何年もかけて苦労して開発した手法を、誰かが無断で使用し、あなたの名前も、その手法を説明した原論文も一切示さずに論文を発表したとしたら、どれほど腹立たしく感じるでしょうか。謝辞も引用もなくアイデアを利用する行為は、研究者にとって単なる不注意ではなく、明確な不正行為です。
剽窃は、アイデアだけに限りません。文章の構成や言葉の選び方、さらには図表の使い方に至るまで、正当な引用や出典の明示なしに利用すれば、それは剽窃に該当します。出版へのプレッシャーが高まるなか、一部の研究者が安易な方法に頼ってしまうケースもあります。既存の論文から段落をそのままコピーし、新たな原稿に貼り付けて投稿する――これは極端な例ですが、このような小規模な剽窃は決して珍しくありません。
例えば、農業分野において、小麦で実施された実験とほぼ同様の研究を米で行う場合を考えてみましょう。本来であれば、研究条件や文脈に即して手法を自らの言葉で記述すべきです。しかし、該当箇所をそのまま引用せずに転用すれば、それもまた剽窃にあたります。
現在、研究出版のほとんどがデジタル化されており、剽窃の検出技術も高度化しています。不正は以前にも増して発覚しやすい時代になっています。本記事では、剽窃とは何かを改めて整理するとともに、その種類や具体例、そして自身の研究において剽窃を回避するための実践的なポイントを解説します。
剽窃の種類
剽窃は文章だけに限られるものではありません。出典を明記せずに図表や写真を使用すること、あるいは他者のアイデアや手法を適切な引用なしに利用することも剽窃に該当します。問題なのは「借用」そのものではなく、出典や謝辞を示さずに利用する点にあります。科学は本質的に、現在および過去の研究者たちが互いの成果を参照し、それを積み重ねながら発展してきた営みです。だからこそ、適切な引用と明示は研究の誠実さを支える基本原則なのです。
剽窃は、一般に以下のような観点から分類されます。
- 出典の有無:適切な引用を行っているかどうか。(自己剽窃もこのカテゴリーに含まれます)
- 剽窃の程度:逐語的剽窃は、原文を一字一句そのままコピーする行為です。一方、散在的あるいは「モザイク」剽窃は、論文全体にわたって断片的に文章をコピーすることを指します。
- 剽窃されたコンテンツの種類:文章だけでなく、図表、画像、表、さらには他の研究者が独自に作成した数式なども対象になります。
- 意図の有無:故意に行われた場合は意図的剽窃、構成要件を十分に理解しないまま行われた場合は非意図的剽窃とされます。
しかし、重要なのは剽窃の細かな分類ではありません。機関や団体によって定義やカテゴリー分けは多少異なりますが、本質的に求められるのは、それらを理解し確実に回避することです。
剽窃を避けるための6つのポイント
1. 執筆と推敲に十分な時間を確保する
剽窃に頼ってしまう最も一般的な理由は、「コピー&ペーストの方が速いから」です。しかし、多くのジャーナルでは投稿論文に対して剽窃チェックを実施しており、剽窃が発覚すれば即座にリジェクトされる可能性があります。その結果、かえって貴重な時間を失うことになります。文献を読む際には、可能な限り自分の言葉でメモを取りましょう。そして初稿を書くときは原文ではなく、そのメモを参照します。必要に応じて、保存しておいた原文と後から照合すれば十分です。
2. 引用符を使用し出典を明記する
直接引用を行う場合は、必ず引用符で囲み、出典を明記してください。出典表示だけでは不十分で、読者が「これは引用である」と明確に分かる形にする必要があります。
例:
“read complicated texts—especially PhD theses produced at UK universities . . . they are likely to be written in good academic English” (Anikina 2021).
引用は一字一句正確に再現することが重要です。句読点、イタリック体、綴りなども含め、原文と一致しているか必ず確認しましょう。
3. 原文を自分の言葉で言い換え、出典を明記する
他者の考えを適切に出典表示した上で言い換えることは、剽窃ではありません。ただし、表現は必ず自分の言葉で行う必要があります。執筆中は原文を目の前に置かないようにしましょう。原文を見ながらでは、無意識のうちに構造や表現をそのままなぞってしまう可能性があります。また、言い換えによって意味が歪められないよう注意してください。内容の正確性は最優先事項です。
4. 多様なテーマを幅広く読み、優れた作家の文章に触れる
多様な分野の文献に触れ、語彙力と表現力を高めることは、効果的なパラフレーズにつながります。質の高い文章で知られる著者の作品を読むことで、多様な文構造や論理展開を自然に吸収できます。読書は遠回りに見えても、将来的に必ず執筆力の向上という形で成果をもたらします。
5. 出典の書誌情報を正確に記録する
引用を正しく行うには、出典情報の正確な管理が不可欠です。デジタル化により文献検索は容易になりましたが、コピーや転記時のミスも増えています。引用箇所と参考文献リストが一致しているか、必ず最終確認を行いましょう。
6. 論文の剽窃チェックを実施する
自分の文章や言い換えに不安がある場合は、剽窃チェックツールや専門サービスを利用するのも有効です。投稿前に潜在的な問題箇所を特定できれば、早期に修正できます。例えば、Editageのトップジャーナル英文校正では、言語編集に加えて12か月間無制限の剽窃チェックが含まれています。投稿前の安心材料として活用できます。
まとめ
剽窃は単なる形式上の誤りではなく、研究倫理に反する行為です。場合によっては論文のリジェクトにとどまらず、研究者としての信頼やキャリアそのものを損なう可能性もあります。
しかし、剽窃は正しい理解と習慣によって確実に防ぐことができます。適切な引用、自分の言葉での執筆、正確な出典管理、そして投稿前の確認――こうした基本を丁寧に積み重ねることが何より重要です。
執筆の過程で時間や成果へのプレッシャーを感じることもあるでしょう。それでも、誠実な研究姿勢を貫くことが、最終的には自らの研究の価値を守ることにつながります。十分な注意を払い、責任ある形で知識を共有することこそが、長期的な研究キャリアを支える基盤となるのです。
この記事はエディテージ・インサイト(英語版)に掲載されていた記事の翻訳です。エディテージ・インサイト ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

