エディテージ・グラント2024にて大賞に選ばれた石原 萌香さんに、大賞に選ばれた喜びやご自身の研究について、グラントに応募して感じたことなどを語っていただきました。
石原 萌香さんプロフィール
Honoka Ishihara
2017年 Royal Academy of Dance 全課程(Primary ~ Solo Seal)修了
2021年3月 広島大学医学部保健学科理学療法学専攻 卒業
4月 理学療法士免許 取得
2023年3月 広島大学大学院医系科学研究科 博士課程前期 修了
4月 広島大学大学院医系科学研究科 博士課程後期 入学
2024年12月 Progressing Ballet Technic Level.1 認定取得
2025年4月現在 博士課程後期3年に在籍中

受賞した研究内容について
バレエダンサーに多い前足部の障害について、エラー動作が関与しているとされながらも、これまではエビデンスを用いた説明ができていませんでした。そこで、これまでダンス医科学分野では利用されていなかったエコーシステムと動作解析システムの同期解析の手法を用いて、動作中の第1中根中足関節の可動性を調べました。本研究は、Scientific Reportsに掲載済みです(https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/88247)。
エディテージ・グラント2024大賞を受賞して
大学院生として応募できる研究のための助成金プロジェクトを探していた時に情報が目に入り、とりあえず出してみようかなと、そこまで狙って応募したわけではありませんでした。正直なところ、途中まで選考に残ることができたら、いつも利用させていただいている英文校正サービスの割引がいただけるというところを目指していました。そのため、受賞のご連絡をいただいた時には大変驚いたと同時に、応援していただけるんだととても嬉しく思いました。これまでの業績だけでなく、1人の人間として私の背景と今の研究活動のつながり、そして将来目指す先についての話を聞いてくださり、審査ながら貴重なコメントやご助言をくださった審査員の先生方、エディテージ・グラントの皆様に深く御礼申し上げます。実際に今回いただいた大賞(助成金)を用いて、現在海外での研修に励むことができています。多くのものを得る研修となっていますので、帰国後の研究の発展につなげることができると確信しています。
ご自身の研究について
普段は、理学療法士の目線で、足部障害に関する研究を行うことが多いです。ジュニア世代のアスリート、ダンサー、高齢者まで幅広く対象にしており、エコーシステムや動作解析システムを使って病態把握や障害発生メカニズムの解明の一助となるよう励んでいます。また、そのほかウィメンズヘルス分野の研究も合わせて行っており、アスリート/ダンサーのREDs(スポーツによる相対的エネルギー不足)や尿失禁症状に関する調査や測定を行い、怪我や生活の質(QOL)との関連を調べ、アスリートやダンサーに有益な情報を提供したいと考えています。そのほか、理学療法士としての勤務や、バレエやアメリカンフットボールなどのスポーツ現場にて、怪我予防のコンディショニング指導、受傷/術後の競技復帰サポート、試合帯同などの活動もさせていただいております。
ダンス医科学分野および足部の整形疾患に興味を持ったのは、自身が以前バレエダンサーを目指していたことから、国内のダンサーへの必要な情報提供やサポートに役立ちたいと考えたためです。一般的なスポーツとは違い、ダンスでは見た目の美しさを重視する点で特異的で、医療従事者や研究者がその点を理解したうえでダンサーにアプローチすることが重要だと考えています。国内外ともに、近年ではスポーツ医科学分野の発展が進んでいますが、ダンス医科学分野は比較的エビデンスがないとされてきた分野です。日本国内では、欧米諸国よりも本研究分野の研究者が少ない現状があり、研究手法の発展が他の分野よりも遅いのではないかと感じることもありました。私は理学療法士という立場にあり、また現在の所属先では様々なスポーツを対象に研究や現場での活動に励む理学療法士が切磋琢磨しています。また広島大学では、様々な分野の学科が同じキャンパス内に位置しており、広島大学病院の先生方との共同研究をさせていただく機会もいただくなど、大変恵まれた環境にあると考えています。他の研究で発展していた手法を応用し、ダンス医科学分野でも新たな知見を得ること、そして世界への発信に繋げることができれば、本研究分野の発展およびダンサーへの還元に役立てられると思い、現所属にてダンス医科学分野の研究を励みたいと思っています。
今後は、アスリートやダンサーを国内で育成し、活躍をサポートしていくうえで、健康を守りながら最高のパフォーマンスを発揮するための教育/指導方法に役立つ研究成果を報告したいと考えています。決して研究者の興味に留まるものではなく、スポーツ現場や臨床での研究疑問に沿い、当事者への還元までを視野に入れ、活動に励みたいと思います。
エディテージ・グラントに応募した理由
ホームページにて詳細を確認した際に、若手を対象にしていること、最終選考にて受賞できなくても途中まで選考に残ることができれば特典をいただけること、申請書類が一般的な研究計画ではなく、これまでの自身の背景と将来の展望を含めたエッセイ形式であること、これらのポイントで一度チャレンジしてみようと思いました。過去の受賞者の情報を確認してみたところ、文理問わず様々な分野の方が受賞されており、他にはない助成プログラムだと感じ、経験のためにも応募を決めました。
グラントへの応募にあたり、苦労したことや工夫したこと
周りに応募経験がある知人がいなかったため、手探りでの書類作成であったと振り返ります。型にとらわれないことを求められているとも感じていたので、素直に自分の思いをのせて作成するように意識しました。また、様々な分野の先生方に見ていただくこともわかっていたので、専門的な内容を詳細に書くことよりもわかりやすさを重視して作成した点が工夫したことかと思います。
エディテージ・グラントに応募してみて感じたこと
応募方法については、他のプログラムが研究計画と過去の業績を主に記載する印象ですが、エディテージ・グラントは自分自身の背景と取り組んでいる研究のつながり、研究に対する思いや若手研究者としての将来の展望に注目したエッセイ形式での書類作成という点が最も違うと感じるところだと思います。
応募書類の作成過程で自分自身についてきちんと整理しながら言葉にすることができたので、この過程自体が大変自分のためになったと感じています。応募の時点では、正直なところ全く期待はしていなかったのですが、審査の結果通知および次の審査案内のご連絡をいただくたびに、「読んでいただけた」「興味を持っていただけたのかもしれない」と嬉しく思っていました。面接審査の際に審査員の先生方にいただいたコメントやご助言は大変印象的なもので、これからも研究活動を続けていくうえで、しっかりと自分のなかに留めておきたいと思っています。セレモニーまでを通じて、このエディテージ・グラントに応募していなかったらお話する機会もなかったような他分野の研究者の方ともお話ができ、研究内容だけでなく、身を置いている環境など様々な情報の交換をしたり、刺激をいただくことができました。応募からセレモニーまでを通じて、「石原の研究を応援したい」と思ってくださる方がいると実感できたことが何よりもの喜びであり、励みとなっています。