ChatGPTは学術コミュニケーションにどう貢献できるのか? カクタスのクリストファー・レオナルド氏にインタビュー

Can ChatGPT support scholarly communications

2022年11月にChatGPTがリリースされて以降、世界中のユーザーがその機能と限界をあらゆる方法で試し、前例のないほど活発な動きが生まれました。こうした反応は、単なる一時的なAIツールの流行とは言い切れないものです。ChatGPTの潜在的な用途は非常に幅広く、日常的な作業から高度に複雑なタスクまで、また誠実な目的にも、場合によっては欺瞞的な目的にも活用され得ます。

このツールは、複雑な要求に対しても、人間が書いたかのような自然な文章を生成することが可能です。これは、知識を「文章」を通じて共有することで発展してきた学術コミュニケーションのあり方に、大きな影響を及ぼす可能性を示しています。

本インタビューでは、カクタス・コミュニケーションズで戦略・イノベーションを統括するクリストファー・レオナルド氏に、ChatGPTが研究活動や学術出版の現場でどのように活用され得るのか、そしてその利用がもたらす広範な影響について、お話を伺いました。

――クリスさん、まずは自己紹介をしていただけますか?

はい。私はこれまで約25年にわたり、出版、テクノロジー、プロダクト開発の分野でさまざまな役割を担ってきました。自然言語処理(NLP)やAI、機械学習、量子コンピューティング、ブロックチェーンといった技術は、次世代の産業や社会を牽引する重要な原動力になると考えています。
一方で、こうした技術が不適切に利用される可能性については、常に懸念を抱いています。そのため私は、技術の進化そのものだけでなく、導入や活用における倫理性、そして環境コストにも強い関心を持ち続けてきました。

――AIツールやアプリケーションは以前から存在し、学術コミュニケーションの分野でも大きな注目を集めてきました。しかし、ChatGPTほど多くの興奮や懸念、議論を巻き起こしたものはありません。その違いについて簡潔にご説明いただけますか?

ChatGPTの最大の特徴は、圧倒的な使いやすさと、初めて使った瞬間から意味のある、驚くほど自然な出力を得られる点にあります。特別な知識や準備がなくても、すぐに「使える」体験が得られることは、これまでのAIツールにはなかった要素でしょう。さらに、プロンプトの工夫や質問の仕方を学んでいくうちに、この技術が教育や研究支援、さらにはコピーライティングなど、幅広い分野を変革し得る可能性を持っていることに気づかされます。そして重要なのは、それが遠い未来の話ではなく、すでに現実として起きているという点です。こうした「未来が突然、目の前に現れた」という感覚こそが、ChatGPTがこれほどまでに話題となり、多くの議論を呼んでいる理由なのではないでしょうか。

――ChatGPTは研究を促進するうえでプラスの役割を果たすと思いますか? 例えば、知識の収集・創造・統合といった研究者のタスクを支援できるのでしょうか? 実際にこのツールを利用する際に研究者はどのような点に留意すべきでしょうか?

ChatGPTは、新しい研究プロジェクトのアイデアを提示してくれます。特に、研究の方向性を探る際に、行き詰まっている状況で非常に有用です。ただし、そこで得られる提案は、実行に移す前に必ず妥当性の検証と、人間の判断によるフィルタリングを経る必要があります。私自身、学術テキストに基づく大規模言語モデル「Galactica」に短期間アクセスした経験から、生成AIはしばしば権威的な口調で語る一方で、内容が伴わない傾向があることを実感しました。生成される内容は、あくまで確率的に並べられた単語の集合にすぎず、引用文献が完全に捏造されている可能性すらあります。大量の学術文献データを用いて学習された言語モデルには、依然として多くの課題が残されています。とりわけ深刻なのは、過去の学術成果の中には、後に誤りと証明されたものが少なくないという点です。こうした問題を踏まえると、私は生成テキストそのものよりも、情報の関係性を明示した知識データベースに、より大きな可能性を感じています。

――ChatGPTは学術出版社にとってどのように役立つのでしょうか? 例えば、著者とのコミュニケーションを円滑にしたり、特定の研究分野に関する洞察を得たりすることは可能でしょうか?

ChatGPTの特に優れた点のひとつは、「8歳の子どもに説明するように教えて」といった指示ができることです。より幅広い層に研究への関心を持ってもらうためには、理解度に応じた複数レベルの要約を用意することが有効です。こうしたアプローチによって、専門家以外の読者も学術研究の世界に触れやすくなります。これは出版社や著者にとって新たなサービスの可能性を開くものです。著者側には、生成された要約を再確認し、必要に応じて調整したうえで、ソーシャルメディアなどで活用できるという利点もあります。出版社にとって特に実用的なのは、論文タイトルの簡潔化や、著者が提出した要旨の推敲(多くの場合は短縮)を支援できる点でしょう。さらに、「キーワードを重視しつつ、読みやすい要旨に書き換える」といった条件でChatGPTを活用すれば、A&Iデータベースにおける論文の発見性向上にも寄与する可能性があります。
また、シンプルでありながら大きな効果が期待できるユースケースとして、査読者向けのパーソナライズされた招待メールの作成があります。ChatGPTを活用することで、査読候補者にとって魅力的で、かつ「なぜ自分がこの論文の査読に適しているのか」を具体的に伝えるメッセージを作成でき、査読依頼の受諾率向上が期待されます。

――学術コミュニケーションの分野では、高度なAIツールが偽画像の生成などに悪用される事例が、すでに問題視されています。ChatGPTについても、剽窃や偽論文の作成を容易にしてしまうのではないかという懸念がありますが、この点をどのように捉えていますか。また、悪用を防止・検知する方法はあるのでしょうか。

ChatGPTは、ペーパーミルによる意味不明な論文の量産や、偽画像の生成といった、私たちがすでに直面している現実の問題を、さらに悪化させる可能性があります。加えて、単純な剽窃検出を回避するための文章の言い換えが容易になれば、問題が深刻化する前に有効な対策を見いだすことはより困難になるでしょう。
こうした課題に対する私の答えは、オープンサイエンスのベストプラクティスに立ち返ることです。まず必要なのは、「オープンな査読」です。誰がその論文を査読し、どのような意見を述べたのかを可視化すべきです。論文本文とともに査読コメントを公開すれば、内容の伴わない論文が掲載される可能性は大きく下がります。
次に、論文と同時に研究データを公開し、誰でもダウンロード可能にすることが重要です。実験論文であるにもかかわらずデータが付随していない場合は、注意が必要です。仮にデータが存在していても、不自然に「編集」されていれば、再現実験が行われた時点で問題は明らかになるでしょう。AIによる不正利用そのものを完全に防ぐことは難しいかもしれません。しかし、透明性と検証可能性を高める仕組みを整えることで、悪用の余地を大幅に狭めることは可能だと考えています。

――これまでに共有いただいた見解以外に、ChatGPTのようなツールが学術コミュニケーションに長期的に及ぼす影響について、どのようにお考えですか。

利点の一部についてはすでに触れてきましたが、生成テキストをめぐる倫理的な問題については、今後も試行錯誤を重ねながら向き合っていく必要があると考えています。生成されるテキストの多くは、既存の公開資料をもとに作られる、あるいは少なくともそれを模倣したものです。
その中のどこまでが著作権の対象となるのか、また多数の特定不可能な入力を含む生成テキストの著作権は誰に帰属するのかといった問題は、依然として明確な答えが出ていません。剽窃の問題も同様です。既存の著作物を容易に言い換えられる時代において、それを誰が、どのように見抜けるのでしょうか。

将来的には、学術コミュニケーションの単位が、論文そのものではなくなる可能性もあります。私たちは、物語性を持たないデータセットに、より強く依存し、それを信頼するようになるかもしれません。テキストや画像が容易に生成できる時代において、真の価値は研究者の「表現」ではなく、研究によって得られたデータそのものに移っていく可能性があります。

さらに広い視点で見れば、教育の現場にも変化が求められるでしょう。学生の評価方法を見直し、筆記課題への過度な依存を減らす必要が出てくるかもしれません。教育への脅威と捉えられがちな新しい技術の登場は、同時に教育や評価のあり方を再設計する機会でもあるのです。


この記事はエディテージ・インサイト(英語版)に掲載されていた記事の翻訳です。エディテージ・インサイト ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

2002年に設立された、カクタス・コミュニケーションズの主力ブランドであるエディテージの目指すところは、世界中の研究者が言語的・地理的な障壁を乗り越え、国際的な学術雑誌から研究成果を発信し、研究者としての目標を達成するための支援です。20年以上にわたり、190か国以上の国から寄せられる研究者の変わり続けるニーズに対応し、研究成果を最大限広く伝えられるよう、あらゆるサポートを提供してきました。
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