「物理を応用して社会に還元したい」重宗 宏毅先生(早稲田大学先進理工学部 応用物理学科 助教 )

早稲田大学先進理工学部の重宗宏毅先生にインタビューをさせていただきました。若くして数々の賞を受賞されるなど、輝かしい経歴をお持ちです。世界へ発信することを見据えてのご研究活動は、絶えることのない炎のような情熱で導き出されているご様子で、その真摯なお姿にとても圧倒されました。

※聞き手 岡本麻子、遠藤元基、Kousik Bhattacharya(カクタス・コミュニケーションズ株式会社)
インタビュー実施日: 2019年8月26日 (以下、本文敬称略/肩書、ご所属等はインタビュー当時のものです)
目次

当時の師匠だった橋本先生と一緒に、何か紙に印刷することでロボットがつくれたらおもしろいんじゃないかと

―――すでにたくさんの経歴を積まれてらっしゃいますが、ご専門はどのように選択なさいましたか?

(重宗)学部 4 年生から現在の澤田研究室の前身だった橋本研究室に入りました。その時にはアカデミックに残ろうとは考えてなくて、就職を検討していました。ただ、せっかく研究をしてきたのだから、国際会議に参加してみたいと 1 年間一生懸命研究して。学部 4 年生のときの研究では国際会議に採択されました。その国際会議はロボットの学会では老舗と言われて、採択率も 30~40% ぐらい。難関と言われる国際会議だったので、非常に自信に繋がりました。その時にペーパーメカトロニクスという考えを立ち上げました。当時の師匠だった橋本先生と一緒に、何か紙に印刷することでロボットがつくれたらおもしろいんじゃないかと。 高校のときは物理・化学、特に物理がすごく好きで、早稲田の応用物理を選びました。物理を応用して何か社会に還元したい、貢献したいという気持ちがあったので、物理は研究する上でのキーワードとなっています。

―――私どもを選んでいただいた理由はどのような感じですか。

(重宗)私の友人が editage を使ってるからと紹介してもらいました。レベルの高い論文誌に挑戦したいと思って調べたときに、インパクトファクターの高いジャーナルに採択された東大ドクターの友人がいて、その方が editage さんを利用していると聞きました。大きな研究室でも使われているということで、内容も充実してるのではないかと思いました。ハイインパクトなジャーナルに向けたサービスもあり、今回は予算の都合もついたので、挑戦するためにもトップジャーナル英文校正を利用しました。

―――では、他のサービスと比較して迷うことなくトップジャーナル英文校正をお選びいただいたんですね。ありがとうございます。ところで、今回ご執筆された論文の分野は Nano Technology とお伺いしていますが。

(重宗)私の友人が まだ投稿中なのですが、どちらかというと Material Science 寄りの研究になります。今は紙に印刷して自律的に構造形成するという研究をしています。

―――動画(参照:https://www.youtube.com/watch?v=Zx-rHxiX-kw)でも拝見しました。

(重宗)ありがとうございます。さらにインクの幅を広げようということで、より大きく曲げるためにはどのようなインクが適切かなどを検討しています。今は1度印刷したら同時に1回で曲がってしまうんですけど、より多様なインクを開発することによって曲がる順番を変えたり、より強く折り目をつけて曲げたりするということが出来るのではないかと考えています。インクに不純物を添加することによって紙とインク間の反応を制御できないかと検討しています。どちらかというと Material Scienceの 分野となるのでしょうか。紙の繊維や分子の話にも繋がってはくるMechanical Engineeringでもないですよね。 Material Science に近いと思います。

―――Material Scienceでもあり、Nano Technologyでもあり。論文は 1 本でも分野は多岐に渡るのですね。

(重宗)もしかしたら私は、その分野から見たときに私の論文がどう見えるのかというのを、見て頂きたくてその分野を選択したのかもしれません。 Mechanical Engineering は一通りバックグラウンドを理解しているので、この研究を今『Science』や 『Nature』などのいわゆるハイインパクトファクターな論文誌に出すと考えれば、学際的なレビュアーから見られる時、多角的に見たときに自分の研究がどう見えるかということを気にしていました。

―――どの分野の方から見られても、きちんと伝わるものをお書きになりたいというコンセプトがあったのですね。

より多くの方々の目に触れるために英文で書くというのが大切で、さらにインパクトファクターの高い論文誌に挑戦しようとなると英文の質が気になってきます

―――ジャーナルの投稿ですが、年間でどれぐらい投稿されていらっしゃいますか。

(重宗)筆頭著者でいうと、ジャーナル 1 本、国際会議 1 本くらい、ある程度コンスタントに挑戦したいなと。ただ共著も含めてさらにそこに何本か増えていくと良いと考えてます。自分で構想、実験から論文執筆まで行っているので、生産性が上がらないことが悩みです。

―――かなりハイペースですね。

(重宗)今は競争も激しくなっているので、やはり 1 年に 1 本くらいは書けたほうがいいのかなと私は感じてて。共同研究者たちもそのような感じです。日々、どううまく時間を使って質の高い論文を書くかを考える上で、英文校正サービスを使うということも試しています。テンプレートを変更したり、英文を正しく修正してもらったり。共著者の方々も忙しいので、プロフェッショナルな人に委託して校正してもらうというのは重要になってくると思います。

―――ご自身の研究ペースを守るためにも、私どもみたいなサービスをご利用いただいてると。

(重宗)そうですね。

―――傾向としてはどういったジャーナルにご投稿されてらっしゃいますか。

(重宗)今までは機械系の論文誌 『Transactions on Mechatronics』や 『Robotics and Automation Letters』などに投稿していました。私の研究は、折り紙といった平面材料を折ることによって新たな機能を付与するという力学的な要素と、材料同士が反応することによって得られるエネルギーを最大化するといった化学的要素が混在しています。様々な分野の研究者に見て頂きたいため、学際的な論文誌に投稿したいというモチベーションがあります。また、学際的論文誌は論文投稿が活発になりインパクトファクターも高くなる傾向にあります。戦略的に考えるとそういった論文誌に出したほうが良いというのもあるかもしれません。

―――より多くの方々にという感じですね。

(重宗)はい。より多くの方々の目に触れるために英文で書くというのが大切で、さらにインパクトファクターの高い論文誌に挑戦しようとなると英文の質が気になってきます。英文の質を高めるために必要な努力は、ネイティブと後天的に英語を学んできた人たちでは全く違っていると思います。共同研究者が、ケンブリッジで英文学を研究していた方に対面で直接英文校正をして頂く機会があったという話を聞きました。その時に明らかに超えられない、勉強してそう簡単に超えられるようなレベルではない英語力の差を感じたそうです。本当に自分たちでは想定できないような言い回しになっていて、シンプルになおかつ伝わり易くなっていたそうです。この点についてはお金を払ってもし解決ができるなら、ある程度お願いをしても良いのではないかっていう考え方を私も学びました。もちろん自身の英語能力を高めようとする継続的努力は必要だと思います。

―――トップジャーナル英文校正では、研究内容まで踏み込んでというところにプラスして、ジャーナルによって求められる文体やニュアンスが違うので、出来る限りジャーナルが求めるものに近づけるためのサービスを行っています。

(重宗)論文誌でエディターをやられた方が見てるという認識でよろしいんですか。

―――投稿されるものと同じ分野の論文かはケースバイケースですが、査読者経験がある者が見させていただいています。

(重宗)査読者経験があるというのは学術論文を通すには説得力がありますし、こちらもそういう方に見て頂きたいというニーズがあります。身近に英語に信頼を置ける人間を見つけることは簡単ではないので、非常にありがたいと思います。

―――ありがとうございます。何度でも査読のコメント対応させていただくサービスもご利用いただいてますが、査読者とのやり取りは何回ぐらいありましたか?

(重宗)平均で4回ぐらいですね。

―――英文校正依頼するときはフルペーパーでお願いされることが多いですか。アブストラクトだけご依頼くださる先生など、いろんなタイプの先生いらっしゃいますが。

(重宗)私はもうトータルで見て頂きたいと考えています。フルペーパーで内容を理解した上で、カバーレターとかアブストラクトも添削して頂きたいです。内容に踏み込んで欲しいという意志が強いのだと思います。内容と文章は切り離せない関係があるので、アブストラクトだけ読んでも本当に自分が使いたいニュアンスを理解して頂けるかはわかりません。自分がこのような文脈でこの論文の中でその単語を使っているというのを理解した上で適した英語に校正して頂きたいと考えています。

「情熱を絶やさない」。どれぐらい素直に研究に向き合ってるかによって、そのことに割く時間やモチベーションとか、記憶力とかも決まってくる

―――先生がご研究を進められていく上で特に大事にされてることは。

(重宗)ちょっとくさい言葉ですけど、「情熱を絶やさない」だと思っています。どれぐらい素直に研究に向き合ってるかによって、そのことに割く時間やモチベーションとか、記憶力とかも決まってくると思います。だから情熱は絶やしたくないなって。興味とか、その興味を失わないために勉強する努力は、大切にしたいと思っています。

―――なかなか簡単なことではないですよね。

(重宗)難しくて孤独なんですけど、研究に対しての気持ちを失わないことは、自分の中で大切にしています。

―――やりがいを感じられるのは、どういった時点ですか。

(重宗)自分が思い描いたストーリーで、結果が出ないことはあるんですけど、これが駄目ならこうしてこうしてと、最終的に1つの論文としての形ができたときすごいやりがいがありますね。それで論文誌に通ったり、誰かに興味を持って頂いたり、というところもまた副次的にやりがいを感じます。研究に対する情熱を投影しようと努力して描き上げた論文を、何もない白紙の状態から作り出せた時はとてもやりがいを感じます。

―――いろんなデータを取っていくと、軌道修正されていかなきゃいけない、そこも柔軟に捉えた上で結果を導き出したとき。

(重宗)違う方向に行く時は、だいたい何かを正しく理解できていないから違う方向に行くのであって。失敗と修正を積み重ねることによって分からなかったことが分かるようになり、ストーリーラインに最終的に組み込めたときはうれしいです。

―――先生にとっては挫折の壁ではなく、次に行くステップですね。

(重宗)失敗として捉えるのではなくて、何か分からないことがあることが分かったら1つ新しいステップなんだろう、そう捉えられるといいなと。他人からの評価をベースにしたくないのは、やっぱり自分の中での情熱を失ってしまう、他人から面白くないと言われたり、結果が出なくなってしまったりした時点で研究が面白くなくなってしまうから良くないなと。自分の中で知識が積み重なるプロセスとか起きている現象自体に対して、純粋に興味を持っていたいです。

―――ずっと燃え続ける情熱を持って。

(重宗)だといいなと思っています。

対等に共同研究をして、なおかつその関係を続けて、論文誌に投稿をするという一連のプロセスを経験したい

―――今後ビジョンはどのような感じですか。

(重宗)海外でもう1回挑戦するチャンスがあるといいなと思っています。 修士2年のときに半年間イタリアに留学はしていたんですけど、学生という立場でした。でも私は研究者として対等な立場でいたくて。若かったんですよね、良い経験はさせて頂いたのですごい感謝はしてるんですけど、対等に共同研究をして、なおかつその関係を続けて、論文誌に投稿をするという一連のプロセスを経験したいです。海外に挑戦するにあたって自分の名刺となるものって、やっぱり論文とか国際会議の発表。他人に興味を持ってもらえる研究をすることや優秀な研究者だろうと思われることは大切なので、質の高い論文を書くことをeditageさんと協力してできたら良いとは思っています。

―――貴重なお話、本当にありがとうございました。

当日は弊社インド本社のマーケティング責任者・Kousik Bhattacharyaも同席させていただきました。普段なかなかお客様にお目にかかれないこともあり、有難い機会を頂戴いたしました。
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この記事を書いた人

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