ジャーナルはマルチメディア・アブストラクトを活用して研究のインパクトを高められるか?

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昨今、情報の共有方法はTikTok、Instagramリール、YouTubeショートのようなプラットフォームによって圧倒的に形作られており、情報提供者は情報の見せ方や共有方法の見直しを迫られています。デジタル技術の急速な進歩とメディア消費の増加により、視聴者は今や、魅力的であるだけでなく、理解しやすいコンテンツを期待するようになっています。この変化は、従来、新しい研究を紹介するためにテキストベースのアブストラクトに頼ってきた学術コミュニティにとって課題となっています。変化するコミュニケーションニーズに対応するためには、従来の形式はもはや適切ではない可能性があり、よりダイナミックで魅力的な方法で研究を紹介し、より幅広い視聴者にリーチすることができる、別のアブストラクト形式を模索する必要があります。これに対し、学術出版社は、学術論文をより魅力的で理解しやすいものにするため、ビデオアブストラクトやインタラクティブな図表、さらにはバーチャルリアリティといったマルチメディアコンテンツを採用しています。

研究アブストラクトの刷新

出版社は、革新的で魅力的な方法で学術的なコンテンツと読者を結びつけるため、さまざまな研究のマルチフォーマット・アブストラクトに対応する必要性をますます認識するようになっています。これらのフォーマットの中でも、論文の重要な発見のエッセンスを視覚的に魅力的な表現に凝縮したグラフィカルアブストラクトは特に人気があり、Lancet系列のジャーナルJournal of Cell Biologyを含む100以上のジャーナルや機関がこのアプローチを採用しています。著者へのインタビューやアニメーションによる説明を含む、研究の短いビデオアブストラクトという形のアブストラクトも、IOP PublishingSageのような著名な出版社によって検討されています。視覚的要素を取り入れてインタラクティブなアブストラクトを作成することで、読者はさらにデータと直接対話することができ、マルチメディア・アブストラクトが読者の関心を根本的に変える道を開くことができます。この記事では、マルチメディア・アブストラクトによって研究情報がよりアクセスしやすくなるだけでなく、出版社が出版物をより多くの人に注目してもらい、研究の共有方法を変革するのに役立つ方法を見ていきます。

1. 論文の発見性の向上

マルチメディア・アブストラクトは、ソーシャルメディアや学術ネットワーキングサイトなど、現代のコミュニケーション手段や視聴者のエンゲージメントにおいて重要な役割を果たしている様々なプラットフォームでの共有機能を高めるよう特別にデザインされています。これらのアブストラクトは視覚的な魅力があり、ユーザーとの交流や共有を大幅に促進し、ひいてはアブストラクトが表現する論文のリーチと発見可能性を高めます。さらに、ビジュアルアブストラクトとAltmetricスコアの高さとの関連性を示すレポートは、これらの魅力的なフォーマットが学術コミュニティ内での全体的な可視性と影響力の増加につながることを示唆しています。もう1つの重要なポイントは、学術関係者がGoogle Images(画像検索)を使用して研究成果を検索する場合、グラフィカルアブストラクトによってその発見が容易になるということです。

2. 引用率の向上

マルチメディア・アブストラクトは、複雑な研究結果を理解しやすくし、より多くの注目を集め、幅広い読者を惹きつけるための画期的なツールです。読者が論文の要点を素早く理解できるため、読まれたり引用されたりする可能性が高まります。調査によると、ビジュアルアブストラクトを掲載した論文は、ソーシャルメディア上でより頻繁にシェアされる傾向があり、見られる機会が増えることで、結果として引用の増加につながることが示されています。

3. エンゲージメントとジャーナル読者の増加

視覚的な要素を取り入れることで、これらのアブストラクトはより効果的に視聴者の注意を引き、研究への関心を高め、関連論文の読者を増やすことにつながります。さらに、患者や一般の人々にとっても、このような効果的で的を絞ったコミュニケーションは、複雑な情報に対する理解を深めるというメリットがあります。これらのフォーマットは、言語や専門知識の壁を取り除き、専門家でない人々や実務家、政策立案者にも複雑な研究を理解しやすくします。ある調査では、ビジュアルアブストラクトを含むツイートは、ツイッター上でのエンゲージメントが大幅に増加し、引用のみのツイートの5倍に、論文へのアクセス数も約3倍になったことが示されています。マルチメディア・アブストラクトは、文字だけのアブストラクトよりも素早く注目を集め、読者が論文の全文を読む可能性を高めます。さらに、あるレポートによると、ジャーナルでは出版物にグラフィカルアブストラクトを掲載すると、論文の年間平均引用率が、掲載していな論文の2倍になることが示されており、学術出版においてグラフィカルアブストラクトを取り入れることの価値がますます高まっています。

マルチメディア・アブストラクトへの移行の障害

研究者は、効果的なビジュアルアブストラクトを作成するために必要なスキルやツールを持ち合わせていないことが多く、ただでさえ過重な作業負担に拍車をかけています。高品質なビジュアルアブストラクトの作成を請け負っているジャーナルもありますが、これには熟練したデザイナーの関与や追加リソースが必要で、特に小規模な出版社にとっては経済的負担となります。さらに、出版物のアクセシビリティへの関心が高まるにつれ、出版社はマルチメディア・アブストラクトにもアクセシブルなフォーマットを提供しなければならず、新たな責任が加わることになります。ビジュアルアブストラクトは、ソーシャルメディア上での拡散には理想的ですが、現在のところ、検索性や、PubMedのような主要データベースへの正式な登録手段が不足しています。そのため、ビジュアルアブストラクトへの効果的なアクセスと共有を可能にするプラットフォームや方法は、長期的に見て価値あるものとなるでしょう。

このような課題に対処するため、出版社やジャーナルは、著者のサポートやトレーニングを提供したり、専門家や専門的なサイエンスコミュニケーションプラットフォームと連携してデザインプロセスを効率化したりすることを検討すべきです。研究機関と連携して研究者向けのトレーニングを実施することも有益な取り組みです。また、明確なガイドラインと編集者による精査を行うことで、ジャーナルに掲載されるグラフィカルアブストラクトの品質管理を徹底することができます。出版後のサポートの一環として、ジャーナルは著者にビジュアルアブストラクトをソーシャルメディアで共有するよう奨励すると同時に、自らのプラットフォームを積極的に活用してこれらのアブストラクトのリーチを拡大することもできます。さらに、ビジュアルコンテンツをシームレスに統合するためのワークフローを開発し、ジャーナルのウェブサイトや投稿システムを強化することも有益です。ビジュアルアブストラクトの影響力を評価するための指標を追跡することで、その価値をさらに実証し、学術コミュニティにおけるより広範な採用を促進することができます。


この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

2002年に設立された、カクタス・コミュニケーションズの主力ブランドであるエディテージの目指すところは、世界中の研究者が言語的・地理的な障壁を乗り越え、国際的な学術雑誌から研究成果を発信し、研究者としての目標を達成するための支援です。20年以上にわたり、190か国以上の国から寄せられる研究者の変わり続けるニーズに対応し、研究成果を最大限広く伝えられるよう、あらゆるサポートを提供してきました。
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