エディテージ・グラント2025にて大賞を受賞した佐々木 勇人さんに、大賞を受賞した喜びやご自身の研究について、グラントに応募して感じたことなどを語っていただきました。
佐々木 勇人さんプロフィール
Yuto Sasaki
東北大学理学部地圏環境科学科地圏進化学コース卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻(地震研究所)修士課程修了後、都内中高一貫校専任教諭(理科・地学)として勤務。その傍ら個人で実験・研究を進め、進学を決意して退職。現在、大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻博士後期課程3年に在籍中。
趣味は吹奏楽やオーケストラでのトロンボーン演奏で、週末にリフレッシュしている。そのほか、軽登山、変形岩の収集、旅行、落語、音楽鑑賞(邦楽、洋楽、ジャズ、クラシックなど)も好む。

受賞した研究内容について
ここ20年間で、通常の地震とは性質の異なるスロー地震という現象が発見されて、精力的に研究が行われています。スロー地震は、同じマグニチュードの通常の地震と比べて長時間継続するのですが、なぜこのような違いが生まれるのか原因は明らかになっていません。私は現在、室内でのモデル実験を通して、スロー地震の再現と原因解明に取り組んでいます。スロー地震は、大地震を含む通常の地震の発生との関連も指摘されており、どのように発生するかを理解することは科学的にも防災的にも不可欠です。
エディテージ・グラント2025大賞を受賞して
この度は賞をいただきまして大変光栄に思います。選考委員の皆様や運営の皆様に心より感謝申し上げます。また、日頃より研究活動を支えてくださっている指導教員、研究室メンバー、大学事務の方々にもこの場をお借りして感謝いたします。このような形で少しでも研究が評価されてありがたく思います。今回の受賞を糧にして、今後も粛々と研究活動を進めてまいります。
エディテージ・グラントに応募した理由
インターネットで論文を調べていたら、このグラントの募集情報が目にとまりました。それまで知らなかったので、本当に偶然でした。若手研究者の日頃の研究活動と熱い思いをぶつけられる珍しい機会だと思ったため、応募を決意しました。また、大学院生でも応募できる数少ないグラントのひとつであったことも、応募した理由です。
グラントへの応募にあたり、苦労したことや工夫したこと
他の助成と比べて、「自分にとっての研究とは」のような“研究への思い”を求められている部分もあるため、冷静に・客観的に・コンパクトに書く研究助成とは違う頭の使い方をする必要がありました。自分にとって、研究とは、現在のテーマとは、どういう意味があるか(なぜその研究にこだわるか)を考える貴重な機会になりました。また,研究の長期的なビジョンを考えるきっかけにもなりました。
エディテージ・グラントに応募してみて感じたこと
エディテージ・グラントは、使途に制限がないことは研究上とても助かりました。また、いわゆる研究計画ではなく「エッセイ」という特色ある応募形式ですので、他の研究助成とは発想を変える必要がありました。しかし同時に、短期的な研究ビジョンだけでなく、これまでの自分の経験から将来の長期ビジョンを見通して現在の研究を位置付けることができたのは、このグラントへの応募があったからこそだと思っています
応募や審査までの審査過程は、応募者としてはとてもシンプルでわかりやすかったのでありがたかったです。また,セレモニーで、普段決して交流のない医学系の方とも話ができたのは貴重な機会でした。民間による研究支援の底力を実感しました。これからも継続していただけると、様々な研究者が支援を受けて研究発展できますので、ありがたく存じます。
普段、若手研究者として感じていること
現在の日本では、他国と比べても研究に対する投資が不足していると各種報道で伝えられていますが、大学院生の一人としてもそれを肌で感じています。研究費はもちろんのこと、若手研究者や学生を含めた研究者への経済支援も足りていません(独立して日常生活を送ることもままならない金額です)。このまま日本の研究は資金不足による零細化の一途を辿るのではないかと懸念しています。若手研究者の待遇改善は、これから研究者を目指す中高生も含めて、研究コミュニティ全体の活力を高めるためにも重要です。
一方で、今回のような民間の研究支援の重要性を感じてもいます。必ずしもすぐに社会実装できないとしても、基礎研究や萌芽的研究の重要性を認識していただける企業・助成が複数あることは、一研究者としても一人の人間としても頼もしく感じています。
研究活動が、研究者だけでなくたくさんの人にも伝わり理解されることも重要だと思っています。研究成果が研究者の内側だけにとどまらずに、(すぐには役に立たずとも)世の中に浸透しわかってもらえるように、適切な発信も大切だと自戒を込めて思います。
