科学研究におけるグラフィカルアブストラクトは、世界中のジャーナル、出版社、著者の注目を集めています。こうしたビジュアルアブストラクトは2011年にジャーナルに導入されましたが、科学界では複雑な概念をわかりやすくするために、常に図解による表現が奨励されてきました。
教育分野おけるビジュアルサマリー
筆者がかつて作成したもので真っ先に思い出すイメージのひとつは、水循環の図です! この図をひと目見るだけで主要な用語を理解させ、概念をスムーズに説明できたことを覚えています。

人間の脳は文字よりも視覚的な情報を速く処理するため、グラフィカルアブストラクトは研究の普及、認知度向上、複雑なデータの簡素化に効果的とされてきました。しかし、科学論文全体を一枚の画像にまとめるのは難しいこともあります。では、どうすればよいのでしょうか?
複雑な概念を簡素化して効果的なグラフィカルアブストラクトを作成するためのヒント
1. 含めるべき主要な情報を特定する
グラフィカルアブストラクトは研究論文全体の代わりとなるものではありません。研究の詳細を全て含める必要はなく、読者が研究の核心を理解するために十分な情報があれば良いのです。これには画像のタイトル、関連するアイコンや用語を用いた研究方法論、主要な研究結果、結論が含まれます。
プロからのヒント:「簡潔であればあるほど良い」ということを意識しましょう。読者が研究内容を理解するために不可欠な情報が何かを判断してください。
2. 適切なテンプレートに従う
主要な構成要素(タイトル、方法論、結果、結論)を特定したら、グラフィカルアブストラクトに適したレイアウトを選択します。研究内容に応じて、グラフィカルアブストラクトは単一パネル、複数パネル、または円形フォーマットで提示できます。
複数の出版社では、ジャーナル指定のグラフィカルアブストラクト用テンプレートを提供しています。さらに、Mind the GraphやCanvaなどのツールでは、様々なテンプレートから選択することができます。
3. 適切なアイコンとカラーパレットを使用する
科学的なグラフィックは非科学的なグラフィックとは大きく異なります。そのため、研究内容を視覚的に表現するには適切なアイコンや記号を使用することが極めて重要です。Mind the Graphは、細胞生物学、遺伝学、動物学、栄養学、ナノテクノロジーなど、様々な分野に適したグラフィックを豊富に取り揃えています。
明瞭でインパクトのあるグラフィカルアブストラクトは、限られたカラーパレットで作成されます。注意しなければならないのは、色を使い過ぎないことです。明るい色、中間色、暗い色を組み合わせた3~5色程度を使用することが推奨されます。
4. 必要に応じてテキスト情報を記載する
テキスト中心のグラフィカルアブストラクトは推奨されません。とはいえ、テキスト情報を一切提供しないと、読者を誤解させる恐れがあります。グラフィカルアブストラクトには、読者が視覚的な表現を理解するために必要と思われる主要な用語、定義、統計データ、その他の詳細を含めるべきです。
プロからのヒント:メッセージを効果的に伝えるため、ビジュアルとテキストのバランスを意識しましょう。テキストは最小限に抑えるべきですが、完全に排除してはいけません。
最後に
グラフィカルアブストラクトの目的は、テキストによるアブストラクトや研究論文そのものに取って代わることではありません。しかし、適切にデザインされた一枚のビジュアルは、研究の核心を一瞬で伝え、より多くの人々の目に届くための強力な補助線となります。研究者自身にとっても、研究内容を整理し、次の研究や発表に活かすうえで大きな助けとなるでしょう。
この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。
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