学術論文における未検証のAIコンテンツを利用する際の隠れたリスク

The Hidden Risks of Using Unverified AI Content in Your Academic Writing

人工知能(AI)は学術研究者にとって強力な味方となり得ます。研究要約の作成から文法・構造の改善まで、AIライティングツールは責任を持って使用すれば、時間を節約し明瞭さを高めるのに大いに役立ちます。2025年のAI利用に関する2つの調査では、学生と研究者の80%が学術ワークフローで生成AIを定期的に利用していることが明らかになりました。1,2

しかし、これには懸念も伴います。学生や研究者が、十分に検証されていないAI出力を自己判断で利用すると、不正確な情報、捏造された引用、さらには剽窃コンテンツが研究成果に混入するリスクがあります。これは機関のガイドラインに違反し、研究の信頼性に疑問を投げかけ、学術的誠実さを損なうことになります。AIを正しく使用しなかった場合の影響を見てみましょう。 

検証されていないAIコンテンツの使用による学術的および倫理的リスク

AIのハルシネーションと誤情報の拡散

AI生成コンテンツにおける最も一般的な問題のひとつは、AIモデルが堂々と虚偽または偏った主張を生成する「ハルシネーション」のリスクです。2024年に『Journal of Medical Internet Research』に掲載された研究によれば、大規模言語モデル(LLM)は学術成果物においてかなりの割合の参考文献を捏造または誤引用しており、Google Bard(91.4%)、ChatGPT-3.5(39.6%)、ChatGPT 4(28.6%)で高いハルシネーション率を示しました。3 このような偽の引用や誤解を招く主張が文章に紛れ込むと、分野を超えて誤情報が拡散し、研究の学術的信頼性を損なう恐れがあります。

非開示と学術的誠実さの低下

AIを適切に開示せずに学術論文執筆に使用することは、研究不正行為、改ざん、著者の欺瞞とみなされる可能性があります。これは、誰が実際に知的作業を行なったのかという疑問を生じさせるためです。5 ジャーナルや大学は、人間の説明責任を重視し、学術的誠実さを保護するため、規則を厳格化しています。ほとんどのジャーナルはAIツールを著者として記載することを認めていない一方、ElsevierやSpringer Natureなどのジャーナルは、研究の透明性を確保するため、謝辞または方法論のセクションにAI開示声明を含めることを要求しています。

剽窃、不正行為、著作権に関する懸念

AIは技術的には既存のコンテンツを逐語的にコピーするのではなく新たなコンテンツを合成しますが、AIが作成した素材を自身のものとして提示することは、学術的不正行為とみなされます。多くのトップ大学では、AIツールを用いたエッセイや論文執筆を明確に剽窃の一形態と規定しています。AIによるゴーストライティングはたとえプロンプトを用いていても、学術的不正行為とみなされる可能性があります。4 人間による監督なしにそのまま使用され、適切に開示されない場合、AI出力を言い換えたものであっても、人間と機械の著者の境界線が曖昧になります。

研究成果に潜在的なバイアスが生まれる

AIライティングツールは、トレーニングしたデータに依存します。そのデータの大半は公開ウェブから取得されるため、表現、性別、地理的分布などにおける社会的固定観念や偏見が機械生成コンテンツに浸透する可能性があります。アルゴリズムの仮定に基づく推論も、必然的に偏った結果をもたらす恐れがあります。検証されていないAIライティングを批判的評価なしに使用すると、あなたの研究がこうした偏見を強化し、学術的結論を歪める可能性があり、将来あなたの研究を参照する人々を誤った方向に導く恐れがあります。

批判的思考と独創性を損なう

教育関係者は、AIへの過度な依存が学生の科目への深い関与能力を制限する可能性を懸念しています。一般的なAIツールが、個人の洞察や専門知識なしにアイデア、構成、表現を提供すると、文章は定型的で単調なものに感じられます。検証されていないAIテキストの盲目的な使用は、創造性、独創性、独立した推論、知的深みといった教育と研究において不可欠なスキルの欠如を示すことになります。6

データプライバシーと機密性のリスク

いくつかの大手AI企業は、モデルの再学習にユーザーデータを利用しています。これは、AIライティングツールに入力された機密データや未発表の論文(文章の一部であっても)が、モデルの学習に使用されたり、公に晒される可能性があるということです。研究者や学生は、これらのプラットフォームを通じて個人情報やプライベートなデータを共有する際、特に注意を払う必要があります。あるいは、Paperpalのような信頼できるAI研究アシスタントを選択すべきです。Paperpalは厳格な対策を講じており、プラットフォームにアップロードまたは処理されたコンテンツをAIのトレーニングに使用しないことを明確に約束しています。これにより、あなたの研究は安全に保たれ、非公開かつ機密性が確保されます。

AIコンテンツの検証と倫理的な活用方法

検証されていないAIを論文執筆に使用するリスクは深刻ですが、AI研究アシスタントを倫理的かつ責任を持って活用することで、生産性と学習効果を高めることができます。正しい活用方法は以下の通りです。

1. AIを権威ではなくアシスタントとして扱う

AIを最終的な情報源ではなく、ブレインストーミングのパートナーと考え​​てください。アイデアの洗練、セクションのアウトライン作成、適切な表現の提案にはAIを活用しても、コンテンツをそのまま使用することは絶対に避けてください。学術論文にAI生成コンテンツを組み込む前に、自身で判断し、最終的な成果物(論文)が批判的思考と推論能力を反映したオリジナルなものであることを確認することが重要です。

2. 事実・統計・参考文献を常に検証する

すべての事実、統計、参考文献を、信頼できる一次情報源と照らし合わせて再確認してください。2024年のSocial Media Todayの分析によれば、主要なAIツールのほとんどが正しい引用を提供できず、参考文献リンクを捏造したり、情報を要約・近似化したりする傾向があります。7 この事実は、慎重な手動レビューの必要性を強調しています。

3. 人間による監督と自身の言葉を確保する

AIライティングツールでアイデアや文章を生成した後は、必ず自身の言葉で見直し・書き直しを行なってください。自身の洞察、実例、独自の論点を加えることで、研究と文章をより強固なものにします。これにより、あなたの文章はあなたの真摯な意見を維持し、倫理的な著者基準を満たすことができます。 

4. AI利用に関する機関のガイドラインを確認する

AIを活用した学術執筆ツールを使用する前に、大学やジャーナルの研究論文執筆・原稿作成におけるAI利用のポリシーを確認し、遵守してください。これらの機関ガイドライン(多くは現在も発展中)は、編集とコンテンツ生成における倫理的なAI利用の許容範囲を規定しています。

5. 研究におけるAI利用の透明性ある開示

多くのジャーナルや大学では、執筆における生成AIの利用状況に応じて、研究者にその開示を求めています。投稿ガイドラインを確認し、標準またはカスタマイズされたAI開示テンプレート(利用可能な場合)を用いてAI利用を宣言してください。これは通常、論文の謝辞または方法論のセクションに記載されます。

研究用AIツールの普及は、学術界における転換点となっています。検証、監視、開示を通じて人間の専門知識と倫理的なAI利用を組み合わせることで、AI研究・執筆ツールは知識の民主化を促進し、学習を加速させ、研究者が明確かつ自信を持ってアイデアを表現する助けとなります。しかし無責任に、あるいは近道として使用された場合、AIは学術研究の基盤である信頼性を容易に損なう可能性があります。この記事が、責任ある透明性のある真摯なAI利用への道筋となることを願っています。

参考文献

  1. Digital Education Council Global AI Student Survey 2024, Digital Education Council website – August 2024. Accessible on https://www.digitaleducationcouncil.com/post/digital-education-council-global-ai-student-survey-2024 
  2. Zhehui L.  et al. LLMs as Research Tools: A Large Scale Survey of Researchers’ Usage and Perceptions. arXiv, October 2024. Accessible on https://doi.org/10.48550/arXiv.2411.05025  
  3. Chelli, M. et al. “Hallucination Rates and Reference Accuracy of ChatGPT and Bard for Systematic Reviews: Comparative Analysis.” Journal Of Medical Internet Research, 2024. Accessible on https://www.jmir.org/2024/1/e53164 
  4. AI Tools and Resources, University of South Florida Libraries. Accessible on https://guides.lib.usf.edu/AI/plagiarism 
  5. Tang, BL. Undeclared AI-Assisted Academic Writing as a Form of Research Misconduct. CSE Science Editor, September 2025. Accessible on https://www.csescienceeditor.org/article/undeclared-ai-assisted-academic-writing-as-a-form-of-research-misconduct/ 
  6. Ali, Omar. et al. The effects of artificial intelligence applications in educational settings: Challenges and strategies. Technological Forecasting and Social Change, Science Direct. Accessible on https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0040162523007618 
  7. Hutchinson, A. Report Finds AI Tools Are Not Good at Citing Accurate Sources. Social Media Today, March 2025. Accessible on https://www.socialmediatoday.com/news/report-ai-tools-fail-correct-citations-queries/742236/ 

Paperpalは、リアルタイムに言語と文法を修正するための提案を行い、著者がより良い文章をより速く書くことを支援するAIライティングアシスタントです。プロの学術編集者によって強化された何百万もの研究論文に基づいてトレーニングされており、機械的なスピードで人間の精度を提供します。

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この記事を書いた人

2002年に設立された、カクタス・コミュニケーションズの主力ブランドであるエディテージの目指すところは、世界中の研究者が言語的・地理的な障壁を乗り越え、国際的な学術雑誌から研究成果を発信し、研究者としての目標を達成するための支援です。20年以上にわたり、190か国以上の国から寄せられる研究者の変わり続けるニーズに対応し、研究成果を最大限広く伝えられるよう、あらゆるサポートを提供してきました。
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