エディテージ・グラント2024にて次点に入賞した福島 菜奈絵さんに、入賞した喜びやご自身の研究について、グラントに応募して感じたことなどを語っていただきました。
福島 菜奈絵さんプロフィール
Nanae Fukushima
2024年3月:東京大学大学院 博士課程修了
2024年4月-現在:東京大学大学院 特任研究員

受賞した研究内容について
「地球の考古学」的な立ち位置の研究で、地球初期に形成されたグリーンランドの岩石を手がかりとし、その中に含まれる希ガスを分析することで、当時の地球の表層-内部の物質循環を理解しようとする研究です。
地球ではプレートの沈み込みにより、海水・海洋底堆積物・海洋地殻などの地球表層の物質と、そこに含まれている水、二酸化炭素、希ガスなどの揮発性成分はマントルへと輸送されています。プレート沈み込みによる表層-マントル間の物質循環は、太陽系の惑星において地球にしかない機構であり、地球内部でのマントルと水との反応によるマグマ生成、すなわち火成活動と大陸の形成とも密接に関わっています。具体的には、地球の元素循環に大きな役割を果たす水などの揮発性成分に着目し、この挙動を追跡できる希ガスを手がかりとし、課題に取り組んでいます。地球初期の火成活動については謎が多く、実際の試料を用いて当時の環境を制約できれば、地球科学分野の大きな進歩になります。
エディテージ・グラント2024次点を受賞して
色々な分野の研究者が応募できる内容でしたので、まさか受賞できるとは思わず、受賞のメールをいただいたときはとてもうれしかったです。ありがとうございました。
ご自身の研究について
岩石や火山ガスなど様々な形態の試料に含まれる希ガスの分析を行っています。火山ガスの希ガス同位体比の時間変化や空間分布をみることで、火山の活動度やマグマの供給系に関する情報を得ることができます。地球マントルに由来する岩石試料からは、地球内部の物質循環などの情報が得られます。個々のケーススタディを通じて、最終的にプレートの沈み込みが駆動する表層-マントルの物質循環の理解につなげたいと考えています。
私は幼少期から石が好きで、公園や河原で拾ってはコレクションしていました。大学で地球科学を専攻したきっかけは、博物館での鉱物展示を見て「自然界でなぜこんな綺麗な塊ができるのだろう?」というシンプルな好奇心でした。大学の教養課程では、地球のマントルの大部分が「ペリドット(かんらん石)」という8月の誕生石から構成されていることを知り、誰も見たことのない地球内部の世界をもっと知りたいと思うようになりました。さらに、地球は始原的隕石から形成されたことや、原始的な大気・海洋はマントルからの脱ガスに由来することを学び、宇宙分野、海洋研究、固体地球化学といった一見異なる分野が、実は密接に関連していることを実感し、自分も手を動かして研究をしたいと考えるようになりました。
地球化学分野は、使用するトレーサ(元素・同位体)で見えてくるものが異なります。今後は希ガス研究で培った技術を軸に、様々なトレーサを使った研究を実施し、地球進化の理解に貢献できるような研究をしていきたいです。
エディテージ・グラントに応募した理由
エディテージ・グラントは、実験の合間に、気分転換で学内の掲示板を眺めていたところ、ポスターを見つけました。応募要項に「これまでに論文を投稿していない方や、資金援助を受けていない方」という記載があり、まだ実績はほとんどなかったため、応募してみようと思いました。またエッセイのテンプレートも比較的書きやすい内容であったことも、後押しになりました。
グラントへの応募にあたり、苦労したことや工夫したこと
様々な分野の専門家の方が審査されるとのことで、何のために研究しているかを改めて問い、「社会の中での立ち位置」というところを改めて考えました。自分の研究に改めてじっくりと向き合う機会となり、今でも様々な場面で活きています。