論文アブストラクト(抄録・要旨)翻訳とは? 翻訳サービスに依頼するメリットを紹介

Advantages of requesting a translation service

学術論文におけるアブストラクト(抄録・要旨)とは、研究の目的や重要なポイント、主な発見を簡潔にまとめたものです。優れたアブストラクトは、ジャーナル編集者や査読者、また読者の関心を引き、論文全体を読むように促すことができるため、学術論文の重要な構成要素となっています。

一方で、アブストラクトは査読者が論文に対して抱く第一印象となるため、アブストラクトに英語の誤りや不正確さがあれば、論文や研究全体の質にも疑問を与えてしまう可能性があります。そのため、英語を母国語としない研究者が著者の場合は、研究の要点を正確に伝えるために分野に精通したプロフェッショナルな翻訳者による専門の翻訳サービスを活用することが効果的です。

目次

論文アブストラクト(抄録・要旨)翻訳とは?

論文のアブストラクト(抄録・要旨)は通常、論文の冒頭、本文の前に表示され、文書全体を読まずに、もしくは読む前に研究内容を把握したい読者のためのクイックリファレンスとして機能します。

アブストラクトは論文の有益な情報を明瞭かつ簡潔にまとめる必要があります。また、研究の課題や疑問、それを調査するために使用した方法、主な発見や結果、そしてそれらの発見が持つ意味や意義について、概要を説明する必要があります。分野によっては、研究の理論的枠組みや背景、研究の限界や将来の方向性についてのディスカッションが含まれることもあります。完成度が高い、優れたアブストラクトを作成することで、査読者や読者は研究の要点をすぐに理解することができます。

特に科学や医学の分野では、常に膨大な量の研究論文が出版されており、かつ論文の内容に複雑で専門的な概念が含まれているため、読者がアブストラクトを読むことで研究内容をすばやく理解できることが重要です。また科学や医学の分野においては、研究成果が公衆衛生や医学会に大きな影響を与える可能性があるため、研究成果に誤解や解釈の齟齬がないように、情報を簡潔に、正確に伝えることが必要です。

論文アブストラクト(抄録・要旨)の書き方

アブストラクトの構造は、一般的に非構造化アブストラクト、構造化アブストラクト、グラフィカル・アブストラクトの3つに分類されます。

  1. 構造化アブストラクト:特定のセクションに分割されたアブストラクトで、研究の目的、方法、結果、および結論がそれぞれのセクションに分かれて記載されます。論文のIMRAD形式と一致することが多いです。
  2. 非構造化アブストラクト:単一の段落で構成される文章で、研究の目的、方法、結果、および結論を含む総合的な要約です。アブストラクト内に明確なセクションがなく、一連の文章にまとめられています。
  3. グラフィカル・アブストラクト:研究の主な結果をグラフや図などの視覚的な手段で示すアブストラクトです。研究の要約を視覚的に情報を伝えたい場合に効果的です。

またアブストラクトは内容により、記述型(descriptive)か情報提供型(informative)に分類されます。記述型アブストラクトは論文の内容を簡単に説明するだけでなく、読者に論文の興味深い点や重要性について提示することを目的としています。 情報提供型アブストラクトは論文の主要な目的、方法、結果、および結論を簡潔に要約し、読者に論文の重要な情報を提供することを目的としています。科学や医学分野においては、情報提供型の形式をとることが一般的です。また、一部のジャーナルでは、アブストラクト内の各セクションに見出しをつけることがあります。この場合、見出しは
“Introduction”、”Methods”、”Results”、”Discussion” といったIMRADのセクション名を反映するものになります。

論文アブストラクト(抄録・要旨)の適切な文字数

アブストラクトの適切な文字数は、投稿するジャーナルの要件によって異なります。しかし、一般的なガイドラインとして、アブストラクトは通常150~250ワード前後とされています。

論文アブストラクト(抄録・要旨)の例

以下に、論文のStructured abstract(構造化 アブストラクト)の一例をご紹介いたします。構造化アブストラクトは論文のアブストラクトを特定の項目に分け、それぞれ論文の背景、目的、方法、結果、結論などを簡潔にまとめたものです。

論文タイトル:How disability severity is associated with changes in physical activity and inactivity from adolescence to young adulthood
出展:https://archpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13690-023-01043-0

1. Background
Disabilities may play a different role in determining people’s physical activity (PA) and physical inactivity (PI) levels when they go through multiple lifetime transitions (e.g., graduation, marriage) between adolescence and young adulthood. This study investigates how disability severity is associated with changes in PA and PI engagement levels, focusing on adolescence and young adulthood, when the patterns of PA and PI are usually formed.

背景 (Background) セクションでは、論文の研究背景や目的を簡潔に説明します。この論文では障害の重さによって、思春期から若年成人期にかけての多様な人生過程(卒業、結婚など)を経験する際に、人々の身体活動(PA: Physical activity)と不活動(PI: Physical Inactivity )のレベルに異なる影響を与える可能性があることが示唆されています。

2. Methods
The study employed data from Waves 1 (adolescence) and 4 (young adulthood) of the National Longitudinal Study of Adolescent Health, which covers a total of 15,701 subjects. We first categorized subjects into 4 disability groups: no, minimal, mild, or moderate/severe disability and/or limitation. We then calculated the differences in PA and PI engagement levels between Waves 1 and 4 at the individual level to measure how much the PA and PI levels of individuals changed between adolescence and young adulthood. Finally, we used two separate multinomial logistic regression models for PA and PI to investigate the relationships between disability severity and the changes in PA and PI engagement levels between the two periods after controlling for multiple demographic (age, race, sex) and socioeconomic (household income level, education level) variables.

方法 (Methods) セクションでは、研究のデザインや使用したデータセット、分析方法などについて説明します。この研究では、National Longitudinal Study of Adolescent HealthのWaves 1(思春期)および4(若年成人期)のデータを使用し、合計15,701人の被験者を分析しています。

3. Results
We showed that individuals with minimal disabilities were more likely to decrease their PA levels during transitions from adolescence to young adulthood than those without disabilities.
Our findings also revealed that individuals with moderate to severe disabilities tended to have higher PI levels than individuals without disabilities when they were young adults. Furthermore, we found that people above the poverty level were more likely to increase their PA levels to a certain degree compared to people in the group below or near the poverty level.

Results(結果)セクションでは、研究の結果が提示されます。著者たちは、軽度の障害を持つ人々は、若者期から青年期への移行期間において、身体活動(PA)のレベルが障害のない人々に比べて低下する可能性があることを示しています。

4. Conclusions
Our study partially indicates that individuals with disabilities are more vulnerable to unhealthy lifestyles due to a lack of PA engagement and increased PI time compared to people without disabilities. We recommend that health agencies at the state and federal levels allocate more resources for individuals with disabilities to mitigate health disparities between those with and without disabilities.

Conclusions(結論)セクションでは、研究結果の結論と意義がまとめられます。著者たちは、身体活動障害を持つ人々は、身体活動の不足と身体的不活動の時間が増加することにより、不健康なライフスタイルに陥りやすい可能性を示唆しています。そのため、州や連邦レベルの保健機関が、障害を持つ人々に対するリソース配分を増やし、障害を持つ人々と持たない人々の健康格差を緩和することを提案しています。

翻訳サービスに依頼するメリット

英語論文におけるアブストラクト作成において、専門の翻訳サービスを活用するメリットについてご紹介します。

1. ジャーナルの規定を順守できる
投稿するジャーナルによってはアブストラクトの長さや形式、文体などが明確に定められている場合があります。多くの翻訳会社や英文校正会社では、ジャーナルの規定に応じたアブストラクトの形式に合わせた翻訳を提供しているため、ジャーナルの規定に従って、適切な形式でアブストラクトを作成することができます。

2. 簡潔で明確な文体を使用できる
アブストラクトの目的は、読者に論文の主要な内容を簡潔に伝えることです。そのため、簡潔で明確な文体を使用することが重要です。冗長な表現や複雑な文法を避けるには、ネイティブチェックが非常に有用です。

3. 技術的な用語や略語を適切に説明することができる
アブストラクトには専門分野に独自の技術的な用語や略語が含まれるため、読者にとっては理解が難しい場合もあります。そのため、必要に応じて適切な説明をする必要があります。学術分野を専門とした翻訳会社は、分野の専門用語や研究の論理的な構成の翻訳に熟練しており、正確かつ適切な翻訳を提供することができます。

4. 原文と翻訳文との比較ができる
アブストラクトの翻訳は、原文の意味を正確に伝えることが求められます。ただ英文単体で洗練された文章であることだけでなく、翻訳されたアブストラクトと原文を比較し、正確かつ適切な翻訳になっているかを確認することが重要です。多くの翻訳会社では対訳クロスチェックを提供しており、ネイティブの目から見た英語の正確性と共に、日本語原文の意味がきちんと保たれているかもチェックできます。

エディテージの翻訳サービスについて

エディテージは英文校正が付属した学術・論文翻訳サービスとして、以下の3つのサービスを提供しています。それぞれ、アブストラクトの翻訳に対応していますので、予算やニーズに合わせて検討してみてください。

1. スタンダード学術翻訳
専門分野のエキスパートによる2名体制の人力翻訳に、主に英語面をチェックするスタンダード英文校正が付属します。英文法や語彙のエラーを徹底的にチェックし、特急での納品にも対応しているため、締め切り直前に翻訳を依頼したい方、予算が限られた中でも日本語を読みやすいネイティブ英語に仕上げたい方にお勧めです。

2. プレミアム学術翻訳
2名体制の人力翻訳に、論理の内容にまで踏み込んだプレミアム英文校正が付属。ネイティブにとって正確で読みやすいだけでなく、説得力のある英文に仕上げます。また納品から365日無料の再校正サービスに対応しているため、論文にとって第一印象を左右する重要な部分であるアブストラクトを、ジャーナル投稿までに徹底的にブラッシュアップすることができます。アブストラクトの翻訳は本文の翻訳と比べて文字数が大幅に抑えられるので、プレミアム学術翻訳を一度試してみたい方にもお勧めです。

3. トップジャーナル学術翻訳
2名体制の人力翻訳作業に加え、エディテージで最も経験豊富なシニア校正者とレビュアーによるチェックで、原稿の品質を担保。さらに、ジャーナル査読経験者による投稿前査読と、投稿前査読・原稿改善と論文完成度評価レポートが付きます。アブストラクトのチェックにとどまらず、論文全体の質を最高品質に高めたい方、論文を掲載したいジャーナルの目標を明確にお持ちの研究者の方にお勧めです。(※こちらのサービスはアブストラクトと論文をまとめた一式でご注文いただく必要がございます。)

4. アブストラクト作成代行
翻訳というテーマからは外れますが、論文本文の翻訳をご発注いただくことで、翻訳後の英文校正を行ったネイティブ校正者が、アブストラクトを代筆するサービスも提供しております。

論文アブストラクト(抄録・要旨)翻訳に関するよくある質問

医療系のアブストラクト翻訳は可能ですか?

A: はい、可能です。医学・医療分野はエディテージの得意分野であり、エディテージのサービスを利用したお客様の論文が数多くの医学・医療分野のジャーナルに掲載されています。医学系論文の翻訳・校正を数多く手がけてきた専門チームが、しっかりと内容を理解した上でお客様の原稿をチェックいたします。臨床実践と研究に忙しく、論文執筆と投稿に時間が割けない医学・医療系研究者の方にも安心してお使いいただけます。

看護系のアブストラクト翻訳は可能ですか?

A: はい、可能です。エディテージは看護医学、老年看護学、小児看護学、公衆衛生看護学やEBNなど、多岐にわたる看護学の分野に対応しております。看護の研究においては、実践に基づく臨床的なアプローチや、科学的根拠に基づくエビデンスに基づくアプローチがあります。お客様の専門分野にマッチした翻訳者が、著者のアプローチや立場を理解し、最適な翻訳を行います。

日本語原稿とのクロスチェックは可能ですか?

A: はい、可能です。エディテージの学術翻訳サービスは専門分野に精通した翻訳者の和英翻訳のあと、必ずバイリンガルレビュアーによる対訳クロスチェックの工程が挟まれます。スタンダード学術翻訳、プレミアム学術翻訳はクロスチェック後にそれぞれ英文校正とネイティブレビューまで行うため、日本語原文の意味を保ちつつ、正確で説得力のある英文に仕上げます。

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この記事を書いた人

エディテージはカクタス・コミュニケーションズが運営するサービスブランドです。学術論文校正・校閲、学術翻訳、論文投稿支援、テープ起こし・ナレーションといった全方位的な出版支援ソリューションを提供しています。

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