エディテージ・グラント2025にて博士情報エンジン賞を受賞した山下 真依さんに、入賞した喜びやご自身の研究について、グラントに応募して感じたことなどを語っていただきました。
山下 真依さんプロフィール
Mai Yamashita
2023年4月 日本学術振興会特別研究員DC2(兵庫県立大学大学院理学研究科)
2024年3月 兵庫県立大学大学院理学研究科博士後期課程修了・博士(理学)取得
2024年4月 日本学術振興会特別研究員PD(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)
2025年3月~現在 島根大学総合理工学部物理工学科 助教
趣味はバードウォッチング。昨年度から松江市に引っ越し、冬季には白鳥を300羽ほど見たほか、他にも珍しい鴨や雁にも続々と出会うことができ、自然の豊かさを感じている。

受賞した研究内容について
私の専門は天文学ですが、その中でも、望遠鏡を用いて夜空の星を観測するという、特に皆さんのご想像と近い研究をやっています。私の主な研究対象は、100万歳から1億歳という若い星「前主系列星」です。太陽は現在46億歳ですから、これらの星はまるで「赤ちゃん星」です。赤ちゃん星の周囲には、星の材料となるガスや塵が円盤として残っています。若い星はどれも活発で、時々刻々と明るさを変化させます。明るさの変化を観測することで、その星がどのようなフェーズにあるのかが分かります。こうした変化を継続的に追跡するため、自前の観測体制を整えることが重要だと考え、島根大学にも新しい望遠鏡を設置したいと考えました。
エディテージ・グラント2025博士情報エンジン賞を受賞して
博士情報エンジン賞は、私にとって新任地に着任してから初めていただいた表彰でした。新任地には共同研究者がおらず、研究のための環境を0から整える必要がありました。そのような状況の中で本賞によりご支援を賜りましたことは、大きな励みになりました。エマージングテクノロジーズの深澤様ならびにご関係者の皆さまに、ここにて改めて感謝申し上げます。
ご自身の研究について
天文学の観測的研究を進めるにあたり、観測天体・時期・必要なセッティングを一から練り、自力で観測を遂行できる経験と能力を身につけてきました。兵庫県立大学西はりま天文台の2 mなゆた望遠鏡という、一般の方でも覗ける望遠鏡の中で日本最大の望遠鏡を用いた観測経験を積みました。大学時代には「すばる望遠鏡 観測研究体験企画」の参加者として選抜され、ハワイ島・マウナケア山頂での観測を経験しました。ハワイで購入した天文学の教科書を用いて、2025年度には自主ゼミを開き、学部1年生から修士2年生までの14人とともに天文学の基礎を学びました。
天文学に興味を持つきっかけは、小学生の頃、両親に藤井旭さんの『星空図鑑』を買ってもらったことです。当初は美しい天体写真に魅了されていましたが、星が生まれてから一生を終えるまでの進化についての解説にも興味を持つようになりました。その後、天文学を学べる大学へ進学するために、中学・高校では物理学の勉強に励みました。大学の天文学研究室に入る前は、どちらかといえば老いた星の進化に興味を持っていました。ところが、指導教員から「若い星の進化のほうが活発で面白い」と勧められたことで、若い星の活動性について研究するようになりました。
若い星は時々刻々と明るさを変化させます。ですので大型望遠鏡による詳細な観測を行う際に、その星がどのようなフェーズにあるのかを把握することが重要です。そのための自前の観測体制を整えたいと長年考えてきました。将来はハワイのすばる望遠鏡などの大型望遠鏡を用いて星の磁場を観測し、その前後の状態を島根大学の望遠鏡で継続的にモニター観測したいと考えています。このような観測体制を整えることで、島根大学の学生たちも最先端の天文学研究に触れられるのではないかと確信しています。いただいた助成金は観測用カメラや解析用コンピュータの整備などに、大切に活用させていただきます。
エディテージ・グラントに応募した理由
過去に執筆した5本の論文では、毎回エディテージの英文校正サービスを利用させていただきました。そのため、エディテージ・グラントについて目にする機会があったのだと思います。また、島根大学では民間の助成金の情報を収集・共有しており、その中にもエディテージ・グラントが掲載されていました。それをきっかけに、本格的に応募を決めました。
普段の研究生活では、自分の考えをエッセイの形で表現する機会は少ないです。物理学の研究では、事実と主観(感想や考え)を分けることが基本とされています。そのため、自分の考えを自由に表現できるエッセイコンテストという形式自体に魅力を感じました。特に自分の書いたエッセイが全国的にどのように評価されるのかにも関心があり、実力を試してみたいという思いもありました。
それだけではなく、英文校正サービスのクーポンや、科学イラスト制作ツールMind the Graphの一年間のライセンスをいただける点も魅力的だと感じました。
グラントへの応募にあたり、苦労したことや工夫したこと
まず、専門用語や専門的な話題については、専門外の方にも伝わるように注意しました。これは普段の研究生活でも意識していることです。その上で、どうしたら「おもしろい」と思ってもらえるかという点も意識しました。こちらは研究生活ではあまり意識する機会がありませんが、学生時代に天文学の教育普及に関するアルバイトをしていた経験を思い起こし、それを活かしました。
エディテージ・グラントに応募してみて感じたこと
用途につきましては、これほど自由度の高い助成金はありません! 他の助成金プログラムでは使途が制限されたり、適切かどうかを審査されることがあります。使用期間も定められていて、年度内に1円単位で使い切ることに負担を感じる場面もあります。エディテージ・グラントは柔軟に活用できるため、本当にストレスフリーです。
応募方法もユニークでした。エッセイを書いて審査されるのは初めてで、新鮮に思いました。
また、一次審査通過時の時点で、副賞として英文校正サービスのクーポンや、科学イラスト制作ツールMind the Graphの一年間のライセンスをいただいたのですが、こんなにも特典があるなんて、お得ではありませんか!? その時点で嬉しかったです。続いて優秀賞は逃しましたが、まさか次点に選ばれるなんて! その後、まるで敗者復活戦のように「博士情報エンジン賞」を追加受賞しました。こちらはまさに寝耳に水でしたので、本当に驚きました。
普段、若手研究者として感じていること
学生時代も現在も地方大学にいますが、都市部との格差を日々感じています。都市部では研究会が多く開催されており、電車代を自腹で負担したとしても日帰りでの参加が可能です。一方で島根県から参加する場合、高額な航空運賃がかかります。あるいは約3時間かけて岡山駅まで移動してから、ようやく新幹線に乗車できます。
今年度からは研究費を自ら獲得していく立場になりましたが、大学から配当される費用は年々減少していると聞きました。当初は十分な研究費がない中で、どのように研究室の環境を整え、成果を出せばいいのかが分かりませんでした。島根県には四年制大学が二校しかなく、学生が思う存分に研究できる環境を整えることが重要であると思います。都市部の大学と地方大学の格差を解消するために「地方手当」のような制度が必要なのではないかと感じます。
