研究の可視性を高めるグラフィカルアブストラクトのもうひとつの役割

The Role of Graphical Abstracts in Enhancing Research Visibility

科学コミュニティーではグラフィカルアブストラクトの需要が非常に高く、主要なジャーナルや出版社から提出を求められたり、義務付けられたりしています。しかし、グラフィカルアブストラクトは本当に研究の可視性を高めるのでしょうか? そもそも研究におけるグラフィカルアブストラクトの役割とは可視性を高めるだけでしょうか? この記事では、それらの点について詳しく深掘りしていきます。

ソーシャルメディアでの拡散のためのグラフィカルアブストラクト

研究の発表は、もはやジャーナルや定期刊行物に限定されません。ソーシャルメディアやショートコンテンツの台頭に伴い、科学コミュニティーはコンテンツ拡散の急速な変化を受け入れるようになりました。研究者がグラフィカルアブストラクトを取り入れる主な理由は以下の通りです。

  • 視覚的な要約は、文章に比べ読者の注意を引きやすいことが知られている。
  • グラフィカルアブストラクトは、科学コミュニティー以外にも幅広く多様な読者に情報を届ける手段となる。 
  • 研究に適したグラフィカルアブストラクトが魅力的な形式で提示されることで、読者の好奇心を刺激する。 

このように、グラフィカルアブストラクトは研究を広く届けるための効果的な手段として注目を集めています。

とはいえ、研究論文の閲覧・ダウンロード・引用にグラフィカルアブストラクトが与える実際の影響はどのようなものでしょうか? その答えは実に驚くべきものです。

グラフィカルアブストラクトが研究論文のパフォーマンスに与える影響

研究者として、私たちは単に研究コミュニティに研究成果を「伝える」だけでなく、研究が人々に注目され、読まれ、理解され、さらに深く調査されることを望んでいます。いくつかの研究は、グラフィカルアブストラクトが研究論文の全体的なパフォーマンス向上に役割を果たしたかどうかを分析することに焦点を当てています。以下がその概要です。

  • 2016年、ある研究者が2014年3月から2015年3月までにMolecules誌に発表されたグラフィカルアブストラクトを含む論文と含まない論文を、可視性を反映する複数の出力パラメータを考慮して統計的に比較しました。一般的な主張に反して、グラフィカルアブストラクトを含まない研究論文は、PDFのダウンロード数、アブストラクトの閲覧数、総引用数において、グラフィカルアブストラクトを含む研究論文よりも大幅に優れた成績を収めたことが判明しました。

    ただし、この時点ではジャーナルにおけるグラフィカルアブストラクトは比較的新しい概念であり、研究者は1誌の限定された期間に焦点を当てていました。このため、この研究で観察されたパターンを検証するため、より多くの異なるジャーナルを対象とした追加の研究が求められました
  • 2021年に実施されたコホート研究では、グラフィカルアブストラクトを作成する時間とコストを考慮すると、科学的研究の普及に効果的ではない可能性があるという結論が出されました。ただし、この研究の対象は、総合医学誌(幅広い読者層を持つ一般的な医学トピックを掲載するジャーナル)に限られていました。研究者は、「この結論は専門誌(専門的な読者を対象とするジャーナル)には当てはまらない可能性がある」と指摘しています。なぜなら専門誌では、一般の人々が理解できないほど複雑な論文が多く発表されるからです。
  • 2022年には2つの研究が、医療分野における研究の普及に対するグラフィカルアブストラクトの影響について新たな知見を提供しました。

    Klaassenら研究チームは、European Urology誌に掲載された原著論文におけるグラフィカルアブストラクトと論文内で使用されている主要な図表を比較し、ソーシャルメディアを通じた読者エンゲージメントを評価しました。その結果、グラフィカルアブストラクトは研究論文の主要な図表よりもXでのインプレッション数やリツイート/いいねの数が多く、ソーシャルメディアでのリーチを拡大することを発見しました。ただし、全文記事へのリンククリック数は主要図の方が多くなりました。

    別の研究では、研究者たちは、グラフィカルアブストラクトが消化器病学と肝臓学の分野におけるジャーナルのインパクトファクターを高めるのに効果的なだけでなく個々の論文の引用数とソーシャルメディアでの露出を増加させる効果があることを明らかにしました。これは、ジャーナルと著者双方にとってのグラフィカルアブストラクトのメリットを強調するものです。
  • 2023年のある研究では、グラフィカルアブストラクトは第一印象を良くし、テキストのアブストラクトの利用率向上につながったことが報告されました。しかし、グラフィカルアブストラクトの有無にかかわらず、全文記事や引用の利用率には大きな差は見られませんでした。

ポイント

現状の研究では、グラフィカルアブストラクトが研究論文の露出度を増やしているという結果は出てきていても、まだまだ読者を増やすという確固たる証拠は出ていません。であれば、なぜグラフィカルアブストラクトを作成し続ける必要があるのでしょうか?

まず、多くのジャーナルや出版社は、グラフィカルアブストラクトの掲載がインパクトファクターに与える影響を認識しています。そのため、グラフィカルアブストラクトやビジュアルサマリーへの需要は衰えていません。また、グラフィカルアブストラクトがクリック率を向上させないとしても、様々なソーシャルメディアプラットフォームで研究を宣伝する上で非常に効果的です。広範なリーチにより、グラフィカルアブストラクトは世界中の多様な研究者とのネットワークの形成を後押しし、興味深いコラボレーションにつながる可能性もあります。追加の時間、コスト、労力はかかるものの、研究と分野に適したグラフィカルアブストラクトを作成することは、科学知識の普及と研究の可視性を高める最も効果的な方法のひとつなのです。


この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

2002年に設立された、カクタス・コミュニケーションズの主力ブランドであるエディテージの目指すところは、世界中の研究者が言語的・地理的な障壁を乗り越え、国際的な学術雑誌から研究成果を発信し、研究者としての目標を達成するための支援です。20年以上にわたり、190か国以上の国から寄せられる研究者の変わり続けるニーズに対応し、研究成果を最大限広く伝えられるよう、あらゆるサポートを提供してきました。
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