論文出版の予期せぬ遅延を最小限に抑えるには

Minimizing unforeseen publication delays

論文の出版スケジュールを綿密に立てることは、研究結果を最小限の遅れでジャーナルに掲載するうえで非常に役立ちます。残念ながら、出版は必ずしもスムーズで迅速なプロセスではありません。出版プロセスには多くの関係者が関与するため、スケジュールに遅れがでることは避けられません。この記事では、出版プロセスを遅らせる原因になりえる事柄について説明し、それらを最小限に抑えるための実践的なヒントを提供します。

出版までの期間 – 簡単な概要

ジャーナルによってワークフローやリソース、編集上の意思決定プロセスなどが大きく異なるため、最初に投稿してから論文が出版されるまでの期間を一概に言うのは難しいのですが、一般的なフローは以下のとおりです。

最初の投稿

投稿するのに適切なターゲットジャーナルを決めたら、論文がジャーナルのガイドラインとフォーマット要件を満たしていることを確認しなければなりません。これには数分から要件が複雑な場合は数日かかります。次に多くのジャーナルには、査読者に論文を送る前に編集者がチェックする事前審査段階があります。これには、ジャーナルの方針や作業量にもよりますが、数日から数週間かかります。ほとんどの論文は、最終的にどこかのジャーナルで発表されるまでに少なくとも一度はリジェクトされます。そのため、著者は複数のジャーナルに順次投稿し、その都度、新しい対象ジャーナル用に原稿を編集する必要があり、それが出版の遅れの大きな原因となっています。

査読

これは、査読者が割り当てられるまでの時間、仕事量、厳密さ、査読担当者の互いの意見の一致や不一致の度合いに左右されるため、最も変化しやすく、予測不能なステップです。研究者自身がコントロールすることはほぼできません。査読自体にかかる時間は通常数時間ですが、プロセス全体には数カ月かかることもあります。また、分野やジャーナルによっても大きく異なります。1カ月未満の場合もありますが、特に人文科学などの分野では6カ月以上かかる場合もあります。査読者が締め切りを過ぎるのもよくあることです。

更にこの査読ステップには編集判断も含まれており、編集者は査読者のコメントを考慮して、アクセプトするか、リジェクトするか、修正を求めるかを決定します。査読者のフィードバックがどれだけ明確で一貫しているか、また編集者の作業量にもよりますが、一般的には数日から数週間かかる場合があります。

リビジョン

このプロセスでは、査読者や編集者のコメントに対応し、論文を再投稿します。修正内容がどれだけ広範で複雑か、作業がどれだけ速くできるかにもよりますが、数日から数カ月かかる場合があります。ジャーナルによっては、修正回数を制限しているところもあれば、そうでないところもあります。このステップは状況によってかなり幅がありますが、3カ月ほどかかることも珍しくありません。

アクセプト

査読が無事完了した論文は、通常、編集者によって掲載が承認されます。これには、編集者の作業量にもよりますが、数日から数週間かかります。

制作、校正、出版

ここでは、論文の書式を整え、校正、コピー編集を行い、オンラインまたは印刷物での出版に備えます。ジャーナルのワークフローやスケジュールにもよりますが、これには数週間から数カ月かかる場合があります。ジャーナルによっては、準備が整い次第すぐにオンラインで論文を出版する場合もあれば(オンライン優先)、ある号に割り当てられるまで待つ場合もあります(印刷優先)。印刷優先のバックログがかなりある場合は、数カ月かかる場合もあります。

このように、学術論文の出版は決して迅速かつ簡単にはいきません。多くのステップは、あなたがコントロールできるものではありません。しかし、対象ジャーナルを慎重に選び、その指示に従い、コメントには迅速かつ丁寧に対応し、忍耐強く根気強く取り組むことで、より早く出版される可能性を高めることができます。

出版の遅れにつながる一般的な原因と落とし穴を克服するには

論文投稿の際はガイドラインをすべて満たす

投稿と査読を容易にするため、多くのジャーナルは「Author guidelines(著者のためのガイドライン)」などと題されたページにポリシーを記載しています。これらには、フォーマット、参照、文字数、倫理などに関する規則が含まれています。技術的な誤りやコンプライアンス違反により、論文がリジェクトされたり、修正のために差し戻されたりする可能性を減らすために、論文を投稿する前にこれらガイドラインをよく読み、それに従ってください。

適切なジャーナルに投稿する

同時投稿は非倫理的とみなされるため、一度に1つのジャーナルにしか投稿できません。そのため、不適切なジャーナルに論文を送ると、数週間の時間を無駄にすることになります。AIを搭載したジャーナル推薦ツール(Researcher.LifeのGlobal Journal Databaseなど)を使えば、テーマ、範囲、品質に合ったジャーナルを見つけることができます。さらに、評判の良い出版社の多くは、各ステップにかかる標準的な時間に関するガイドラインも提供しており、判断するのに役立ちます。多くのジャーナルは、個々の論文の投稿日や受理日についてもウェブサイトに記載しており、論文処理にかかる時間の目安を示しています。

Fast Track Review(迅速査読)を利用する

現在、評判の良い出版社の多くは、有料でFast Track Review(迅速査読)オプションを提供しています。これを利用すれば、論文は2カ月以内に査読され、オンラインで出版されます。論文数が爆発的に増加し、従来のプロセスでは1年以上かかる場合があることを考えると、これは悪くありません。

ただし、ハゲタカジャーナルには気をつけてください。あまり評判の良くないジャーナルの中には、料金と引き換えに、電光石火のスピード納品と迅速な査読を約束するものもありますが、こうしたジャーナルには適切な査読ステップが欠如していることも多いので、誘惑に乗らないようにしましょう。

査読に良い影響を与える

査読をコントロールすることはほとんどできませんが、最初の投稿時に査読者を提案することで、プロセスを促進することができます。優れた専門知識を持ち、スケジュールも妥当な査読者を推薦することで、長引く査読プロセスを早めることができるかもしれません。注意点としては、上司や同僚、共同研究者など、利益相反のある人を推薦しないように気をつけましょう。

スムーズなコミュニケーション

編集者からメールを受け取ったら、”鉄は熱いうちに打て”。迅速なコミュニケーションにより、決定までの時間を短縮することができます。

プロセスが長引いているような場合、丁寧な言葉で投稿のステータスを尋ねるメールを送ることで、編集者の行動を促すことができます。編集者は多忙を極めていることが多いので、フレンドリーなリマインダーが役立ちます。もちろん、決断をせかすようなことはやめましょう。あなたのチャンスを助けるどころか妨げる可能性があります。

結論

論文発表の遅れは、学術出版において避けられないもので、イライラする部分でもあります。上記のヒントに従うことで、遅れる原因を最小限に抑え、より早く出版される可能性高めることができます。


この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

エディテージはカクタス・コミュニケーションズが運営するサービスブランドです。学術論文校正・校閲、学術翻訳、論文投稿支援、テープ起こし・ナレーションといった全方位的な出版支援ソリューションを提供しています。