社会的影響を示すために、研究をSDGsとどのように連携させるか

How to align your research with SDGs to showcase societal impact

研究者であれば、自分の研究の社会的影響をアピールすることがいかに重要であるか、おそらくご存知でしょう。これは、自分の研究の価値や妥当性を示すだけでなく、様々なステークホルダーからより多くの資金や評価、支援を獲得するためにも必要です。とはいえ、研究のインパクトを説得力を持って伝えるにはどうすればよいのでしょうか? ひとつの方法は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を活用して、あなたの取り組みの方向を定めることです。

SDGsが研究者にとって重要な理由

SDGsは2015年に国連によって採択された17の世界的な目標であり、人類と地球が直面する最も差し迫った課題に取り組むことを目指しています1。その内容は、貧困、健康、教育、気候変動、平和、正義など多岐にわたっており、2030年まで、政府、企業、市民社会、個人の行動を導くことを目的としています2

研究者であるあなたには、持続可能な開発の軌道をリードすることができるという特権があります。SDGsとそれに関する議論は、あなたのような研究者からの数十年にわたるインプットによって導かれてきました3。私たちは皆、時折世界の状況を憂慮しますが、研究者であればその憂慮を、私たち全員が直面する問題を克服するための積極的な一歩に変えることができます。現在の10年は「行動の10年」4であり、すべての有益な行動は、私たちが直面している問題を理解することから始まります。にもかかわらず、特にグローバル・ノース(北半球)の多くのステークホルダーは、研究戦略をSDGsと連携させていません。これは、2030年の目標達成に悪影響を及ぼしている可能性があります5

SDGsを研究と連携させるメリットは?

SDGsと連携した研究を行うメリットは何でしょうか? 第一に、自分の研究テーマのより広い文脈と重要性を特定し、明確にするのに役立ちます。あなたの研究を1つまたは複数のSDGsに関連付けることで、あなたの研究がどのように世界的な問題の解決や目標の推進に貢献しているかを示すことができます。第二に、研究に関連する文献やデータソースを見つけてアクセスするのに役立ちます。ジャーナルやデータベース、プラットフォームの中には、SDGsの枠組みを採用してコンテンツを分類・整理しているものもあります。SDGsのキーワードや指標は、研究者がSDGsに最も関連性の高い情報を検索するのに役立つようにすでに使用されています6。第三に、自分の研究をより幅広く、より多様な人々に伝えるのに役立ちます。SDGsは、政策立案者、実務家、メディア、一般市民など、様々なステークホルダーに広く認知され、理解されています。SDGsの関連用語やシンボルを使うことで、あなたの研究に関心を持ったり、影響を受けたりする人々に、あなたの研究をより身近で理解しやすいものにすることができます。

SDGsを研究のインパクトのためのフレームワークとして活用する

SDGsが研究に役立つ理由はお分かりいただけたと思いますが、研究の目的を調整し、インパクトを高めるためのフレームワークとしてSDGsをどのように活用できるでしょうか? ここでは、研究プロセスのさまざまな段階で実行できるいくつかのステップを紹介します。

概念化

研究プロジェクトを計画・設計する際、SDGsはインスピレーションや指針の源となります。SDGsの目標、ターゲット、指標を確認し、どれが自分の研究分野に関連しているかを確認することで、研究課題の立案に役立てることができます。また、SDGsに関する既存の文献やデータを参照し、関心のある分野にどのようなギャップや課題があるかを確認することもできます。この予備調査に基づいて、特定したSDGsに関連する研究目的と仮説を立てることができます。

出版

皆さんと同じように、ジャーナルやその他の出版物も、持続可能な開発と研究効果の最大化に関して同じ懸念を共有しています。したがって、ジャーナルに研究論文を書いたり投稿したりする際には、研究の新規性や重要性を強調する方法としてSDGsを利用することができます。SDGsは、研究の重要性と関連性を強調するために、論文のどのセクションでも簡単に引用することができます。また、SDGsの関連用語や指標をキーワードやメタデータの一部として使用し、発見を容易にすることもできます6

出版後のコミュニケーションとアウトリーチ

ご存知のように、研究のインパクトを確保するのは査読のためだけではなく、その後の研究の促進にもかかっています。研究成果を様々な人々に広めたり、宣伝したりする際に、SDGsを活用することで、注目や関心を集めることができます。プレスリリース、ソーシャルメディアへの投稿、プレゼンテーション、ポスターなどに、わかりやすいSDGsの関連用語やシンボル7を使うことで、同じような問題に取り組んでいる他の研究者やステークホルダーと連携するのに役立ちます。また、ストーリーやケーススタディを使って、研究のインパクトを説明したり、文脈づけることもできます8

インパクト・パフォーマンス指標の開発

SDGsへの取り組みは、インパクトの測定や実証にも利用できます。SDGsの指標9 やその他の関連する指標を使って、研究の成果やアウトプットを定量化したり、評価することが可能です。SDGsの指標に対する研究のインパクトの大きさを示すことは困難ですが、もし研究の後に指標が定量的に変化した場合、あなたはその好ましい変化に貢献したもののひとつとして、自身の研究を指摘することができます。

次のステップと実例

ここまででお分かりのように、研究をSDGsと連携させることは、あなたの研究の社会的影響を示す強力かつ実践的な方法となります。これは、研究の質と知名度を高めるのと同時に、研究をより大きな目的と人々につなげることができます。すでにいくつかの大手出版社や機関、プロジェクトは、SDGsを幅広く活用し、インパクトのある研究に注目を集めることに成功しています。以下にいくつかの例を紹介します。

出版 – Sage

Sage Publishingは、あらゆる学術分野をカバーする書籍、ジャーナル、サービスの幅広いレパートリーを備えた世界的な学術出版グループです。SDG Publisher’s Compact10に署名したSageは、これらの目標に最も直接的に取り組むSDGs関連の研究やジャーナルのハイライトを紹介するウェブページ11を作成するなど、SDGsに関連する研究に積極的に注目しています。

機関 – ウェスタン・シドニー大学

ウェスタン・シドニー大学(WSU)は、研究においてSDGsを強調することを重要視しており、それが彼らにとって非常に良い結果をもたらしています。WSUは2年連続で、SDGsの推進において世界をリードする機関として認められています12。これは、学術活動においてSDGsを重視していることと、持続可能な開発の取り組みに関する優れた計画13と報告の両方によるものであることは間違いありません。

結論

自分の研究を SDGs と連携させる方法についてもっと詳しく知りたい場合は、STM の SDGs ロードマップ14を読み始めることがおすすめです。この記事がSDGsについて考えるきっかけとなり、研究の社会的影響を最大化するためにSDGsがどのように役立つかを知っていただけたら幸いです。

参考文献

  1. THE 17 GOALS | Sustainable Development. https://sdgs.un.org/goals.
  2. Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development | Department of Economic and Social Affairs. https://sdgs.un.org/2030agenda.
  3. Malekpour, S. et al. What scientists need to do to accelerate progress on the SDGs. Nature 621, 250–254 (2023).
  4. Decade of Action – United Nations Sustainable Development. https://www.un.org/sustainabledevelopment/decade-of-action/.
  5. Rich countries must align science funding with the SDGs. Nature 621, 444–444 (2023).
  6. The University of Auckland SDG Keywords Mapping. https://www.sdgmapping.auckland.ac.nz/.
  7. Martin. Communications materials. United Nations Sustainable Development https://www.un.org/sustainabledevelopment/news/communications-material/.
  8. Communicating SDG research through the power of stories | For Librarians | Springer Nature. https://www.springernature.com/gp/librarians/the-link/blog/blogposts-news-initiatives/communicating-sdg-research-through-the-power-of-stories/24003836.
  9. SDG Indicators — SDG Indicators. https://unstats.un.org/sdgs/indicators/indicators-list/.
  10. Martin. SDG Publishers Compact. United Nations Sustainable Development https://www.un.org/sustainabledevelopment/sdg-publishers-compact/.
  11. Research & ideas aligned to the UN Sustainable Development Goals. Sage Journals https://journals.sagepub.com/sustainability (2022).
  12. Impact Ranking. Times Higher Education (THE) https://www.timeshighereducation.com/impactrankings (2023).
  13. Our Decadal Strategy | Western Sydney University. https://www.westernsydney.edu.au/driving_sustainability/sustainability_education/engagement/sr_decadal_strategy.
  14. What Academic Publishers Need to Know About STM’s SDG Roadmap: A Handy Infographic. Impact Science https://www.impact.science/blog/what-academic-publishers-need-to-know-about-stms-sdg-roadmap-a-handy-infographic/ (2023).

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この記事を書いた人

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