「研究論文の書き方がわからない」 「卒業論文や修士論文、何から手をつければいい?」 「査読付きジャーナルにアクセプト(採択)される論文を書きたい」
研究論文の執筆は、多くの学生や研究者にとって大きな壁となります。膨大な先行研究の調査、論理的な構成の構築、そして何より「伝わる」文章作成は、一朝一夕に身につくものではありません。
しかし、論文には世界共通の「型」と「ルール」が存在します。
この記事では、研究論文の種類といった基礎知識から、論文の骨格となるIMRaD(イムラッド)構成の具体的な書き方、さらには投稿ジャーナルの選び方、査読対応のコツまで、あなたの研究成果を世界に発信するための全ステップを徹底的に解説します。
この記事を読めば、論文執筆の全体像が明確になり、「書けない」という不安が「書ける」という自信に変わるはずです。
研究論文の種類
まずは、あなたが執筆しようとしている論文がどれに分類されるかを知ることから始めましょう。目的によって、論文の形式や求められる内容は異なります。
原著論文 (Original Article)
最も一般的で主要な論文形式です。著者自身の新しい研究成果や発見(オリジナルのデータ)に基づき、その研究プロセスと結果、考察を詳細に報告します。論文の「型」であるIMRaD構成(後述)に沿って書かれるのが基本です。
速報論文 (Short Communication / Letter)
重要かつ新規性の高い発見を、迅速に公開することを目的とした短い論文です。原著論文のように詳細な考察や背景を書き込むよりも、速報性を重視します。ページ数や図表の数に制限がある場合がほとんどです。
レビュー論文 (Review Article)
特定の研究テーマについて、既存の多数の文献(原著論文など)を体系的に収集、整理、分析、評価し、その分野の現状と今後の展望をまとめた論文です。著者自身の新しい実験データは含みません。その分野の権威ある研究者が執筆することが多いですが、学生が「文献レビュー」として書く場合もあります。
症例報告 (Case Report)
主に医学・臨床分野で用いられます。珍しい症例や、新しい治療法が奏功した事例など、1例または数例の具体的な臨床経過を詳細に報告するものです。
会議抄録・論文・議事録 (Abstract / Proceedings)
学会や国際会議で発表するための要旨(抄録)や、発表内容をまとめた論文(プロシーディングス)です。査読プロセスを経て「論文集」として出版されるものもあれば、発表の要旨のみの場合もあります。
研究論文の書き方
ここからは、論文執筆の具体的なプロセスと技術を、ステップバイステップで解説します。
研究論文の構成
学術論文、特に自然科学や社会科学の原著論文は、「IMRaD(イムラッド)」と呼ばれる標準的な構成で書かれます。これは以下の頭文字をとったものです。
- Introduction (序論・緒言): なぜ、この研究をしたのか? (背景と目的)
- Methods (材料と方法): どうやって、研究したのか? (実験・調査の設計)
- Results (結果): 何が、わかったのか? (客観的なデータ・事実)
- and (アンド)
- Discussion (考察): それは、何を意味するのか? (結果の解釈・意義)
このIMRaDに、Title (タイトル)、Abstract (要旨)、Conclusion (結論)、References (参考文献)などが加わり、一本の論文が完成します。まずはこの「型」を意識することが、論理的な論文を書く第一歩です。
研究論文の準備
「論文は書き始めてからが勝負」と思われがちですが、実は執筆前の「準備」が論文の質とスピードを9割決めます。
リサーチクエスチョン(研究テーマ)の明確化
執筆を始める前に、自問してください。 「自分はこの論文で、何を明らかにしたいのか?」 これが「リサーチクエスチョン(RQ)」です。RQが曖昧なまま書き始めると、必ず途中で筆が止まります。
- 良いRQの例: 「Aという介入は、Bという集団のCという結果を改善するか?」
- 悪いRQの例: 「Aについて調べる」
RQは、論文全体の「背骨」です。具体的かつ明確に設定しましょう。
投稿ジャーナル(雑誌)の選定
論文は「誰に」読んでもらうかによって、書き方やアピールすべきポイントが変わります。執筆初期段階で、投稿先のジャーナル(学術雑誌)を仮決めしておくことを強く推奨します。
ジャーナル選定のチェックポイント:
- 分野 (Scope): あなたの研究テーマは、そのジャーナルの対象分野に合致していますか?
- 読者層: そのジャーナルの主な読者層は誰ですか?(基礎研究者? 臨床家? 政策担当者?)
- インパクトファクター (IF): ジャーナルの影響力を示す指標の一つ。IFが高いほど引用されやすく権威があるとされますが、査読基準も厳しくなります。
- 査読形式と期間: 査読プロセスは迅速か? Double-blind(著者と査読者が互いに匿名)か?
- Open Access (OA): 掲載された論文を誰でも無料で読めるようにする(OA)か、購読者のみが読める(非OA)か。OAにする場合、著者側が掲載料(APC)を支払うことが一般的です。
自分の研究の価値を最も理解してくれるコミュニティに届ける意識で選びましょう。
執筆スケジュールの立て方
「締切間際に徹夜する」のは最悪のパターンです。論文執筆はマラソンです。現実的なスケジュールを立て、逆算して進めましょう。
- 例: 締切が3ヶ月後なら…
- 最初の1ヶ月: 文献調査とデータ整理、論文全体の詳細なアウトライン(目次)作成
- 次の1ヶ月: IMRaDの各セクションを集中執筆(書きやすい「方法」や「結果」から)
- 次の2週間: 「序論」と「考察」(最も思考力を要する)を執筆
- 最後の2週間: 全体の推敲、図表の調整、参考文献リストの確認、英文校正
魅力的なタイトルの付け方
タイトルは、あなたの論文が読まれるかどうかを決める「顔」です。論文の内容を正確に反映し、かつ読者の興味を引く必要があります。
宣言型 (Declarative)
「AはBを引き起こす」「XはYより効果的である」など、研究の主要な結論を断言するスタイル。インパクトが強い反面、内容に絶対の自信が必要です。
記述型 (Descriptive)
「AとBの関係性に関する研究」「XのYへの影響」など、論文が何について書かれているかを客観的に記述するスタイル。最も一般的で無難な形式です。
問いかけ型 (Interrogative)
「AはBを引き起こすか?」「XはYに有効か?」と、リサーチクエスチョンをそのままタイトルにするスタイル。読者の関心を引きますが、ジャーナルによっては好まれない場合もあります。
コツ: 論文の核となるキーワード(研究対象、手法、主要な結果)をすべて含めるように意識しましょう。
効果的な文献調査方法
優れた研究は、優れた先行研究のレビュー(文献調査)に基づいています。
- データベースの活用: PubMed, Google Scholar, CiNii, Web of Scienceなど、専門分野の主要なデータベースを使いこなしましょう。
- キーワード戦略: 検索キーワードは一つに絞らず、同義語や関連語を組み合わせて(例: “heart attack” OR “myocardial infarction”)検索します。
- 芋づる式調査: 質の高い論文を見つけたら、その論文が「引用している文献」と、その論文を「引用している新しい文献」の両方をチェックします。
- 文献管理ソフト: Mendeley, Zotero, EndNoteなどの文献管理ソフトを導入しましょう。文献の整理、保存、そして後の「引用」作業が劇的に効率化されます。(詳細はQ&Aで後述)
要旨(要約、抄録)の書き方
要旨(Abstract)は、論文全体のミニチュア版です。タイトルと同様、論文の「顔」であり、読者は要旨を読んで本文を読むかどうかを判断します。
- 構成: 「背景・目的」「方法」「主要な結果」「結論」の4要素(IMRaDの要約)を、決められた文字数(通常200〜300語)の中に簡潔に盛り込みます。
- 書くタイミング: 全てのセクションを書き終えた「最後」に書くのがおすすめです。
- 注意点: 要旨の中では、本文中の図表や文献を引用してはいけません。
序論(緒言)の書き方
序論(Introduction)の役割は、読者を研究の世界に引き込み、「なぜこの研究が重要なのか」を納得させることです。
- 構造: 一般的に「逆三角形」の構造(大きな話から小さな話へ)で書かれます。
- 広い研究背景: この研究分野の一般的な状況や重要性。
- 先行研究と問題点: これまでに何がわかっていて、何がわかっていないのか(リサーチギャップ)。
- 本研究の目的と位置づけ: そのギャップを埋めるために、本研究が何(リサーチクエスチョン)を、どのように明らかにするのか。
材料と方法の書き方
方法(Methods)セクションの目的は、「他の研究者が、あなたの研究を正確に再現できること」です。
- 具体性: 使用した試薬、機器(メーカー名、型番)、対象者の選定基準、統計解析の手法など、研究の「レシピ」を詳細かつ正確に記述します。
- 時制: すでに行った操作を記述するため、原則として過去形で書きます。
- 倫理: 人や動物を対象とする研究の場合、倫理委員会の承認番号やインフォームド・コンセント(同意取得)について必ず明記します。
結果の書き方
結果(Results)セクションでは、研究によって得られた客観的な事実(データ)を、淡々と提示します。
- 解釈は加えない: ここでは「なぜそうなったのか」というあなたの「解釈」や「考察」を書いてはいけません。それは次の「考察」セクションの役割です。
- 論理的な順序: 序論で提示したリサーチクエスチョンに答える順序で、データを提示します。
- 図表の活用: 複雑なデータや傾向を示すには、文章で羅列するよりも図(Figure)や表(Table)を効果的に使い、本文ではその図表が示す主要なポイントのみを記述します。
考察の書き方
考察(Discussion)は、論文の「核」であり、著者の力量が最も問われるセクションです。
- 「結果」との違い: 「結果」が「何がわかったか(事実)」であるのに対し、「考察」は「それが何を意味するか(解釈)」です。(詳細はQ&Aで後述)
- 主要な結果の要約: まず、最も重要な「答え」を簡潔に述べます。
- 先行研究との比較: あなたの結果は、先行研究と一致しましたか? それとも異なりましたか? 異なる場合、それはなぜか?
- 研究の意義: この結果から、学術的に(あるいは臨床的に・社会的に)どのような新しい知見が得られましたか?
- 研究の限界 (Limitation): この研究で「できなかったこと」や「弱点」を正直に認め、それが結果の解釈にどう影響するかを述べます。(信頼性担保のために重要)
- 今後の展望: この研究を踏まえ、次にどんな研究が必要か?
結論の書き方
結論(Conclusion)は、論文全体を締めくくるセクションです。(ジャーナルによっては考察に含める場合もあります)
- 要旨との違い: 要旨は「論文全体の要約」ですが、結論は「考察を踏まえた最終的な着地点」です。
- 書くべきこと: 研究の問い(RQ)に対する最終的な「答え」と、その研究の「重要性」や「意義」を、序論と呼応する形で再度強調します。
- 書くべきでないこと: 結論で新しいデータや、本文で議論していない新しい考察を持ち出してはいけません。
効果的な引用方法と参照方法
学術論文において、先行研究の成果を適切に引用(Citation)し、参考文献(References)リストを作成することは、研究の信頼性と透明性を担保するために不可欠です。
- 引用する場面: 他者のアイデア、データ、文章を直接的・間接的に利用する際は、必ず出典を明記します。
- 引用スタイル: ジャーナルごとに「APAスタイル」「Vancouverスタイル」など、厳密な書式(著者名の順序、出版年、ジャーナル名の表記法など)が定められています。投稿規程を必ず確認してください。
- 文献管理ソフトの活用: 手作業でのリスト作成はミス(漏れ、書式間違い)の温床です。MendeleyやZoteroなどの文献管理ソフトを使えば、引用スタイルの自動変換やリスト作成が瞬時に行えます。
図の作成 (Figure)
複雑なデータや関係性を示すには、図(グラフ、写真、模式図)が最適です。
- 自己説明的: 図とそのキャプション(説明文)だけで、図が何を意味しているか理解できるように作成します。
- シンプル: 不要な装飾(3D化、カラフルすぎる色使い)は避け、伝えたい情報が瞬時にわかるデザインを心がけます。
- 解像度: 投稿規程で定められた解像度(dpi)を満たしているか、必ず確認します。
表の作成 (Table)
正確な数値を並べて比較・提示したい場合は、表が適しています。
- 自己説明的: 図と同様に、表とタイトルだけで内容が理解できるようにします。
- 本文との重複を避ける: 表に示した数値を、本文でそのまま羅列するのは避けます。本文では、その表から読み取れる「傾向」や「主要な値」のみを記述します。
- フォーマット: ジャーナルのフォーマット(罫線の引き方など)に従います。
著者の定義(オーサーシップ)
誰を論文の著者(Author)とし、どの順番で記載するかは、しばしばトラブルの原因となります。
- オーサーシップの基準: 一般的に「研究の構想・設計、データ取得・分析・解釈に実質的に貢献」し、かつ「論文の執筆や重要な修正に関与」し、さらに「最終原稿を承認し、研究の全責任に同意する」すべてを満たす人が著者とされます。(例:ICMJEガイドライン)
- 順番: 分野によりますが、一般的に筆頭著者(First Author)が研究を最も主導した人、最終著者(Last Author / Corresponding Author)が研究全体を統括した責任者(研究室の主宰者など)となります。
- トラブル回避: 貢献度が曖昧な場合は、研究開始時や執筆前に、関係者間でオーサーシップについて明確に合意しておくことが極めて重要です。
謝辞の書き方 (Acknowledgements)
著者基準は満たさないものの、研究遂行や論文執筆にあたりお世話になった個人や組織(技術的サポート、資金提供、アドバイスをくれた同僚など)に対して感謝を述べるセクションです。
- 具体的に: 資金提供(助成金名、番号)は必ず明記します。
ジャーナルの投稿規程における確認事項
論文が完成したら、いよいよ投稿(Submit)です。その前に、投稿先ジャーナルの「投稿規程(Guide for Authors)」を隅から隅まで読み込みましょう。
- チェック項目: 文字数制限、引用スタイル、図表のフォーマット、必要書類(カバーレター、利益相反(COI)申告書など)、査読プロセスなど。
- 規程違反は即リジェクト: 内容がどれだけ素晴らしくても、フォーマットが規程に従っていないだけで、査読に回されず即リジェクト(不受理)となることもあります。
論文の英文校正/プルーフリードの重要性
特に非英語ネイティブの研究者が英語論文を執筆する場合、文法ミスや不自然な表現は、研究内容以前の段階で査読者にネガティブな印象を与え、リジェクトの原因となり得ます。
- 文法チェッカー: Grammarlyなどのツールも有用ですが、それだけでは不十分です。
- プロの英文校正: 予算が許せば、専門の英文校正サービス(Academic Editing)を利用することを強く推奨します。研究内容を理解できる専門家による校正が理想です。
- ネイティブチェック: 身近にネイティブスピーカーや英語論文執筆経験豊富な先輩がいれば、読んでもらいましょう。
論文の投稿前査読(プレ査読)
投稿ボタンを押す前に、信頼できる指導教官、同僚、先輩研究者に原稿を読んでもらい、客観的なフィードバックをもらう「プレ査読」は非常に有効です。
- 目的: 自分では気づかなかった論理の飛躍、データの解釈ミス、分かりにくい表現などを、本番の(厳しい)査読者に指摘される前に修正できます。
研究論文の執筆で気をつけるべきこと
研究成果を発表する上では、守るべき厳格な「研究倫理」があります。これに違反すると、論文が撤回(Retraction)されるだけでなく、研究者としてのキャリアを失うことにもなりかねません。
剽窃(コピペ)を避ける方法
剽窃(ひょうせつ、Plagiarism)とは、他人の文章、アイデア、データを、適切な引用元を示さずに自分のものとして使用することです。これは「盗作」であり、研究不正の最たるものです。
- 対策:
- パラフレーズ(言い換え): 他人の文章を引用する際は、単語を少し変えるのではなく、内容を完全に理解した上で「自分の言葉」で書き直します。
- 直接引用: どうしても原文のまま引用したい場合は、引用符(” “)で囲み、出典を明記します。
- 剽窃チェックツール: 自分の文章が意図せず剽窃になっていないか、iThenticateやTurnitinなどのチェックツールで確認することも有効です。
二重投稿・サラミ出版の禁止
- 二重投稿 (Duplicate Submission): 実質的に同じ内容の論文を、同時に複数のジャーナルに投稿すること。これは厳しく禁止されています。一つのジャーナルからリジェクトの連絡を受けるまでは、他誌に投稿してはいけません。
- サラミ出版 (Salami Slicing): 本来一本の論文としてまとめるべき研究成果を、意図的に細かく分割し、複数の論文として出版しようとすること。研究業績の水増しと見なされ、推奨されません。
データ(結果)の取り扱い
- 捏造(Fabrication): 存在しないデータを作り出すこと。
- 改ざん(Falsification): 既存のデータを、自分に都合の良い結果になるよう操作・変更すること。
- 不適切な統計処理: 意図的に統計手法を誤用し、有意差を無理やり出すこと。
これらは全て重大な研究不正です。データは正直(Honest)かつ透明性(Transparent)をもって扱わなければなりません。
研究論文の書き方(よくある質問 Q&A)
ここでは、特に初心者がつまずきやすいポイントをQ&A形式で解説します。
- 投稿するジャーナル(雑誌)は、どうやって選べばいい?
-
- ステップ1: 分野の確認: 自分の参考文献リスト(引用した論文)が、どのジャーナルに掲載されているかを確認するのが早道です。そこがあなたの研究コミュニティです。
- ステップ2: Aims & Scopeの確認: 気になるジャーナルのウェブサイトで「Aims & Scope(目的と範囲)」を読み、自分の研究がそのジャーナルの読者層と合致するか確認します。
- ステップ3: IFと査読期間: 自分の研究成果のインパクト(非常に画期的か、堅実なデータ追加か)と、掲載までのスピード(卒業までに必要か)を天秤にかけ、IF(インパクトファクター)や平均査読期間を考慮します。
- ステップ4: 掲載料(APC): Open Accessジャーナルの場合、掲載料(APC)が数十万円かかることもあります。予算(研究費)の有無も重要な選定基準です。
- 査読で「リジェクト(不採択)」されたらどうすればいい?
-
まず、落ち込む必要はありません。 トップ研究者でもリジェクトは日常茶飯事です。重要なのはその後の対応です。
- 冷静になる: リジェクトの通知直後は、感情的になりがちです。最低でも一晩置き、冷静になってから査読コメントを読み返します。
- 査読コメントを熟読する: 査読者は(たとえ厳しい言葉でも)あなたの論文を良くするためのボランティアです。指摘を「批判」ではなく「無料のコンサルティング」と捉え、的を射た指摘がないか分析します。
- 対応を決定する:
A: 修正して再投稿 (Resubmit): 査読者の指摘が妥当であり、追加実験や大幅な修正で対応可能と判断した場合。コメントに一つひとつ誠実に対応し、論文を改良します。
B: 他のジャーナルへ投稿 (Submit to another): 指摘が的外れだと感じる場合や、修正が不可能な場合。論文のレベルを調整し(IFを下げるなど)、別のジャーナルに投稿し直します。 リジェクトは「終わり」ではなく、論文の質を高める「プロセスの一部」です。
- 参考文献(引用文献)リストの作成を効率化する方法は?
-
答えは一つ。「文献管理ソフト(Mendeley, Zotero, EndNoteなど)を最初から使う」です。
これら(多くは無料)を使えば、文献調査の段階で論文PDFと書誌情報をデータベース化でき、Wordなどで執筆中にワンクリックで引用を挿入、文末の参考文献リストも投稿規程のスタイルに合わせて自動で生成してくれます。 執筆終盤に手作業でリストを作るのは、時間と労力の無駄であり、ミス(引用漏れ)の原因にしかなりません。
- 忙しい中で論文執筆の時間を確保するコツは?
-
「まとまった時間ができたら書こう」と思っていると、その時間は永遠に来ません。
- 「書く」ハードルを下げる: 「今日は3時間書く」ではなく、「今日は1日30分だけ、PCの前に座る」と決めます。
- 「書く時間」をスケジュールに組み込む: 「朝イチの30分」「ランチ前の15分」など、他の予定と同じようにカレンダーに「論文執筆」の時間をブロックします。
- アウトラインから書く: 真っ白な画面に向かうから書けないのです。まずは詳細なアウトライン(目次)を作り、「今日はこのH4の見出しだけ書く」というようにタスクを細分化します。
- 著者の順番(オーサーシップ)は誰がどう決めるべき?
-
「研究が始まる前、あるいは執筆開始前に、関係者全員で明確に合意する」ことが唯一の正解です。 貢献度(アイデアの創出、実験の実施、データ分析、論文執筆)に応じて、誰が筆頭著者(First author)、誰が責任著者(Corresponding author)で、他の共著者はどの順番にするかを決めます。
後から変更するのは大きなトラブルになります。「実験を手伝ってくれたから」という理由だけで安易に著者(ギフト・オーサーシップ)に加えるのは研究倫理違反です。
- 先行研究のレビュー(文献調査)は、どれくらいやれば十分?
-
「十分」に絶対的な答えはありませんが、目安はあります。
- 「飽和」するまで: 主要なデータベースで関連キーワードを検索し、「またこの論文か」「新しい情報がもう出てこないな」と感じる状態(飽和点)が一つの目安です。
- 批判的に読む: ただ「AはBと言っている」と要約するのではなく、「この研究の限界(Limitation)は何か?」「自分の研究で解決できるギャップはどこか?」と批判的な視点で読むことが重要です。
- 最新の論文: 自分の研究分野のトップジャーナルで、直近1〜2年に何が議論されているかは必ず押さえておきましょう。
まとめ
研究論文の執筆は、登山に似ています。テーマの選定という麓(ふもと)から始まり、文献調査、実験、データ分析という険しい道を経て、執筆、そして査読という最後の難関を越えて、ようやく「アクセプト(採択)」にたどり着けます。
論文執筆は孤独で困難な作業ですが、あなたの研究成果を世に問い、人類の知のフロンティアを(たとえ一歩でも)押し進める、非常に価値のある仕事です。この記事が、あなたの論文完成へのロードマップとして役立つことを心から願っています。


