科学的記録の訂正:論文の撤回への対応

Correcting the scientific record Dealing with retractions

正直さと誠実さは科学研究の核心です。自らの研究が社会に与える潜在的な影響を考慮すると、科学者は研究を倫理的に行う道徳的義務があります。

科学的誠実さが疑問視されている現在、2023年には科学ジャーナルから撤回された論文の数の記録が塗り替えられました。科学論文の撤回とは、重大な間違いを含む出版された論文を削除することを指します。学術文献を訂正し、論文の間違いを読者に知らせることを目的としています。撤回された研究論文の数は2023年に急増し、1万本以上の論文が撤回されました。

もちろん、技術、プロセス、リソース、その他の最近の発展により、間違いの検出数は以前より当然多くなることは考慮しなければいけません。とはいえ、この傾向は懸念すべきものです。この記事では、なぜ撤回が起こるのか、そして倫理的な研究者はどのように自分の研究が撤回される可能性に対処すればよいのかについて解説します。

撤回の理由

論文の撤回には主に2つの理由があり、それらは根本的に異なります。誠実で倫理的な研究者は、論文の方法、データ、結論に間違いを発見した場合、自ら撤回を決断することがあります。

一方、研究者以外の誰かが、その研究に何らかの間違いや不正があったことを発見する場合もあります。この場合、出版物の編集委員会が論文を撤回することができます。多くの場合、この種の撤回は、不正なデータ、剽窃、不正な著者名、または一般的な不正行為や、研究および出版倫理に関する専門規定を守らなかったことが原因です。

専門家レベル・個人レベルでの撤回による影響

撤回によって、研究者、その母体である研究機関、ジャーナルなど、研究に関わるすべての関係者に悪影響が及ぶ可能性があります。しかし当然ながら、撤回によって最も影響を受けるのは研究者自身です。

通常、学術界は、撤回の理由がうっかり間違いであり、撤回が著者自身によって行われた場合には、寛容になる傾向があります。この場合は、研究者の評判や将来の助成金受給資格に深刻な影響を与えることはないかもしれません。自己撤回は、研究者が自らの研究を批判的に検証でき、過ちから学ぶ姿勢があることを示すため、研究者の誠実さを表します。

しかし、不正行為によって論文が撤回されるとなると、事態はより深刻です。この場合、科学界は寛容ではないことが多くなります。不正行為によって論文が撤回された研究者は、その分野ではより厳しく扱われます。これは、専門家レベルでも個人レベルでも、評判や信頼性に影響を与える可能性があます。また、将来の雇用や資金調達にも影響があるかもしれません。

どちらの撤回の場合でも、論文を撤回された著者の被引用回数は10〜20%減少しています。科学界はまた、論文が撤回された研究グループの研究結果を受け入れることには慎重です。その結果、既存または潜在的な共同研究に悪影響を及ぼす可能性があります。ジャーナルは、過去に論文が撤回された著者の論文の掲載を避ける場合があります。

修正点と懸念事項を解決する

著者は自分の研究を監督し、報告された内容に対して全責任を負う必要があります。論文発表後にうっかり間違いを発見した場合、所属機関とジャーナルに報告し、修正することは、あなたと共著者の責任です。共著者が何らかの形で研究不正を行っている証拠を発見した場合は、それをジャーナルだけでなく所属機関にも速やかに報告することが求められます。これは、他の研究者、研究グループ、またはメディアがその不正を暴露するよりも害は少ないでしょう。

ジャーナルからすれば、撤回は最後の手段です。ジャーナルは論文を撤回する前に、データが間違っているという主張を徹底的に調査します。研究論文の正確性に疑問を抱かせるのには十分なものの決定的ではない証拠がある場合、ジャーナルはあなたに懸念を示すかもしれません。この場合、ジャーナル編集者と協力してこれらの問題に対処することが求められます。データと解釈の信憑性と完全性が損なわれていなければ、これらを迅速に行うことで、撤回に発展するのを防ぐことができます。

撤回への対処

出版倫理委員会(Committee of Publication Ethics)が発表した撤回ガイドラインによると、撤回の目的は著者を罰することではなく、科学文献の完全性を保護することです。これは、撤回された論文に対処する際に心に留めておくべき重要なことです。論文が撤回されることは、明らかな不正の兆候ではなく、むしろ良いことなのです。

ジャーナルがあなたの論文の撤回を望んだ場合、正式な通知を受けてから撤回に同意するのがベストです。撤回の理由については、すべての共著者に通知することが求められます。今後の助成金申請では、この撤回に関する詳細を開示するのが最善の方法です。

評判への影響を管理し、回復力と強さを持って前進する

論文を撤回することは、特にそれがうっかり間違いによるものである場合、感情的に難しいものです。ほとんどのジャーナルは、このプロセスをガイドするための枠組みを用意しています。

撤回、特にうっかり間違いによる撤回に直面した後でも、優れた科学を追求し続け、質の良い論文の出版を目指すことが重要です。あなたの努力と仕事の質は明らかにすることで、うっかり間違いによる過去の撤回がもたらす悪影響を克服するのに役立つ可能性があります。

サポート体制

撤回をサポートしてくれるのは、同僚や協力者たちです。彼らはあなたやあなたの仕事を最もよく知っており、この困難な状況に対処するためのサポートをしてくれるはずです。

また、うっかり間違いがあった場合には、所属機関や法務チームにサポートを依頼することもできます。

結論

撤回の目的は科学的誠実さを保護することですが、撤回の大部分は科学的不正行為によるものであるため、撤回には汚名がつきまといます。これは、うっかり間違いによって撤回された研究者に影響を与えます。不幸にもこのような事態に陥った場合、進むべき道は、間違いを認め、対処し、修正し、学ぶ姿勢を示すことです。重要なのは、あなたの誠実さと信頼性を示す質の高い仕事をし続ける必要があるということです。


この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

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