「定説と信じられていたことを研究によって覆すのは大きな醍醐味」 佐賀大学 総合分析実験センター、永野幸生准教授インタビュー

「次世代シーケンサー」によるゲノム(遺伝子)解析で、DNAと食物の研究を結び付け、食材の遺伝的多様性の調査などを行なっているのが、佐賀大学 総合分析実験センターの永野幸生准教授。その多くの研究成果を論文で積極的に発表されている永野先生に、研究職を目指した理由や、現在の研究分野に進まれたきっかけ、最近の論文のテーマなどについてうかがいました。貴重なお話をぜひご覧ください。

永野幸生准教授プロフィール

佐賀大学 総合分析実験センター 准教授

1988年京都大学農学部食品工学科卒業を卒業後、京都大学農学研究科食品工学専攻にて修士課程・博士課程を修了。1994年より滋賀医科大学医学部助手としてキャリアをスタートし、名古屋大学農学部助手、名古屋大学大学院生命農学研究科助手を務めた後、2002に佐賀大学総合分析実験センター助教授に。現在は、佐賀大学総合分析実験センター准教授を務めるほか、鹿児島大学大学院連合農学研究科准教授も務めている。
専門分野は応用生物化学、園芸科学、応用分子細胞生物学、ゲノム生物学、食生活学。
遺伝子研究安全管理協議会 幹事
Frontiers in Genetics の Associate Editor (Evolutionary and Population Genetics 担当)
Frontiers in Ecology and Evolution の Associate Editor (Evolutionary and Population Genetics 担当)
Scientific Reports の Editorial Board Member (Genetics 担当)

エディテージは2022年5月におかげさまで創業20周年を迎えました。一言メッセージをいただけますでしょうか。

今年創業20周年を迎えたことをお慶び申し上げます。私はエディテージの利用歴は長いんですね。おそらく15年以上前から利用しておりまして、もうそんなになるんだと驚いています。

先生が研究職を目指したのはなぜですか?

正直にいうと「わからない」というのが答えなのですが、少なくとも子供のころからずっと、研究者になりたいとは思っていました。そのきっかけを親が与えてくれたのは間違いないと思っています。今はなくなってしまいましたが、その当時は学研が『〇年の科学』という、各学年向けに『科学』という雑誌を発行していました。内容もおもしろいのですが、付録で理科の実験的なことをいろいろとできるんですね。それが大好きで、毎月のように買ってもらっていました。

あとは小学校の図書館に理科の本がいろいろとあって、それをよく読んでもいました。特に印象に残っているのは、これも学研なのですが、漫画で科学を教えるようなものがたくさんあったんですね。その中に『発明・発見のひみつ』というのがあって、これを繰り返し読んでいました。ですから、この頃から「何かを発見する人になりたい」という気持ちがあったのだと思います。科学者になりたいとずっと思っていて、努力をして、なんとか科学者になれたという感じです。

先生が現在の研究分野に進まれたきっかけを教えてください。

まずは高校生の頃ですね。いろいろなことに興味がありすぎて、どれにしようかすごく悩んだのですが、最終的に選んだのが遺伝子に関する研究、今でいう「バイオ」です。勢いがあってこれから伸びる分野だなというのを高校生ながらに感じました。それでバイオの分野に進もうと思い、大学もそれで選びました。

次のステップが大学での研究室選び、卒業研究をどこにするかということですが、これは直感でした。私の指導教員は佐々木幸子というのですが、当時としては非常に珍しい、女性の先生でした。この人が自分の行なっている研究を説明してくれたときに、それがすごく魅力的に感じられて、この人の研究室にしようと選びました。
そこで学んだのが、「ひとつの遺伝子に注目して、その機能を明らかにする」というような研究で、その当時はみんなそんな研究ばかりしていました。その中で機能的におもしろい遺伝子を見つけて、それを突き詰めるというような研究ですね。それが20年ほど前までの話です。

恩師の元で研究を続けていたわけですが、彼女が退職の頃に佐賀大学に移ってきました。こちらに来てからも、1つの遺伝子に注目して機能を明らかにするという、それまでと同様のアプローチでの研究を行ない、それなりに良い成果も出たのですが、私自身が飽きてきてしまい、論文も出なくなってしまいました。そこで新しい分野に興味を持ったんですね。それが「次世代シーケンサー」という技術なのですが、それを使うことで、昔は大きなグループでないと研究できなかったような「ゲノム(生物が持っている全DNAの情報)」が、大きな研究室ではなくても研究できるようになってきました。これに飛び込んでみようと思ったのが、約10年前です。

そんな感じで分野を変えてみるということをして、分野を変えたらまた研究が進むようになりまして、いろいろな研究をしてきました。この分野に入ってから10年くらいなので、そういった意味ではまだ若手なのですが、おかげさまでそれなりに研究はできているのかなと思っています。中堅クラス、インパクトファクターでいうと5くらいですが、それくらいの学術雑誌の編集者として任されるようになりました。具体的には、Frontiers in Genetics とFrontiers in Ecology and Evolution ですが、これの Associate Editorを務めています。また、Scientific Reports の Editorial Board Memberにもなっています。この2年くらいの出来事なのですが、国際的にも認められるようになり、喜んでいるところです。

もうひとつ研究についていうと、わりと海外、欧米ではなくアジアに出るようになって、そこで現地調査に加えていろいろなコネクションを作ることにも励んでいます。現在はミャンマーとスリランカの学生がいますけれども、海外から優秀な学生を集められるようになったことも良かったことです。海外の優秀な学生を育てたいというのも、近年の目標です。

最近の論文のテーマについて教えてください。

遺伝子、DNA周りが興味の対象なのですが、もうひとつ興味があるのが「食品」です。大学も食品工学を卒業しています。それでDNAの研究と食品の研究を結び付けているわけで、特にいろいろな食材の遺伝的多様性を調べるという研究をしています。簡単に言うと、いろいろなところの食べ物のDNAを採ってきて、そのDNA配列を調べます。その配列の違いを調べることで、「この食材はこの地域特有」とか、「この地域の食材は別の地域とは違う」とか、ある意味地域おこしにもつながるようなことがいろいろとわかってくるわけです。そういった研究をいろいろな食材を対象にやっています。

具体的な例を挙げると、最近でおもしろかったのがビワの研究ですね。ビワをメインに研究している佐賀大学農学部の福田先生と一緒に行なった研究です。ビワは東洋でも西洋でも栽培されていますが、起源は中国の南部ではないかといわれており、中国や日本から西洋にビワが伝わったのではないかといわれています。なぜかというと、「ここからここに移動した」という記録が残っているんですね。記録が残っているので、それが信じられていたわけです。

ところがわかったのは、中国人や日本人がまずくて食べないような謎のビワの系統、それを西洋人が持ち込んでいたということ。記録に残っているような植物園用には、中国や日本で食べられていたものが持ち込まれていたのですが、それ以外の、東洋人が利用しないようなものも実は持ち込まれていて、そのため起源がまったく不明なんですね。西洋起源ではなく、東洋が起源であることはまちがいないのですが、おいしくないものを彼らが持ち込んでいたというのが驚きでした。たしかにまずいんです(笑)。文献があるからといって信用してはならない。こういったことがわかるというのが、ゲノムでの分析の醍醐味というように感じています。

-先生には長年にわたってエディテージをご利用いただいていますが、どんな印象をお持ちですか?

私がヘビーユーザーなのでこのインタビューを受けているのだと思いますが、この15年間を振り返って思うのが、やはり次第に良くなっていると思いますし、私としては非常に高く評価しています。

実は今年(2022年)、1件だけトラブルがあったのですが、トラブルへの対処が非常に良く、結果的には良かったということがありました。トラブルシューティングが良いということが大きなポイントだと思っています。もうひとつ、特にうれしかったのは、1回だけですが「非常に英語が上手で直すところが少ないので割引します」ということがあり、それには驚きました。短い論文だったせいもあるかもしれませんが、これはうれしかったですね。

納期については、それほど急ぐということはないので、心配をしたことはあまりないのですが、納期前に返ってくることが昔に比べて増えたということは感じます。約束より早く返ってきたというのはうれしいですよね。

今後、エディテージに期待することを教えてください。

やはり時代が変わって、AI(人工知能)ですね。論文執筆時にはAIによる翻訳・校正・書き換えツールなどを使うことが前提になりますから、それに対応して、文章をより良いものにしてくれるサービスになるとよいなと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

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この記事を書いた人

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