学術界は短期間で「研究にAIツールを使うべきか?」という議論から「研究にAIツールをどう活用するか?」という議論へと移行しました。AIブームは学術界におけるAIの有用性を証明しており、特に研究論文執筆、文献レビューの実施、参考文献管理、研究ワークフロー全体の生産性向上においてその価値が認められています。
この記事では、AI ツールを文献レビューにどのように活用できるか、AI ツールを選択する際にどのような機能に注目すべきか、そして文献レビューのプロセスを簡素化できる上位5つのツールについて解説します。
文献レビューにAIツールを使う理由
文献レビューは、研究ワークフローにおいて最も時間のかかる作業のひとつです。研究テーマに関連するすべての論文を見つけることは不可能かもしれませんが、適切なAIツールを活用することで、最も関連性の高い論文を特定する作業を簡素化することができます。
従来、文献レビューはキーワードベースのツールを用いて行なわれてきました。しかし、キーワードには適切なトピックと一致しない同義語が含まれている可能性があるため、これらのツールは十分に機能しない場合があります。さらに、同じ概念を用いているにもかかわらず、言語の不一致によりツールで特定されない論文も存在する可能性があります。つまり、研究トピックの全体像を把握することが困難なのです。
ここでAIが重要な役割を果たします。AIは検索クエリをより広範なネットワークで相互参照することで、存在する情報をより明確に把握できるようにします。
文献レビューに役立つAIツールの機能
AIツールを探す際、文献レビューを簡素化するために優先すべき機能をいくつか紹介します。
1. スマート検索オプション
検索クエリに関連する結果のみを絞り込めるスマート検索機能を備えているか確認しましょう。例えば、地域的な影響に基づいて食事習慣の改善手法を研究している栄養士の場合、検索クエリ全体を入力した後、特に興味のある地域(例:アジア諸国)をハイライト表示することができます。
2. 効率的な閲覧
AIツールは検索クエリに適合すると判断した膨大な結果リストを提供することがよくあります。「ブックマーク」や「候補リスト」機能を使って、興味深い論文をまとめて後で簡単に参照できるようにしましょう。
3. パーソナライズされたおすすめ情報
ツールは研究分野や過去の検索履歴に基づき、ユーザーのニーズに合わせたおすすめ情報をスマートに提供できるべきです。この機能は、アプリケーションやウェブサイトを繰り返し利用する際に時間を節約するのに役立ちます。
4. 内容の要約
最初から論文全文を読むのは大きな課題です。重要なポイントを強調して研究の概要を把握できる、論文内容を要約するツールを選びましょう。要約を読むことで、関心のある論文をより迅速に絞り込むことができます。
5. 音声論文と翻訳機能
ツール内の音声再生と翻訳機能も便利な機能です。音声で論文を聴ける機能は、研究者の多忙なスケジュールを考えると特に利便性が高いと言えます。一方、コンテンツを好みの言語に翻訳するオプションがあれば、これまで理解が難しかった研究も理解しやすくなります。
文献レビューに最適なAIツール トップ5
AIツールに求めるべき要素がわかったところで、次にAIを活用した文献レビューツールのトップ5を紹介します。
R Discovery1
- R Discoveryアプリは文献検索のワンストップソリューションのようなもので、関心のあるトピックやジャーナルを選択してカスタマイズされた検索結果を取得するオプションを提供します。
- アプリ上で直接研究論文のタイトルを検索できるほか、ZoteroやMendeleyなどのリファレンスマネージャーから既存の研究論文コレクションをインポートすることも可能です。
- このアプリは、関連性、新しさ、アクセスのしやすさを考慮して何百万件もの研究論文から検索を行ない、最適な結果を提供します。
- さらに、関心のある内容の要約を提供し、後で閲覧するために論文をブックマークして保存することもできます。
Consensus2
- このツールでは、自然言語クエリとキーワードの両方を使用して論文を検索できます。
- 独自の学術ウェブ「Consensus」に加え、Semantic ScholarやOpen Alexとリンクした膨大なデータベースから最も関連性の高い検索結果を提供します。
- 各検索結果は「follow-up」機能でさらに詳しく調べることができ、追加のコンテキストを提供しなくても、元の検索クエリに関連するトピックの詳細な要約を取得できます。
Litmaps3
- このツールを使えば、データベースを検索する際に研究論文間の関連性を構築することで「literature maps(文献マップ)」を探索できます。ポイントは、自分のトピックに関連する論文の中で最も引用数の多いものを選択し、それに関連する他の文献をすべて閲覧できるようにすることです。
- トピックに関連するより関連性の高い論文が見つかったら、検索を絞り込んで文献マップを構築することもできます。
- 関連するすべての研究を1カ所で可視化してグラフィカルに表現することで、体系的な文献レビュープロセスを実現します。
Scite4
- このツールでは、「seed paper」から検索を開始すると、その論文に関連する文献が表示されます。Litmapsと同様に、関連論文を結びつけて参考文献リストを作成できます。
- スマート引用機能は論文間の関係性を示すだけでなく、その関係性を解釈します。例えば関連トピックを持つ2つの論文に対照的な点がある場合、Sciteは論文内容のどの部分にその対照的な点があるかを特定します。
- これにより関連する論文が互いに支持し合うか反対し合うかを把握でき、研究トピックに関する既存の文献の全体像を把握できます。
ResearchRabbit5
- ResearchRabbitでは、キーワード、タイトル、著者名、DOIを用いて文献を検索できます。
- 1本の論文から検索を開始し、その論文にリンクされている参考文献や引用文献を通じて、関連する文献の広範なデータベースを発見できます。
- このツールは、論文間の関係を理解しやすくするインタラクティブで直感的なグラフを提供し、収集した参考文献をすべて追跡しながら、タイムラインに基づいて単一著者の論文を検索することを可能にします。
重要なポイント
AIツールの選択は、研究の目的によって異なります。例えば、R DiscoveryやLitmapsといったツールは、膨大なリストから文献を選別し、参考文献の管理を効率化することに重点を置いています。一方、ConsensusやSciteは既存の文献を深く掘り下げ、研究課題の策定に役立ちます。
AIツールを賢く選び、自身の研究ワークフローに最適なものを統合しましょう!
参考
- R Discovery: https://www.youtube.com/watch?v=Fgci6sJdyPQ
- Consensus: https://www.youtube.com/watch?v=sVgIgy_R2f8
- Litmaps: https://www.youtube.com/watch?v=gxm3ahIaO7c
- Scite: https://www.youtube.com/watch?v=AlAa1Fb_4ro
- ResearchRabbit: https://www.youtube.com/watch?v=16eOHCbi9fI
この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

