若手研究者の挑戦を応援、分野を超えてつながる―「エディテージ・グラント2025 授与式&パーティー」レポート

2025年10月3日、「エディテージ・グラント2025 授与式&パーティー」を東京都港区のThe Place of Tokyo で開催しました。本イベントは、2025年4月の募集開始から約1年をかけて進めてきた「若手研究者助成金プログラム エディテージ・グラント2025」の授与式&パーティーです。

今年は、最優秀賞・大賞・各パートナー企業賞・次点受賞者を合わせて20名に総額800万円を助成。受賞者に加え、審査員、過去の受賞者、グラント申請者、アカデミアで活躍する研究者の皆様、そして本年度から参画いただいたアカデミスト株式会社、株式会社エマージングテクノロジーズの代表をはじめとするゲストが一堂に会し、温かく、かつ熱量の高い一夜となりました。

この記事では、「エディテージ・グラント2025」の概要とともに、授与式とパーティー当日の様子をダイジェストでご紹介します。

※当日の雰囲気をまとめたダイジェスト動画です。ぜひこちらも併せてご覧ください。

▶エディテージ・グラント2024の様子はこちら

若手研究者に「挑戦する自由」を提供するエディテージ・グラント

「エディテージ・グラント」は、若手研究者が自らの研究で社会にインパクトを与えようとする際に直面する「資金」と「機会」の不足を補うことを目的とした、エディテージ独自の助成金プログラムです。

2025年のプログラムでは下記の方を対象としました。

  • 2025年4月1日時点で満22〜39歳の研究者
  • 修士号またはそれに相当する高等研究課程を修了していること。
  • 応募書類及びエッセイに記載された研究活動は、過去3年以内に実施・管理されたものであること。

本グラントの特徴は、一般的な研究費の応募資格や制度上の制約から申請が難しい立場にある方や、研究テーマの性質上、従来の枠組みでは採択されにくいケースにある方、特定分野に偏った助成制度とは必ずしも合致しない研究を進めている方なども、応募できることです。

エディテージ・グラントは、研究分野やテーマの性質にかかわらず、若手研究者が基礎研究のスタートラインに立つための助走を支えることを目指しています。

20名に総額約800万円を助成 支援の輪がさらに拡大

2025年度は、支援の裾野を広げるべく、20名の若手研究者に総額約800万円を助成しました。

受賞区分
最優秀賞:大賞の中から1名(大賞としての100万円に加え、さらに100万円)
大賞:5名(各100万円)
アカデミスト賞:1名(25万円)
博士情報エンジン賞:1名(25万円)
次点:13名(各5万円+エディテージクーポン5万円分)

助成金は、論文執筆に限らず、調査・フィールドワーク・装置や試薬の購入・学会参加の旅費・アウトリーチ活動など、研究とその発信に関わる広い用途に自由に活用することができます。公的な研究費では用途やフォーマットが厳格に定められていることも多い中、エディテージ・グラントは、「使途は自由、報告義務なし」という特徴を維持し続けています。

大規模災害、宇宙・地球、医療、社会と人の物語まで 多様な研究テーマ

最優秀賞には、金沢大学附属病院 特任助教 米澤 宏隆氏が選ばれました。研究テーマは、「令和6年能登半島地震に関連する患者の搬送および診療情報を収集する後方視的多施設調査研究」。能登半島地震によってどのような患者が、どの医療機関で、どのような治療を、いつ・どの程度の期間受けたのか。そしてその後の高齢者施設入所の状況に至るまでを多施設で丁寧に追跡する研究です。
米澤氏は調査規模の拡大に伴う研究費の不足に直面していたこと、この助成をきっかけに「未来の大規模災害対策に資するエビデンスを残したい」という決意を語っています。

そのほか、大賞・各賞・次点受賞者の研究は、次のような多様な領域にわたっています。
• 地震学:
スロー地震のメカニズムに迫る実験研究
• 古生態学:
絶滅した日本の長鼻類の古生態を復元し、過去の環境変動を読み解く試み
• 工学・モビリティ:
身体動作を活用したパーソナルモビリティの研究開発により、「移動の自由」を広げる挑戦
• 医療と社会:
口唇口蓋裂をめぐる「顔を治すこと」の意味を問い、医療と社会の交差点を見つめ直す研究
• 教育・アウトリーチ:
高精細地形情報を活用した防災教育・災害の記録と記憶の継承
• 心理・健康格差:
歯科不安と健康格差を結ぶ「見えない鎖」を断ち切る行動変容アプリの開発
• 博士人材・地域科学:
地方での天文学アウトリーチ、職人技術の継承、博士人材のキャリア支援

自然科学から社会科学・人文科学に至るまで、「分野を問わないオープンな基礎研究グラント」というコンセプトが、今年も色濃く表れる結果となりました。

※受賞者20名の詳細なプロフィール・研究テーマ一覧は、こちらでご紹介しています。

企業パートナーとの共創で広がる「挑戦の輪」

2025年は、エディテージ単独の助成にとどまらず、若手研究者・博士人材の支援に取り組む2社とともにプログラムを実施しました。
アカデミスト株式会社(アカデミスト賞)
株式会社エマージングテクノロジーズ(博士情報エンジン賞)

アカデミスト株式会社代表柴藤氏は、「公的資金の申請書とは異なるエッセイというアウトプットに取り組むことで、研究者が自分の研究の意味や方向性を改めて見つめ直す機会になったはずだ」とコメントしています。また、「(研究費に加え、)自分の研究を言葉にして伝える経験自体が、研究を前に進める資産になる」というメッセージは、多くの参加者の心に残るものでした。

また、株式会社エマージングテクノロジーズ代表取締役社長深澤氏は、博士人材のキャリア支援に取り組む立場から、「公的な研究費や既存の支援制度だけでは拾いきれない、独創的な挑戦を支えるのが民間助成の役割」だと強調されました。博士課程進学を前向きに選択できる社会を広げたいという思いとともに、本グラントが受賞者・申請者のキャリアの一歩を後押しする場であり続けてほしい、という期待も寄せられました。

受賞者・過去受賞者・審査員・企業が交わる「ネットワーキングの場」としての授与式&パーティー

今年の授与式&パーティーは昨年に続き、参加者同士の交流を中心に据えて実施されました。東京タワー前に位置する The Place of Tokyo には、受賞者、審査員、過去の受賞者、やアカデミアに属するゲストの方々が集まり、キャリアや分野を問わず参加者間の交流が積極的に行われていました。

同じ分野の研究者同士が研究の進捗や将来の共同研究について語り合ったり、専門の異なる研究者同士が、研究を続ける中での苦労やフィールドならではの課題を共有したりする場面も見られました。

授与式では、最優秀賞・大賞・各賞受賞者や、各社代表・審査員の方からのグラントや受賞に対するスピーチも行われ、参加者全体で喜びや研究に対する想いを共有する機会にもなりました。

審査の舞台裏 公平性と多様性を支える審査員

2025年度も、カクタス・コミュニケーションズ代表取締役である湯浅 誠ほか、アカデミアの第一線で活躍する4名の審査員の方々にご協力いただきました。(所属・職務はグラント募集開始当時)

  • 東京大学 大学院教育学研究科 総合教育科学専攻(基礎教育学コース)教授
    隠岐 さや香氏
  • 九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 准教授
    岸村 顕広氏
  • 慶應義塾大学 医学部 整形外科学教室 特任講師
    早野 元詞氏
  • 東北大学大学院工学研究科 名誉教授、ISCフェロー
    原山 優子氏

審査は、応募エッセイによる書類選考に加え、ファイナリストへのオンラインインタビューを通じて行われました。研究の新規性・社会的意義・実現可能性といった観点に加え、「なぜこのテーマに取り組むのか」「どのような未来をつくりたいのか」といった研究者個人のビジョンも重視されました。

インタビューの場では各審査員から、研究を進めるにあたっての具体的なアドバイスや、若手研究者としてのキャリア形成に関するコメント、ぜひこの研究を続けてほしいという温かいエールが贈られ、単なる審査の場を超えた学びと対話の時間となりました。

約1年にわたる伴走としてのプログラム

エディテージ・グラントは、告知から選考、授与式に至るまで、1年がかりのプログラムです。その裏側では、審査プロセスや支援体制、など企画全体を毎年見直しながら、「より多くの若手研究者にとって意味のある支援にするにはどうしたらよいか」を模索し続けています。

すべての応募者の方を希望どおりに支援できるわけではないもどかしさを抱えつつも、次のような点を本プログラムにおいて重要視しています。

  • 受賞者には研究費と、分野を超えたネットワーク形成の機会
  • 申請者全員には、応募を通じて得た「自分の研究を言葉にする経験」という資産
  • そして、アカデミア全体には、「若手研究者支援の重要性」を発信し続けること

アカデミアにおけるエディテージ・グラントの役割

AI技術の進展により、研究のあり方や研究者を支える企業の役割は大きな変化を求められています。しかしエディテージは、引き続きエディテージ・グラントを通じて、自身の研究によって社会にインパクトを与えたいと願う若手研究者の挑戦を後押しすることで、これからも研究者コミュニティに貢献していきたいと考えています。

今回授与式に参加された受賞者・過去の受賞者の方々からは、「このグラントがあるからこそ、挑戦しようと思えた」「同世代の研究者とつながるきっかけになった」といった声を多数いただきました。また、参加した研究者の方々やパートナー企業からは、「エディテージだけでなく、さまざまな企業がこの輪に加わっていることに大きな意義を感じる」というコメントも寄せられています。

これからもエディテージは、研究者の皆さまに寄り添いながら、若手研究者が自由に挑戦できる環境を広げていくことを目指し、エディテージ・グラントの運営と支援のあり方を進化させてまいります。

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この記事を書いた人

2002年に設立された、カクタス・コミュニケーションズの主力ブランドであるエディテージの目指すところは、世界中の研究者が言語的・地理的な障壁を乗り越え、国際的な学術雑誌から研究成果を発信し、研究者としての目標を達成するための支援です。20年以上にわたり、190か国以上の国から寄せられる研究者の変わり続けるニーズに対応し、研究成果を最大限広く伝えられるよう、あらゆるサポートを提供してきました。
今日、エディテージは専門家によるサービスとAIツールの両方を用いて、研究のあらゆる段階で便利に、安心して使っていただける包括的なソリューションを提供しています。