」と指示する)。一方、前頭前皮質は意識的に制御され、情報に基づく意思決定を下すことができます(例 「論文を書き終えなければならない」)。

 

重要なのは、執筆作業が遅れている理由を見きわめることです。自分の心の状態を認識し把握することで、脳を鍛え直し、異なる反応を引き出して悪循環を断ち切ることができます。論文執筆を妨げているかもしれない心の状態と、その対処法を以下に挙げてみます。

 


論文執筆が進まない理由とその対処法

 

1. 書き始めるための動機づけが足りない: ランニングの前に体のウォーミングアップをするように、精神的に負荷のかかるタスクに取りかかる前には、心もウォーミングアップする必要があります。

 

あなたにできること:辛抱強く待ちましょう。スイッチを入れてもすぐには仕事モードに切り替わらないものです(中にはこれができるラッキーな人もいます)。集中力とやる気を高めるためには、コーヒーや紅茶が必要かもしれません。早歩きやランニングなどの身体活動も、気分を高め、困難な仕事に取り組む態勢を整えるのに有効です。

 

2. 自己不信に陥っている: 自分の文章力に自信が持てないのかもしれません。白紙とじっと向き合っていると、自分は書く準備ができていない、書けるほど頭が良くないという不安な気持ちが押し寄せてきます。この気持ちをさらに掘り下げてみましょう。執筆のどの部分が、あなたにストレスを与えているでしょうか?

 

 • 文章力に自信がない

あなたにできること:ライティングスキルを向上させるためのサポート(執筆指導、書籍、AIを利用した執筆ツール)や、下書きをブラッシュアップするサービスの利用を検討してみましょう。

 

• 構成の組み立てに苦労している

あなたにできること:アイデアについて、上司、同僚、共著者と話し合ってみましょう。気になる文献を参考にしてみましょう。

 

• 参考文献の扱いに行き詰まっている

あなたにできること:さまざまな文献管理ソフトが出回っているので、積極的に利用しましょう。

 

• タスクが大きすぎて圧倒されている

あなたにできること:タスク全体を、管理しやすい細かな目標に分割しましょう(例 1日1段落または1セクションを書き上げる)。小さな目標を達成したときの満足感がもたらす高揚感が次の小目標に進むバネになり、いつの間にかタスク完了に近づいているはずです。

 

3. 立ち往生しているように感じる: 白紙の状態からまったく進まないこともあるでしょう。また、書き始めたものの何日もストップしてしまうときもあるでしょう。

 

あなたにできること:机に向かっているときの進捗がはかばかしくなくても、心配しないでください。アイデアは、まったく違うことをしているときに浮かぶことがあります。リラックスしているときに、論文の概要や流れを頭の中で振り返ってみてください。ウォーキング、料理、反復的な実験作業など、ありふれた活動をしているときでもいいでしょう。こうすることで、頭の中に言葉が浮かんできてタスクの進捗につなげることができます。メモ帳やデバイスを手元に置いておき、原稿で使えそうな事柄、アイデア、単語やフレーズを書き留めましょう。携帯端末で音声メモを作り、音声認識ツールで文字に起こす方法もあります。

 

4. 気が散る: 長期的な報酬より短期的な報酬を好む傾向があるのかもしれません。例えば次のようなケースです:論文を書き上げることで得られる達成感より、Netflixの新番組を見る楽しみを取ってしまう。白紙の画面で点滅するカーソルを見ながら、タブを切り替えてTwitterの投稿を見てしまう。メッセージが届いていないかチェックするために、ついスマホに手を伸ばしてしまう。

 

あなたにできること:気を散らすものを目の前から無くしましょう。スマホは別の部屋に置き、ソーシャルメディアの通知はミュートにし、作業中のデバイスにアプリブロッカーを設定しましょう。

 


先延ばしを克服するためのヒント

 

  • 視覚化の力を活用する: ゴールラインを視覚化することはよくありますが、スタートラインを視覚化することも有効です。付箋やリストを使って、行動を促す視覚的な合図やリマインダーを用意しましょう。達成したい目標にスポットライトを当て、意識が向くよう仕掛けるのです。こうすることで、目標がより近く、達成可能なものに見えてきます。
     
  • 作業スペースを変える: いつも同じ机で執筆を続けていると単調さを感じるかもしれません。視覚的な合図もいつしか背景の一部になり、目に留まらなくなります。そんなときは、場所を変えてみましょう。場所を変えることで効果を発揮することがあります。気分転換に立って書いてみると、注意力が高まることもあります。著名なサイエンスライターのシッダールタ・ムカジーのように、寝床で書く2ことも効果的かもしれません。
     
  • クリエイティブになれる時間を見つける: 「時機を待っていたらいつまで経っても書けない」「書くなら今この時がベスト」と言われます。しかし人には、もっとも生産性でクリエイティブになれる時間帯があるものです。ぜひ、創造性が求められる執筆作業に取り組むのにもっとも適した、あなた自身のベストタイムを見つけてください。プレッシャーがかかるほど力を発揮する人もいます。あなたがそのようなタイプなら、締め切り直前に追い込みをかけるのも良いでしょう。

 

まとめ

 

先延ばしにしたという事実は、実際に先延ばしにした仕事をするよりも心に負担をかけるものです。それでも私たち人間は、すぐには報われないことを先延ばしにしがちです。短期的な目標と長期的な目標で得られるメリットのバランスをどう取るかは、私たち次第です。

 

一度でいいので、こんな実験をしてみてください。期限までに執筆を終えるよう自分を奮い立たせます。おそらく、やや背伸びをして、必要以上に早く仕上げたくなるでしょう。そして、送信ボタンを押した後の気分をじっくり観察してください(ネタバレ注意: きわめて爽快です!)。その感覚をよく味わってほしいのですが、それだけで終わらせず、その感覚を覚え、吸収して自分のものにしましょう。そして、次に書くのを先延ばしにしたくなったら、その感覚を呼びさましてください。ご想像のとおり、その感覚こそが、悪習を克服し、すぐに取りかかるサイクルに乗るのに必要なものです。

 


参考資料

1. Sudakow, J. What you need to know about procrastination to effectively combat your natural biological tendencies. Inc. (2017). https://www.inc.com/james-sudakow/science-says-1-out-of-5-of-you-is-a-chronic-procrastinator-heres-how-to-deal-wit.html

2. Fox, K. Siddhartha Mukherjee: ‘I don’t like writing as if I don’t exist’. The Guardian (2022). https://www.theguardian.com/books/2022/oct/29/siddhartha-mukherjee-i-dont-like-writing-as-if-i-dont-exist#sq_h7o52cquaf

 

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