プレプリントにグラフィカルアブストラクトは必要か? 研究者向けガイド

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学術コミュニティでは、サイエンスコミュニケーションの一環としてグラフィカルアブストラクトを採用する動きが徐々に受け入れられつつあります。しかし、プレプリント※におけるその役割については依然として疑問が残っています。「プレプリントにグラフィカルアブストラクトを含めるべきか?」-もしこのような疑問を持ち、プレプリント用のグラフィカルアブストラクト作成に迷っている方は、ぜひ今回の記事をご覧ください。

※プレプリント:インターネット上で公開される、査読される前の科学論文の暫定版(参考記事

グラフィカルアブストラクトはプレプリントのリーチを拡大するのか?

視覚的なコミュニケーションは確かに効果的ですが、実際にグラフィカルアブストラクトがプレプリントに効果的であるという実証事例はあるのでしょうか? 以下の3つの研究事例からご紹介します。

1) 2017年の症例対照クロスオーバー研究では、X(旧Twitter)でシェアされた投稿にグラフィカルアブストラクトが添付されていた場合、タイトルのみの投稿と比較して、インプレッション数が7.7倍リツイート数が8.4倍論文アクセス数が2.7倍増加したことが報告されています。これはまさに、プレプリントのプロモーションにグラフィカルアブストラクトが役立ったと言える成果です。

2) 2022年の別の研究では、グラフィカルアブストラクトは医学ジャーナルの「インパクトファクター」(ジャーナル影響度指標)を効果的に高めるのと同時に、ソーシャルメディアでの露出度も向上させる可能性があると報告されています。被引用数への影響は決定的ではないものの、一部の分野ではグラフィカルアブストラクトが良い傾向を示しています。

3) 2023年の研究では、スポーツ科学分野においてグラフィカルアブストラクトが「Altmetric」(論文影響度指標)の注目度スコアを向上させる可能性があることが示されました。ただし、この研究では、論文の被引用数への影響は認められませんでした。

これらの結果を踏まえると、グラフィカルアブストラクトは研究の普及、特にSNSにおいて良い影響をもたらすことが示されています。プレプリントは正式な査読を経て出版される前に論文を宣伝することを目的としているため、SNSで露出を高められることは非常に有益です。

プレプリントにグラフィカルアブストラクトは表示されるのか?

論文がジャーナル掲載のための正式な査読を受ける前に、オープンプレプリントサーバーのいずれかを利用して研究成果を発表することができます。実は、arXiv、medRxiv、bioRxiv、Preprint.org、Research Square、Figshareなどのプレプリントサーバーでは、「グラフィカルアブストラクト」の使用が推奨されています。 

arXiv、medRxiv、bioRxivにはグラフィカルアブストラクトを個別にアップロードする機能はありませんが、論文に添付されている図やファイルの一部としてアップロードすることができます。また、グラフィカルアブストラクトを補足ファイルとして提供することも可能です。

一方、Research squareでは、プレプリントページ上でグラフィカルアブストラクトを明示的に公開するオプションが用意されています。また、「閲覧数」「ダウンロード数」「Xでの言及数」「いいね数」「Altmetrics」などのデータを追跡し、プレプリントのリーチを分析する機能も提供しています。これにより、グラフィカルアブストラクトを活用して研究内容を直感的に伝えるだけでなく、その影響力を定量的に把握することが可能となります。

プレプリント用のグラフィカルアブストラクトのデザインに関する3つの実践的な推奨事項

1. 素早く目を通せるデザインを心がける

グラフィカルアブストラクトは簡潔にまとめ、構造化されたデザインテンプレートに沿って、素早く目を通せる内容で構成しましょう。例えば、研究課題に関する一文、主要な方法論を1つ、重要な結論を1つ、主要な示唆を1つずつ記載し、残りは画像やアイコンで説明することが効果的です。

2. グラフィカルアブストラクトは別途アップロードする

Research Squareに投稿する際は、プレプリントページと密接に関連するグラフィカルアブストラクトを別途アップロードしてください。bioRxivやmedRxivに投稿する場合は、グラフィカルアブストラクトとして独立したページを提供するか、最初の図やファイルをグラフィカルアブストラクトとしてアップロードしてください。

3. ソーシャルプラットフォームで積極的にプロモーションする

エンゲージメント獲得のため、プレプリントは常にグラフィカルアブストラクトと共にソーシャルプラットフォームで共有しましょう。ただし、被引用数の増加は分野によって異なるため、過度な期待は控えましょう。

最後に

プレプリントにグラフィカルアブストラクトを添付することで、様々なソーシャルプラットフォームにおいて、可視性とオンラインエンゲージメントを確実に高めることができます。グラフィカルアブストラクトが引用数の増加に直結するかは分野によって異なりますが、シェア数・インプレッション数・クリック数の向上については確かな証拠があり、プレプリント段階での可視性向上に大きく寄与します。


この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

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