国境を越える:多言語プラットフォームはリサーチコラボレーションをどう再定義するか(後編)

学術分野における国際協力はどのように進めればいいのでしょうか? リサーチコラボレーションにおける地理的、言語的な課題を克服するための2部構成のシリーズの後編をお届けします。前編はこちらから。

Transcending borders Maintaining a multilingual scientific landscape (Part 2)
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査読プロセスにおける言語的な課題

現在、世界195カ国で、人類は7,000以上の既知の言語を使用しています。これほど多様な言語が存在するにもかかわらず、科学出版物を見てみると、英語が科学の世界における共通語となっているのは間違いありません。中国語、フランス語、ドイツ語など他の言語による科学論文もありますが、英語での論文に比べるとかなり稀です。この言語的ヒエラルキーは、英語を母国語としない科学者にとって大きな課題となります。論文を執筆するうえでの問題に直面するだけでなく、偏見を持って査読されることもよくあります。

査読プロセスにおけるバイアスとその解決

現在、ほとんどのジャーナルでは、査読者は著者が誰であるかを知ることができる一方で、著者は査読者が誰かを知ることができない「単一匿名化アプローチ(single-anonymized approach)」を採用しています。これは査読者からは著者が英語を母国語とするか情報からある程度推し量ることができるため、著者に偏った影響を与えます。また、このバイアスは科学的貢献のメリットよりも正しい文法が過度に影響力を持つなど、編集者の評価にも忍び込みます。ほとんどのジャーナルで行われているこの単一匿名化された査読プロセスは、英語圏(特に北半球)に対するバイアスを高めています。しかし、現在の査読プロセスを大幅に見直すことは、科学における多様性、公平性、包括性を高めるのに役立つかもしれませんが、同時に課題もあります。

この単一匿名化アプローチに起こり得るバイアスを防ぐもう一つのアプローチとして、二重匿名化された査読プロセス(double-anonymized peer review process)があります。しかし、Functional Ecology誌の論文では、この二重匿名プロセスは任意ではなく必須である場合にのみ、バイアスを防ぐのに役立つと言及しています。その理由として、英語圏の人々はこのオプションを選択しない傾向が高く、その結果「二重匿名化された論文は英語が主言語ではない国の論文である」と見なされてしまうからです。

そのため、査読段階におけるこのような問題を簡単に解決することはできませんが、国際的な研究コラボレーションがバイアスを防ぐ役に立つ可能性があると考えられます。 

まとめ

研究者は、包括性を追求する世界において、言語や地理的な障壁を超えるツールを採用する必要があります。国際協力の重要性を理解し、コミュニケーションの課題を認識し、適切なツールを活用することで、研究者は画期的な科学的貢献への道を切り開くことができます。最後に、ドイツ語やロシア語といった他の言語も、過去には科学界を牽引してきたことを認識しておくべきです。いつの日か、英語に代わって他の言語がリサーチコミュニケーションに最も使用されるようになるかどうかは誰にもわかりませんが、透明性を維持し、コミュニティ全体の多様性と公平性を促進することは有益です。


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この記事を書いた人

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