【徹底比較】ChatGPTのAI英文校正 vs 専門家による英文校正 | 研究論文に本当に効果的なのはどちらか?

ChatGPTに、人間の確認を一切通さずに研究論文の校正・編集を任せることはできるのでしょうか。もし「できる」と考えているなら、その判断は思わぬトラブルにつながる可能性があります。ChatGPTは、メール文面の作成やソーシャルメディア投稿の改善など、日常的な文章作成では強力な支援ツールです。一方で、学術論文の編集にそのまま適用すると、意図せず品質を損ねたり、研究内容の正確性に影響を及ぼしたりするリスクもあります。
ではなぜ、人間の校正者が、こうした先進的なAI英文校正よりも依然として重要なのでしょうか。その理由を理解するには、まずChatGPTがどのように文章を生成しているのか、つまり“生成の仕組み”を押さえる必要があります。

目次

ChatGPTの仕組みについて

公平を期して言えば、人工知能(AI)ツールは人間のように「考えている」わけではありません。少なくとも人間と同じ意味で思考しているわけではないのです。人間が何かに取り組むときには、明確な目的を設定し、その達成に向けて判断や選択を行います。一方で、ChatGPTには最終的なアウトプットの質や方向性に関する自律的な目標は存在しません。ユーザーが入力したプロンプトを出発点として、その文脈に基づき統計的に最も適切と予測される次の語を順に生成しているにすぎません。ChatGPTの仕組みを理解するうえで重要なのは、この「予測」に基づく生成モデルであるという点です。詳しくは、こちらの動画で解説されています。

ChatGPTは、ユーザーのプロンプトを「トークン」と呼ばれる単位に分解し、それぞれを内部のベクトル表現と照合しながら処理します。この機械的な特性を踏まえると、望ましい結果を得るためには制約条件や文脈を明確に示した精緻なプロンプト設計が不可欠になります。指示が曖昧であれば、生成される文章は一般的で無難な表現にとどまり、独自性や専門性に欠ける内容になってしまう可能性があります。そのため、学術的なコミュニケーションにおいてChatGPTのみに依存すると、論文として求められる独自性や精緻さが十分に担保されないリスクがあります。しかし、課題はそれだけではありません。

ChatGPT vs 人間の英文校正者

ChatGPTは、あらかじめ学習されたデータに基づいて応答を生成します。そのため、特定の分野において最新の学術研究が十分に反映されていない可能性があります。結果として、すでに重要性を失っている情報や、現在の研究動向を正確に反映していない内容が提示されることも考えられます。さらに、学習データの範囲にも留意が必要です。オープンアクセスのジャーナルに掲載された論文は比較的反映されやすい一方で、有料購読が必要なジャーナルに掲載された研究成果については、十分に取り込まれていない可能性があります。こうしたデータの偏りは、生成されるアウトプットの内容や質にも影響を及ぼします。

これに対し、人間の編集者による校閲では、なぜ修正が必要なのかについて明確な説明が得られます。専門分野の知識を持つ編集者は、単に表現を整えるだけでなく、論理の妥当性や研究の位置づけまで踏まえた上で指摘を行います。そのため、著者自身がどのように原稿が改善されたのかを理解しやすくなります。

さらに、人間の編集者は、文章構成そのものに踏み込んだ建設的な提案を行うことができます。たとえば、英文校正サービス「エディテージ」の編集者は、ある原稿に対して「アブストラクトの冒頭に背景説明を置くことで、研究の動機をより明確に提示できます」と助言しました。そして単なる指摘にとどまらず、研究目的をより明確にする一文を実際に追加することで、全体の構成を改善しました。このように、論理展開や段落構成を俯瞰した上での具体的な改善提案は、人間の編集者ならではの強みといえます。

加えて、ChatGPTには実在しない引用文献を生成してしまう、いわゆる“ハルシネーション”のリスクがあることも知られています。学術論文においてこの種の誤りは致命的です。一方、人間の編集者は科学的誠実性の重要性を理解し、定められた基準やプロセスに従って業務を行います。そのため、情報の正確性や整合性が損なわれるリスクは大幅に低く抑えられます。

学術論文の校閲

以上の点を踏まえると、学術編集において研究者が本当に求めている要件が見えてきます。ではなぜ、利便性の高いChatGPTが、学術編集の現場では十分とはいえないのでしょうか。その根本的な理由を、具体例を通して考察します。

具体例 1:用語のニュアンスと倫理的配慮

以下の文章をご参照ください。
Since most Japanese patients with hip osteoarthritis have dysplastic hips, the outcomes of this procedure in Japanese patients might differ from those in Caucasian patients.

当社エディテージの校正者は、この文章に対し次のようなフィードバックを行いました。

In scientific writing, the term “Caucasian” should preferably be restricted to people from the Caucasus region. Please check if you simply meant “White.” You would not really expect this kind of input from ChatGPT, would you?」。

ここで注目すべきは、単なる文法や語彙の修正ではなく、学術界における用語の適切性や倫理的背景に踏み込んだ指摘である点です。このようなニュアンスへの配慮や分野特有の言語感覚は、統計的予測に基づくAIからは必ずしも期待できるものではありません。

具体例 2:著者の文体を尊重する編集

著者が校閲を依頼する際に望んでいるのは、文章の書き換えではなく、質の向上です。熟練した校正者は、著者の独自の文体や意図を尊重し、不必要な改変を避けながら改善を行います。

次のテキストをご覧ください。

The proposed algorithm was experimentally evaluated, in which the leakage point was represented as a coordinate. The results confirmed that the proposed method accurately detects the leakage point during operation. The error between the estimated and actual leakage locations was less than 5%.

ChatGPTによる校正例:

Experimental validation demonstrated that the algorithm reliably localized leakage points, with an estimation error of less than 5% compared to the actual coordinates.

エディテージ校正者による校正例:

Experimental evaluations showed that the proposed algorithm accurately detected leakage locations, represented as coordinate points. The deviation between the estimated and actual leakage locations was less than 5%.

両者を比較すると、ChatGPTは文章を大幅に再構成し、より簡潔な表現に置き換えています。一方、人間の校正者は、使用用語の一貫性を保ちながら、著者の語調や構造を尊重しつつ自然な形へと整えています。この違いは重要です。学術論文では、内容だけでなく、研究者自身の声や論理展開の流れもまた尊重されるべき要素だからです。

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ChatGPTによる校正のメリットとデメリット

ChatGPTとプロの英文校正者のどちらが適しているかを判断するために、まずはそれぞれの特徴を整理してみましょう。ここでは、ChatGPTによる校正のメリットとデメリットを見ていきます。

ChatGPTによる校正のメリット

  1. 即時に結果が得られる
    ChatGPTの最大の強みは処理速度です。校閲を依頼すれば、人間の校正者よりもはるかに短時間で結果が返ってきます。特に、250〜300語程度のアブストラクトであれば、迅速に修正案を提示してくれます。ただし、論文全文や学位論文の長い章のような大規模テキストを一括処理するのは容易ではありません。長文になるほど、分割処理や追加指示が必要になります。
  1. 文法ミスの修正
    ChatGPTは文法やスペルの誤りを高い精度で検出・修正できます。英語を母語としない研究者が、基本的な言語エラーを修正する目的で利用する場合、有効な補助ツールとなります。 
  1. 低コストで利用可能
    無料または低コストで利用できる点も大きな魅力です。適切なプロンプトを作成できれば、誰でも手軽に活用できます。しかし、入力しているのは自身の研究データであり、それらは機密性の高い情報である可能性があることを忘れてはいけません。無料のプラットフォームでは、データの利用方針やユーザー設定によっては、入力された情報が大規模言語モデル(LLM)の学習に使用される場合もあります。

ChatGPTによる校正のデメリット

  • 情報の鮮度が古い可能性
    すべての大規模言語モデル(LLM)が常に最新のデータで学習されているわけではなく、その分野における直近の発見や技術革新に関する情報が十分に反映されていない場合があります。また、ChatGPTにウェブ上の情報へのアクセスを指示したとしても、参照できる情報の範囲はツールの設定によって異なり、一般に公開されている研究論文に限られることもあります。
  • 科学的正確性の担保が難しい
    次に、研究出版の根格をなす「科学的正確性」の評価について見ていきましょう。ChatGPTは特定の分野に精通した専門家ではなく、個別の研究背景(文脈)を十分に把握しているわけではありません。そのため、最新の手法や理論、研究トレンドに照らして、研究の誠実性や妥当性を検証することはできません。こうした専門知識の欠如は、あなたの研究内容に対して不正確なフィードバックを与えるリスクも孕んでいます。
  • 引用文献の捏造リスクL
    LM(大規模言語モデル)において「AIハルシネーション」は極めて一般的な現象です。ChatGPTでは、この問題はGPT-5において一定の改善が図られているとされていますが、依然として解消されていません。そのため、文章の修正根拠として引用や参考文献をChatGPTに求めた場合、AIが自らの編集を正当化する上で、虚偽の情報を提供する可能性もあります。
  • 変更箇所の追跡が困難
    3,000語に及ぶ学位論文の1章を校閲する場合を想像してみてください。ChatGPTは一度にすべてを処理できず、部分的な校正に留まる可能性が高いため、頻繁に「続き」を生成させる手間が生じます。一枚のWordドキュメント上で「変更履歴」を用いて一元管理する人間の校正者とは異なり、ChatGPTの出力結果を追いかけながら、その都度プロンプトを再入力して管理し続けるのは非常に骨の折れる作業です。
  • 明確な説明の欠如C
    hatGPTは文章に修正を加えますが、こちらから指示をしない限り、なぜそのように修正したのかという「根拠」を自ら説明することはありません。仮に説明を求めたとしても、その内容は文法エラーの訂正、スペルミスの修正、あるいは構文の改善といった表面的なものに留まります。肝心の科学的な文脈(コンテキスト)については無視されがちです。
  • プロンプトの完璧さが求められる
    ここまでの説明で、ChatGPTとの「対話」がいかに大きな挑戦であるかはお分かりいただけたはずです。特に、専門知識やドメイン特有の知見が不足している点を考えれば、なおさらです。したがって、ChatGPTから最大限の成果を引き出すためには、正確なプロンプトを作成するスキルを自ら習得しなければなりません。

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プロの英文分校正者による校正のメリット・デメリット

人間の英文校正者による校正のメリット

  • 専門領域における卓越した知見
    人間の校正者に依頼する最大の安心材料は、科学的内容が損なわれる心配がないことです。一流の校正・校閲サービスでは、対象分野を熟知し、高度なドメイン知識を備えた経験豊富なエキスパートが原稿を担当します。校正者は単に英語表現を整えるだけではありません。科学的正確性を検証しながら、研究の背景や文脈を深く理解したうえで、論文の価値を正しく汲み取った評価を行います。そのため、表面的な言い換えではなく、研究の本質を踏まえた緻密な改善が可能になります。
  • 最新かつ信頼できる研究動向への精通
    人間の校正者は、当該分野の最新の研究トレンドや最先端の手法に精通しています。そのため、あなたの研究成果に対して、より高度な検証方法や分析の視点を提案し、研究の「重み」や説得力を高めるための具体的な助言を行うことができます。さらに重要なのは、オープンアクセス論文に限定されない知見を持っている点です。有料購読誌に掲載された最新研究を含め、幅広い情報に基づいた洞察を提供できるため、論文をより洗練された形へと導くことが可能になります。
  • 個別対応による校正
    ChatGPTの大きな弱点の一つは、著者の語り口やスタイルを変えてしまう傾向があることです。対照的に、人間の校正者はこの点に非常に敏感です。たとえ文構造を調整する場合でも、著者の本来の意図や論理展開が損なわれないよう細心の注意を払います。また、著者が一貫して使用している専門用語や独自の言い回しがあれば、それを尊重して維持するか、文脈に適さない場合のみ理由を明示したうえで代替案を提案します。最終的な判断は常に著者に委ねられます。校正者は決して一方的に文章を書き換えるのではなく、著者と協働する立場にあるのです。
  • 変更箇所の追跡が容易
    人間の校正者は、Wordファイルの「変更履歴」機能を用いて一貫して校閲を行います。これにより、どの語句が修正されたのか、どの文が再構築されたのか、段落構成がなぜ変更されたのか、さらには引用や参考文献が追加・削除されたのかまで、すべての変更点を明確に確認できます。修正の透明性が確保されている点は、学術論文において非常に重要です。
  • 解説コメントと洞察に満ちた推奨事項
    変更履歴に加え、校正者は修正理由を丁寧に説明したコメントを添えます。なぜその修正が必要だったのか、どのような観点から改善が行われたのかが明示されるため、著者は単に「直された原稿」を受け取るのではなく、「改善のプロセス」を理解することができます。これらのフィードバックは、将来の論文執筆にも役立つ貴重な学習機会となります。
  • 指示は一度だけで十分
    ChatGPTでは精密なプロンプト設計が求められ、条件を都度入力し直す必要があります。一方、人間の校正者に対しては、最初に要望を共有するだけで十分です。採用すべきスタイルガイドは何か? 投稿予定のジャーナルはどこか? フォーマットはどう整えるべきか? これらを最初に伝えれば、科学的正確性が担保され、フォーマットも整えられた原稿が納品されます。さらに、納品された原稿にさらに修正を加えた後、改めて確認が必要になった場合でも、プロの英文校正サービスが提供する「再校閲」をいつでも利用できるので安心です。
  • 引用文献の捏造リスクなし
    人間の校正者が実在しない引用文献を加えることは決してありません。校正者が行うのは、論文内で引用されている文献が正確であるかを確認し、参考文献リストが投稿先ジャーナルの規定に沿って整えられているかを検証することです。科学的誠実性が損なわれるリスクを回避できる点は、極めて重要な利点です。

プロの英文校正者による校正のデメリット

  • 納期に時間を要する
    ChatGPTのような即時対応は期待できません。原稿提出後、校正サービス側では、あなたの論文を担当するのに最適な専門家を選定するための時間が必要です。そのため、完全に校正された原稿を受け取るまでには、通常最大で7日程度を要します。ただし、校正者の空き状況やサービス内容によっては、1〜2日といった短納期での対応が可能な場合もあります。
  • 無料サービスではない
    ChatGPTは無料で利用できますが、人間の校正・校閲サービスには費用が発生します。フリーランスの校正者に依頼する場合でも、双方が納得できる料金を設定する必要があります。多くの校正会社では、予算や修正の深度に応じて選択できる複数の「出版サポートパッケージ」を用意しています。学生にとっては費用面での負担が課題となる場合もありますが、キャンペーンや割引制度を活用したり、大学が校閲会社と提携していないかを確認したりすることで、利用のハードルを下げることができる場合もあります。

まとめ

ChatGPTはすでに私たちの研究生活に深く根付いており、その有用性や効率性を否定する人はほとんどいないでしょう。アイデアの整理やブレインストーミング、リサーチクエスチョンの洗練など、研究活動の初期段階においては、極めて有力な支援ツールです。しかし、学術界、とりわけ論文の校正や編集という重要な局面においては、AIツールの利用には慎重さが求められます。科学的正確性、用語の適切性、倫理的配慮、そして著者本来の意図や文体の尊重といった要素は、単なる言語処理だけでは十分に担保できないからです。
ChatGPTを研究の補助ツールとして賢く活用することは大いに推奨されます。ただし、出版に向けた最終原稿を提出する前には、人間の専門家による確認を経ることが、研究の質と信頼性を守るうえで不可欠であることを忘れてはなりません。

参照

  1. Fabrication and errors in the bibliographic citations generated by ChatGPT https://www.nature.com/articles/s41598-023-41032-5
  2. Artificial hallucinations in ChatGPT https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9939079/
  3. 3. Marked reductions in hallucination rates with GPT-5 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12701941/

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この記事を書いた人

2002年に設立された、カクタス・コミュニケーションズの主力ブランドであるエディテージの目指すところは、世界中の研究者が言語的・地理的な障壁を乗り越え、国際的な学術雑誌から研究成果を発信し、研究者としての目標を達成するための支援です。20年以上にわたり、190か国以上の国から寄せられる研究者の変わり続けるニーズに対応し、研究成果を最大限広く伝えられるよう、あらゆるサポートを提供してきました。
今日、エディテージは専門家によるサービスとAIツールの両方を用いて、研究のあらゆる段階で便利に、安心して使っていただける包括的なソリューションを提供しています。

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