すべての医学的進歩は研究室から始まるのでしょうか? もう一度考えてみましょう。中には臨床医の洞察とよく書かれたケースレポートから始まるものもあります。ケースレポートはしばしば医学の入門レベルの出版物とみなされ、エビデンスヒエラルキーの下位に位置づけられます。しかし、エイズに関する最初の報告からサリドマイドの副作用の認識まで、レースレポートは医学における重要なマイルストーンを示してきました。ケースレポートは、稀な疾患を発見したり、予期せぬ薬物反応を警告したり、または新しい研究のアイデアを生み出したりすることで、重要なギャップを埋めることができます。ケースレポートは、臨床医が基本的なライティングスキルや推論スキルを身につけるのにも役立ちます。ケースレポートは、臨床の専門知識を披露し、文献に貢献する強力な手段です。また、初めて論文を執筆する人にとっては、ケースレポートは学術出版への優れた入り口となり得ます。
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ケースレポートを発表する前に知っておくべきこと
臨床医や医学研究者にとって、扱う患者や症例はすべて重要ですが、すべての臨床エピソードが優れたケースレポートになるわけではありません。症例が既存の知見を繰り返すだけで、新たな知見を提供しない場合は、報告する価値がないかもしれません。また、症例報告は学術論文の中でも「比較的簡単」なもののひとつと思われがちですが、インパクトのある症例報告を書いて発表するには、理解しておかなければならない重要な要素がいくつかあります。そこで、ケースレポートを執筆する前に、以下の点を考慮してください。
説得力のある症例を選ぶ:優れたケースレポートには、報告すべき明確な理由があります。新しい症例、稀な症例、あるいは重要なポイントを示している症例などを選びましょう。それには、これまでに知られていなかった病態、一般的な疾患の珍しい症状、興味深い治療結果や珍しい治療結果を記録した症例などが考えられます。考えてみてください。この症例から得られるメッセージや教訓は何でしょうか? そしてこの分野の他の研究者にどのように役立つでしょうか? 症例の臨床経過全体を観察しましょう。ケースレポートを書き始める前に、6カ月ほど待つことをおすすめします。
ヒント:文献検索を行って、強調しようとしている事例や中心となるメッセージや結果がすでに公開されていないことを確認します。
関連するチームメンバー全員を含める:症例に直接関わった臨床医とチームメンバー全員を含めるようにしましょう。彼らの意見は正確性を高める上で貴重であるだけでなく、医学ジャーナルはケースレポートの著者が実際に患者のケアに関わっていることを期待しています。特に学生や研修医の場合は、一人で抱え込まないでください。先輩や指導医と症例について話し合うことで、論文のギャップや誤りを特定したり、記載すべき重要なポイントを特定したりすることができます。これらは論文作成の指針となるでしょう。
ヒント:対象ジャーナルの著者基準をチェックして、関連するすべての寄稿者が含まれていることを確認してください。
あらゆる詳細を収集する:細部まで詳細に記録することで、状況は大きく変わります。患者の病歴、身体検査所見、画像検査や臨床検査結果、フォローアップ情報など、患者の経過に関連するデータをすべて収集しておきましょう。例えばMRIなどの特定の検査で診断された場合は、その結果も含めます(必要かつ可能な場合は、画像を図として掲載することも検討しましょう)。これらの情報を網羅することで、診断や観察の信頼性と妥当性を高めることができます。
ヒント:必要な関連する診断書、病院の記録、検査結果にアクセスできることを確認してください。
患者の同意を得ること:これは譲れない条件です。ケースレポートを出版する前に、必ず患者本人から、あるいは患者が未成年であったり、自分で同意できない場合には親権者や法定後見人から、 明確な書面によるインフォームド・コンセントを得てください。理想的には、患者は自分の症例が公表されること、そしてそれに伴う影響について理解している必要があります。例えば、症例が公表されて広く見られるだけでなく、名前や詳細を削除しても、患者が特定される可能性があることを伝えましょう。また、患者には報告書を読んだり、画像を確認したりする機会も与えるべきです。所属機関の同意書、またはジャーナルが提供する同意書を使用することができます(ジャーナルによっては、独自の同意書を使用することが義務付けられている場合があるため、対象となるジャーナルに確認してください)。
ヒント:提示する必要がある場合に備えて、書面による同意書の記録を保管しておいてください。
患者のプライバシーを保護する:たとえ患者の同意があったとしても、決して患者のプライバシーを侵害してはいけません。すべてのデータと画像を匿名化してください。これは患者の名前だけではなく、テキストと画像の両方において、守秘義務を守るために個人を特定できる詳細を取り除きます。患者の写真や画像に個人を特定できるような特徴が含まれている場合は、明確な許可を得ていることを確認し、通常、画像の掲載について同意を得た旨を論文に記載します。BMJなど一部のジャーナルでは、個人を特定できる情報を掲載する場合、ジャーナルが用意した署名入りの患者同意書の提出を著者に求めています。
ヒント:細部を見逃しがちなので、特定可能な患者データがすべて匿名化されているかどうかを常に再確認してください。
適切なジャーナルを選ぶ:すべてのジャーナルにケースレポートのセクションがあるとは限らないので、まず、ターゲットとするジャーナルにケースレポートが掲載されているかどうかを確認しましょう。また、ケースレポートの場合でもジャーナルによって掲載範囲が異なる場合があるため、自分のテーマがその範囲に収まっていることを確認してください。例えば、珍しい診断症例を掲載したがるジャーナルもあれば、斬新な手術手技を掲載したがるジャーナルもあります。また、1つの症例が複数のジャーナルに適している場合もあります。例えば、小児心臓病の症例であれば、小児科のジャーナルや心臓病学に特化したジャーナルに適しているかもしれません。ですから、症例の掲載範囲に合致するだけでなく、対象読者に届くジャーナルを選ぶようにしましょう。その他に考慮すべき重要な要素としては、インパクトファクター、索引、出版モデル(オープンアクセス要件など)などが考えられます。
ヒント:検討しているジャーナルから最近出版されたケースレポートをいくつか読むと、出版されている症例の種類、スタイル、期待されるものについて理解することができます。
ジャーナルのフォーマットガイドラインに従う:ジャーナルのフォーマット要件は、些細なことのように思えるかもしれませんが、実は著者を悩ませ、遵守しないとリジェクトにつながることもあります。出版が遅れたり、デスクリジェクトされたりしないよう、論文の構成(セクション)、フォーマット、引用スタイル、単語数、画像の数とそのフォーマットなど、対象ジャーナルの指示に忠実に従いましょう。
ヒント:ジャーナルによっては、ケースレポートのテンプレートが用意されています。
明瞭かつ正確に記述する:文章が明瞭で、事例が正確に表現されていることを確認しましょう。出来事の時系列を明確にし、関連する場合は否定的な結果や所見も含めるようにしてください。分かりやすい文章構成にし、必要に応じて略語を明確に定義します。解釈、結論、推奨事項が明確で一貫していることを確認してください。
ヒント:抄録やポスターなど、他の場所で発表されていないコンテンツのみを投稿しましょう。過去に発表済みの場合は、その旨を明記し、投稿先ジャーナルの投稿規定を確認してください。
よく書かれたケースレポートは、あなたの臨床的洞察力、批判的思考力、そして医学の進歩へのコミットメントを反映するものとなります。学生やキャリアの浅い研究者にとっては、学術出版への道を開き、自身のプロフィールを確立するチャンスでもあります。たとえ一人の患者のストーリーであっても、将来の発見を形作ることができる疑問を作っている可能性があります。
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