エディテージ・グラント2025次点を受賞-小倉 拓郎さんにインタビュー

エディテージ・グラント2025にて次点を受賞した小倉 拓郎さんに、入賞した喜びやご自身の研究について、グラントに応募して感じたことなどを語っていただきました。

小倉 拓郎さんプロフィール
Takuro Ogura

一橋大学大学院社会学研究科・講師。専門は自然地理学,地形学,地理情報科学,地球科学教育。ドローンを用いた高精細地形情報の取得・解析をベースとして、地形変化プロセスを解明する研究を実施。取得したデータの教育的活用と効果検証に関する研究も実施している。

福井県福井市生まれ。博士(環境学)。金沢大学人間社会学域人文学類地理学専門分野卒業後,同大学院人間社会環境研究科地域創造学専攻博士前期課程修了。その後東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻博士課程修了。北海道大学地球環境科学研究院・博士研究員、筑波大学生命環境系・助教、兵庫教育大学大学院学校教育研究科・講師,准教授を経て、2026年4月より現職。個人ウェブサイト(https://www.geoguraphy.com/

趣味は高速道路を長距離ドライブすることで、幼少期に父が運転する車に乗って全国各地を走り回った経験が忘れられず、自分で車を運転し始めてからも全国津々浦々走り回っている。料理も大好きで、昼にぼんやり夕飯の献立を考える時間が楽しみのひとつ。昨年子どもが生まれ、家族の生活スタイルも大きく変化している。

Takuro Ogura

受賞した研究内容について

エッセイの中では現在、私が研究している2つのテーマを組み合わせて、災害の記録と記憶をどう次世代につなげることができるのかについて論じました。

滋賀県東近江市の愛知(えち)川流域では過去にたびたび氾濫を起こしていたころもあり、伝統的な治水に使われた「猿尾」とよばれる石積の構造物がみられます。しかし、都市化やダム建設、植生の過度な被覆によって、その位置や役割について地域住民から忘れ去られつつあるところです。私たちは、ドローンにレーザスキャナを搭載した測量機器を用いて、森林の中に埋もれている猿尾の位置を可視化し、地図に落とし込みます。地図を他分野の研究者と共有し、17世紀に作成された古地図との比較や、地域に住む高齢の方に聞き取り調査を実施することで、猿尾がどれくらい残っているのか、どのような役割を持っていたのかについて明らかにすることができました。本研究の成果はProgress in Earth and Planetary Science誌に掲載されています。(https://doi.org/10.1186/s40645-025-00715-5

また、記憶に新しい災害である令和6年能登半島地震についても研究を実施しています。地震発生直後からドローンを用いた海岸隆起地形の計測を行っており、現在も定期的に計測を続けています。こういったデータを積み重ねて、地震の隆起に対する周囲の環境の応答について、共同研究者と一緒に研究を進めています。また、計測成果を3Dプリンタで印刷したり、デジタル教材を整備したりすることで、能登のことについて学べる教材を作成しました(例:https://gis-oer2.csis.u-tokyo.ac.jp/drr-education)。本研究の成果はJournal of Disaster Research誌に掲載されています。(https://doi.org/10.20965/jdr.2025.p0401

以上の2つの研究より、記録(地形計測の成果)と記録(地域住民をはじめとする被災者の体験等)の両方を詳細に記録することで、5年後、10年後にとどまらず、100年、200年、その先の基礎研究や人間生活に役立つ資料ができるのではないかと考えております。これからも定期的に計測と解析を続けることで、自然環境と社会との接点について考えていきたいと考えております。

エディテージ・グラント2025次点を受賞して

キャリアを積むにつれて研究テーマの幅が年々広くなっている中で、エディテージ・グラントのエッセイを作成する際に、自分の研究テーマが自分の中でどう位置づけられているかについて整理することができました。この経験を通して、次の研究に繋がるブレインストーミングにもなり、非常に良い経験ができました。

研究している分野に興味を持った理由

私が中学校1年生の頃に、地元の福井市の中心部を流れる足羽川の堤防が決壊し、通っていた中学校が床上浸水の被害を受けました。それまで自然災害に対して漠然とした知識しか持っていなかった自分にとって、非常に鮮明な記憶となりました。この出来事がきっかけで、河川がつくる地形や河川に対する人々の付き合い方についてもっと知りたいと思うようになり、現在に至ります。また、もともと高等学校の地理の先生になりたいという夢を抱いていたこともあり、そういった地形学的現象をいかにわかりやすく伝えるかに関する研究についても興味があります。

そこから多種多様な研究テーマに挑戦してきましたが、自分の軸は何なのか?と考えることも多いです。基本に立ち返って、地形学や地理学の研究者としてできることを考えていきたいです。

エディテージ・グラントに応募した理由

エディテージ・グラントは、SNSを通して募集があったことを知りました。大学から受けている研究費だけでは、フィールドワークや機材、解析ソフトなどを十分にまかなうことができません。私は、科研費に留まらず、民間の研究助成については出せるものはなるべく出すように心がけております。研究助成に応募することは、書類作成のプロセスで新たな研究アイデアが浮かんだり、これまでの研究を自分なりに整理することができたりする絶好の機会であると考えております。

エディテージ・グラントに応募してみて感じたこと

エディテージ・グラントと他の助成金プログラムとの違いは、資金の詳細な内訳などを先に提出する必要がなく、純粋に研究に関するエッセイ一本で選考を行っていただいたことが挙げられます。研究が始まってみないと決められない予算の使用用途もあります。その点については、非常に助かりました。

応募した後、一次審査通過のご連絡をいただき、これまで自分が遂行してきた研究の方向性は間違っていなかったのだと自信を持ちました。残念ながら最終面接には進みませんでしたが、セレモニーに出席してさまざまな分野の研究者とコミュニケーションをとる中で、自分の分野にとらわれず、柔軟な発想で研究を進めていかなければならないと改めて認識しました。

いただいた助成金は、指導している大学院生が投稿した英語論文の校閲費に充てました。

普段、若手研究者として感じていること

今年度で大学教員6年目となり、だんだん「若手研究者」としては終わりを迎えつつある時期に入りました。指導研究に対するモチベーションが保てず、大学教員のキャリアを始めたばかりのころは論文を書けない時期が続きました。ここ数年は、 博士号を取得した時期が同じくらいの研究者を中心として共同研究を行い、「みんなで研究して、みんなで論文を書いていこう!」という気持ちで少しずつ頑張るようにしています。その成果が実り、昨年度はいくつかの共著論文を公表できました。また、私は博士課程修了直後から、指導教員として学生指導を行っております。学生の指導を始めてから、なるべく彼らのお手本になれる研究者でいたいという気持ちもあり、楽しく研究を進められている気もします。彼らの研究についても着実に学術論文として公表できており、嬉しい限りです。

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この記事を書いた人

2002年に設立された、カクタス・コミュニケーションズの主力ブランドであるエディテージの目指すところは、世界中の研究者が言語的・地理的な障壁を乗り越え、国際的な学術雑誌から研究成果を発信し、研究者としての目標を達成するための支援です。20年以上にわたり、190か国以上の国から寄せられる研究者の変わり続けるニーズに対応し、研究成果を最大限広く伝えられるよう、あらゆるサポートを提供してきました。
今日、エディテージは専門家によるサービスとAIツールの両方を用いて、研究のあらゆる段階で便利に、安心して使っていただける包括的なソリューションを提供しています。