論文のフォーマットは面倒な作業に思えるかもしれませんが、研究出版の成否を左右するほど重要なものです。ジャーナルは論文のフォーマットをきちんと整えることを求めているため、多くの著者はこの作業を専門家に委託するか、自動フォーマットツールを利用する傾向にあります。
この記事では、論文フォーマットに役立つAIツールとそのメリット、そしてその限界やリスクを管理する方法について解説します。
フォーマットに役立つAIツール
論文全体のフォーマットに役立つ単一ツールを探しても、おそらく見つからないでしょう。ただし、論文の各部分に対応したフォーマットツールであれば、様々なツールが存在します。
Zotero、EndNote、Mendeleyなどのツールは、引用文献の整理や参考文献リストの作成に役立つ便利な文献管理ツールです。これらのツールは、好みのスタイルガイド(APA、MLA、シカゴスタイルなど)やジャーナル固有のフォーマットに従って参考文献リストをフォーマットできます。
しかし、実際に研究論文を執筆する際には、執筆作業を代行するのではなく、執筆プロセスを容易にするツールが必要になります。PaperpalやGrammarlyのようなツールは、執筆作業を支援するために有用です。特にPaperpal1は、アイデア生成からドラフト作成、推敲、各セクションのレビューまで、一貫したガイド付きフローを提供します。
その他のツールとしては、図表やグラフィカルアブストラクトの作成に優れたMind the Graph2、BioRender、Adobe Illustratorなどがあります。これらのツールに共通するのは、必要な形式で論文を作成する支援はするものの、論文のフォーマットを自動で行なってはくれないということです。そのため、AIによるフォーマットツールを使用する際は、正確性を確保するために人間のチェックが不可欠であることを忘れないでください。
AIフォーマットツールを利用するメリット
AIツールは論文のフォーマットを完全かつ正確に行なうことはできませんが、研究論文の完成度を高める上で優れたアシスタントとなります。以下に考慮すべきメリットをいくつかご紹介します。
- 一貫性チェック
AIツールは、人間が見落としがちな論文内の不一致を特定するのに役立ちます。例えばPaperpalは、プレゼンテーション・開示情報・図表・参考文献の一貫性を含む包括的な投稿前チェックをサポートします。主なメリットは、論文のデスクリジェクト(査読前の却下)を回避できることです。
- 引用と参考文献のフォーマット
参考文献リストを作成し、それらすべてが一貫したフォーマットで記述されていることを確認する作業は、簡単に自動化できます。同時に、ツールが誤った情報を生成するリスクもあります。その注意点については次のセクションでご説明します。
- コンプライアンスチェック
ツールが役立つもうひとつの場面は、論文がジャーナルの規定に準拠しているかどうか確認したい場合です。ほとんどのジャーナルは投稿時に遵守すべきガイドラインやテンプレートを提供しています。AIツールは、対象ジャーナルの詳細情報を提供すれば、そのジャーナル固有の指示に準拠しているかどうかをチェックします。
- 効率化されたワークフロー
全体として、AIツールを研究ワークフローに統合することでタスクを効率化し、大幅な時間短縮が可能です。例えばPaperpalによるリアルタイム論文チェックでは、ジャーナルの文字数制限に合わせて段落を短縮したり、文章を言い換えてバリエーションと流暢さを確保したり、論文全体を通して学術的なトーンを維持したりすることができます。
AIフォーマットツールの限界とリスク
AIツールを用いたフォーマットにはメリットがある一方で、限界とリスクも存在します。
例えばChatGPTは、不正確またはが誤った情報を生成することが知られています。さらに深刻なのは、ChatGPTは必ず回答を返すようトレーニングされているため、妥当性に基づいて虚偽の情報を作り出す傾向がある点です。これは「ハルシネーション」と呼ばれ、この挙動を示すツールが増えています。
最近、Claudeが存在しない論文への参照を含む引用を生成した事例³がありました。研究論文のタイトルを変更し、誤った著者名を生成することで、存在しない引用を作成したのです。こうした事例は、科学論文の出版において人間の専門知識を維持することの重要性を浮き彫りにしています。
そこで、AIフォーマットツールを使用する際に留意すべきポイントを3つご紹介します。
- AIは間違いを犯す可能性があるため、研究論文で提示する情報の正確性と信頼性を確認するのはあなたの責任です。
- 論文のフォーマットは、人間とAIの共同作業であるべきです。作業が面倒だと感じたり、時間がなかったりした場合は、専門サービスや外部リソースを利用して論文のフォーマットを代行してもらいましょう。決してAIツールだけに頼ってはいけません。
- 最後に、AIツールの限界を心配して、一切使わないようにするのは避けましょう。十分な人間の監督のもと、慎重に使用すればAIツールのメリットはリスクを上回ります。
まとめ
ジャーナルは多くの場合、投稿時にフォーマットのテンプレートを提供したり、標準フォーマットを推奨したりしますが、アクセプト後は自誌の好むフォーマットで論文を出版します。 したがって、AIツールは「作業の代行者」ではなく、「精度と効率を高めるパートナー」として活用するのが理想的です。
また、投稿先ごとに異なるフォーマット調整に不安がある場合は、エディテージの「論文フォーマット調整サービス」を活用することで、投稿規定に沿った正確な体裁に整えることができます。
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参考
1. Paperpal
https://www.editage.com/paperpal
2. Mind the Graph
https://www.editage.com/mind-the-graph
3. Formatting with AI may be riskier than you realize
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この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。
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