学術界でのメンターシップについて思うこと

学術界でのメンターシップについて思うこと

学術界という大海での舵取りは困難を極めます。とくに若手研究者は、その難しさを実感していることでしょう。とはいえ、キャリア初期のニーズは千差万別であり、万人に効果的な指導というものもないため、メンタリングも難しくなります。

 

私自身は、母国での学生時代を経て、海外で外国人研究者として過ごし、母国に戻ってメンターとしての活動をする中で、学術界のさまざまな専門家や学生たちから学ぶことができました。それはとても幸運なことだったと感じていますし、すべての経験が、メンターシップに興味を持つきっかけになりました。この記事では、メンターシップに関する私の体験をご紹介できればと思います。

 

私はインドで大学を卒業した後、海外の大学院に進学して博士課程を目指しました。博士課程修了後は帰国して、教育とメンタリングに携わってきました。

 

大学時代のメンターシップといえば、授業と課外活動でときどき交わす、教授との簡単な会話ぐらいだったと思います。これは昨今では珍しいことかもしれませんし、当時もそうだったのかもしれません。私はおそらく、メンターとの積極的な関わりを求めていなかったのでしょう。いずれにせよ、具体的なキャリア戦略を立てたり、キャリアの選択肢について誰かと話し合うことはありませんでした。選んだキャリアに後悔はありませんが、メンターシップの機会がなかったことを考えると、もし何らかの相談をしていたら別の道もあったかもしれないと思うことはよくあります。

 

若手研究者へのメンタリングは、本格的な研究活動に着手する前の段階から始めるのがベターでしょう。まずは、研究への取り組み方を見るところからです。メンターはそれを把握することで、学生一人一人の能力を見きわめ、その能力をどのような形で伸ばせるかを考えることができます。学生は教授とキャリアプランを話し合うことをためらうべきではありませんし、教授は学生が話しかけやすい雰囲気を心掛けるべきでしょう。

 

私が研究者として最大の学びを得たのは、母国を離れていた8年間です。その期間は、グローバルな研究コミュニティに慣れるだけでなく、個性の形成にも役立ちました。しかし、外国人研究者として研究をスムーズに進めるのはきわめて難しいことでした。研究で生じる問題に加え、移民ステータスに関する問題もありましたが、当時はまだ学術界でメンタルヘルスの問題に目が向けられることはめったにありませんでした。燃え尽き症候群に関する不安は常にあり、しょっちゅう冗談を言っていたものです。今なら、研究以外のところから生じたメンタルヘルスの問題を抱える外国人を、メンターが支援することができると思います。もちろん、移民問題などに関する行政上の決定は本人にもメンターにもコントロールできないので、限界はあるでしょう。しかし、こんなときこそ、学内の外国人研究者のための活発な交流の場が効果を発揮します。そのような場があれば、メンターは学生の問題に積極的に耳を傾けることができますし、「話を聞いてもらえた」と実感できた学生は、学業により集中することができるでしょう。

 

私の話に戻ると、帰国後に次のステップを踏み出すのに時間を要しました。ポスドクになるという平凡な選択肢には魅力を感じなかったのです。そんなとき、幸運にも、研究の道を進むより教えることに挑戦することを提案し、現在の道に導いてくれたメンターに出会うことができました。そしてしばらくの間、自分の母校で教えていました。教える側に回ったことで、アカデミックの別の視点を得ることができたと思います。

 

私は、海外で学んだことを積極的にカリキュラムに取り入れようとしました。でも、インドの学生たちは体系的なカリキュラムによる学習に慣れていたので、コンフォートゾーンから抜け出した思考プロセスを取り入れることには抵抗感があったようです。そのため、なかなかうまく行かないこともありました。このようなときにメンターとして必要なのは、体系的なカリキュラムの範疇を超えて自己学習に取り組めるよう、学生をサポートすることだと思います。私自身はメンターとして、学生が自分で自分の思考プロセスを把握するよう促し、その思考プロセスを効果的に育める方法を積極的に示すよう心掛けています。

 

私は、学問上の課題を解決しようとする人々を助けたいという願望が強い、外向的な性格です。そのため、研究室で黙々と実験に向かうよりも、教えたり指導したりする方がはるかに充実感を得られます。したがって、自分の性格と傾向を知ることも、あらゆる学術的キャリアでベストな道を選ぶためには不可欠であると考えています。これは、メンターも学生もよく考えるべきポイントでしょう。

 

学術界ではますますコラボレーションが進み、さまざまな分野の知識に世界中の学生がデジタルで簡単にアクセスできるようになっています。しかし、学術界での成長を求める人にとって、このデジタル化は恩恵であると同時に呪いでもあります。デジタル化は知識への迅速なアクセスを可能にしますが、学びを保証するものではありません。実際の学びは、知識が個人レベルでゆっくりと意識的に吸収された場合に発生するものです。これは、現代のすべてのメンターにとって最大の課題でしょう。デジタルの時代は、知識を伝えるのは簡単ですが、それを保持することが難しいのです。これは、メンタリングを行う側としても受ける側としても、私が積極的に取り組んでいるテーマです。

 

私が自分のメンターから学んだことを挙げるなら、それは、忍耐力、粘り強さ、そして、テーマに関係なく没頭することが研究者として進化する唯一の道であるということです。やはりメンターをしている友人は次のように言っています。「人生で最大の学びは、自分が学生であるかメンターであるかに関係なく、学生の心構えでいるときに得られる」。周りのすべての人や物事から学ぶ気持ちでいれば、学習と成長に限界はありません。私が学術界でのメンタリングを(受けることも含めて)続けていく上で拠り所としているのは、この考え方です。

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