エディテージ・グラント 選考委員インタビュー⑤-岸村 顕広先生

エディテージ・グラントは、自身の研究によって社会にインパクトを与えたいと願う若手研究者に、経済的支援、メンターシップ、キャリアガイドを提供することを目的とした、エディテージの若手研究者支援プログラム。その選考委員である岸村 顕広先生に、若手研究者における研究助成の重要性やエディテージ・グラントへの想いなどをうかがいました。

岸村 顕広
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 准教授

Subject area
ナノテク・材料 /有機化学・高分子化学 /ライフサイエンス

Researchmap link
https://researchmap.jp/read0103082

2000年、東京大学工学部化学生命工学科卒業(卒業研究・干鯛眞信教授)。2002年、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了(相田卓三教授)。2005年、同博士課程修了(相田卓三教授)。2005年、片岡一則教授の研究室に所属し、東京大学 ナノバイオ・インテグレーション研究拠点 特任助手 を経て、2007年、東京大学大学院工学系研究科助教に就任。その後、2013年より九州大学大学院工学研究院准教授に就任。

目次

自分の可能性を狭めないためにも
アイディアや想いは形にしておいてほしい

お金を出すだけのグラントではなく、
若手研究者のメンターシップにつながるものに

エディテージ・グラントの魅力は、修士を持っていればどんな立場、分野の人でも出せるというのもありますが、個人的に思うのは、プロポーザルを書くトレーニングの機会を増やすきっかけになることですね。エディテージ・グラントの理念として、「経済的支援、メンターシップ、キャリアガイドの提供」とありますが、このメンターシップにつながるようなものに今後なっていくといいなと思っています。審査してお金をあげるというのも大事ですが、「こうしたらもっと良くなるのでは?」といったアドバイスですね。海外のグラントではあるようですが、出された申請に対して「このアイディアはいいけれど、ここをこうするともっと良くなるから、もう1回出してみよう」と教えてくれる。初めて自分でグラントを申請するような若い研究者からは、まだそんなに洗練されたものは出てこないかもしれないので、そこを一緒に支援できるようなグラント・プログラムになると、さらにいいのかなと思っています。

もちろん、大学などの所属先でしっかりとやることも大切ですが、それとは違う枠組みがあってもいいのではないかと。どこかに所属しての研究は、どうしても枠組みにとらわれやすくなってしまいます。ただ、若い人であれば、必ずしもその研究室にずっとい続けるわけではないですし、あまりその研究室の色に染まりすぎるのも良くないと思うので、頭の体操的に違う切り口とか、「本当はこういうのをやりたかったんだ」というものを残すという意味でも、エディテージ・グラントのような機会はあっていいと思っています。

自分が温めているアイディアは
何か形にして残しておくことが大切

私の若い頃は公的な研究奨学金は限られていましたが、それに応募したことで、いいトレーニングになったという実感があります。今の研究テーマとは関係のないことでも、本当はやりたいと思っていることがあるなら、自分で文字に起こして誰かに発信するという機会があるのはとても良いことだと思います。もちろん、今やっている研究をきちんと論文にまとめるというのも大事なトレーニングですし、自分の業績にもなるのでしっかりとやる必要はありますが、それとは別にグラントによるサポートがあれば、別のこともやりやすくなるのではないでしょうか。

限られた期間の中で良いものを残そうとすると、今取り組んでいることに集中するのが普通ですが、それにあまりにも染まり過ぎると、次に動くときに自分の可能性を狭めているかもしれません。また、研究に携わるとしてもアカデミアだけとは限らないので、実は自分が当初温めていたアイディアというのは、別の立場を通じて取り組んだ方がいいのではないかということも。そう気づいたときにも、アイディアを形に残してあるといろいろと使い回しがしやすいと思います。それに「想い」を残すのも大事ですね。たとえば作家さんも処女作にいろいろ出るといいますが、そんな感じで自分が若い時に取り組み始めたときのものを何か形にしておく。もちろん研究成果として論文に出すというのも大事ですけど、そうではない面で何か残しておくと、将来的に自分のためにもなると思います。

自分のために必要なものはこれだと思ったら、
積極的にチャレンジを!

研究をしていくうえでは様々な困難がありますが、そんな中でも、グラントに応募することで外部の人に評価してもらったり、研究費などのサポートがついたりと、外とのつながりをいろいろと持つ喜びを感じてもらえるといいかなと思います。だんだん業界に慣れてきて、世間のしがらみにとらわれたりすると(笑)、せっかくいいものだったのに早々に自分でダメ出しをしたり、諦めたりしがちです。グラントに応募するのは時間の無駄なのではないかと思わずに、どんどんチャレンジしてみましょう。書いたことが次につながったりすることもけっこうありますので、なんとか時間を見つけてトライしてみてください。

なかなか時間がないという人も、ちょっと無理してでも余裕を持った方が、精神安定上もいいのかなという気もします。心が病んでしまわないようにどうするかというのも、本当は早い段階で自分でも考えたほうがいいのかもしれません。あまり周りに振り回され過ぎると自分が消耗してしまうので、自分のためには必要なのはこれだというものを見つけること。エディテージ・グラントは、その良い機会になると思っています。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

エディテージはカクタス・コミュニケーションズが運営するサービスブランドです。学術論文校正・校閲、学術翻訳、論文投稿支援、テープ起こし・ナレーションといった全方位的な出版支援ソリューションを提供しています。

目次