エディテージ・グラント2024次点を受賞-福士 知愛さんにインタビュー

エディテージ・グラント2024にて次点に入賞した福士 知愛さんに、入賞した喜びやご自身の研究について、グラントに応募して感じたことなどを語っていただきました。

福士 知愛さんプロフィール
Chinari Fukushi


2018–2022 東北大学 理学部化学科
2022–2024 東北大学大学院 理学研究科化学専攻 博士前期課程
2024–現在 東北大学大学院 理学研究科化学専攻 博士後期課程 在学中(D2)

音楽を聴くのが趣味で、SiaやAURORAなどの洋楽を聴きながら論文を書いている。休みの日は漫画やアニメを見てリラックスしている。

Chinari Fukushi

受賞した研究内容について

「リチウムイオン内包フラーレン」というサッカーボール状の分子と金属とを組み合わせて、分子性の電子材料を創り出す研究をしています。リチウムイオン内包フラーレンは、現在知られている有機分子の中でもトップクラスの電子受容性能を持つため、太陽電池を始めとした様々な電子デバイスへの応用が期待されています。私の研究では、遷移金属化合物が持つ優れた光吸収特性に着目して、光を当てるだけで導電率を切り替えられる分子性のスイッチを開発しています。

エディテージ・グラント2024次点を受賞して

このたび,エディテージ・グラントの次点受賞を頂けたことに深く感謝申し上げます。また、書類・面接選考から授賞式に至るまで,選考委員や運営の皆様には大変お世話になりました。今回助成金を頂けたことで投稿論文の英文添削を充実させることができ、おかげさまで最初に投稿した論文がInside Front Coverとして採用されました(doi.org/10.1039/D4CC05485G)。今後もエディテージの英文添削を活用して論文執筆をしていこうと思います。

ご自身の研究について

新しい分子を創り出す研究をしているため、実験室に立って日々合成実験を繰り返しています。機能性を持たせるための分子をまずは紙の上で設計し、コンピュータシミュレーションを活用しながらそれらの合成経路を考え、複数の測定手法を用いて目的の分子が合成できているかを確認する作業が主です。

幼少期から化学の分野が好きで、よく図鑑を眺めている子供でした。高校生になって色々な化学分野に携わる教授陣の出張講演を拝聴する機会があり、その中で出会ったのがフラーレンでした。その特異な構造はさることながら、自然科学全般の多岐にわたる領域への応用可能性がある一方で未開拓の部分が多いことを知りました。そこから興味を持ち始めて東北大学へ進学し、最もブルーオーシャンであった現在の研究をスタートしました。

自分自身の研究分野に関しては、指導教員を始めとして様々な方と接する機会があるため理解・技術を深められる良い環境に恵まれていると思います。その一方で、自分の専門外の分野においては他の研究室・機関と連携を自由に取りづらく、研究者間ネットワークを広げることの難しさを痛感しています。

私の出身校には、里程標として「誰人天下賢」という、明治期のジャーナリスト・陸羯南の五言絶句の一節が掲げられています。彼が鞭撻した「天下賢」たる志を持ち続けることの重要性を研究人生の澪標として仰ぎ、今後も色々な性質・機能を持つ分子を創っていこうと思います。

エディテージ・グラントに応募した理由

エディテージ・グラントは、博士学生対象の研究助成金について情報収集をしている中で複数のサイトで紹介されていたことで知りました。募集要項を見ていて、「業績不問」かつ「使途が自由」というユニーク性に惹かれました。応募当時は学術論文や国際学会などの経験がなかったため、挑戦してみようと思いました。

グラントへの応募にあたり、苦労したことや工夫したこと

研究活動にかかるエッセイは何度か執筆したことがありましたが、研究課題のその先の将来まで見据えて何ができるか、なぜ実現できると考えられるかといった、「研究の発展性」について深く考えて書いた経験はなく、内容を考えるのに苦労しました。ただ、こういった項目があったからこそ、今の自分がやりたい研究をどのような方法で実施するか明確にイメージすることができたと思います。また、研究分野を問わないグラントであったため、書類・面接では専門用語をいかに表現するかが難しく、図や言葉での説明を工夫してイメージしやすいように心がけました。

エディテージ・グラントに応募してみて感じたこと

エディテージ・グラントは、他のプログラムに比べて業績が少ない若手研究者にフォーカスしている点を大きな違いとして感じました。多くの助成金プログラムではこれまでの業績が高く評価されることがほとんどだと思いますが、本グラントでは逆に業績の少ない人が優先されるという、若手研究者の将来性をしっかりと見てくれるところが魅力的だと感じます。また、エッセイの自由度も高く非常に書きやすいと思いました。

最初に本グラントを知ってオンラインイベントで説明を聞いていた時は参加人数も多く、正直自分が受賞できるとは思っていませんでした。ただ、募集要項や応募方法がわかりやすく、審査期間中は運営チームの方々の丁寧な連絡を頂けたことで挑戦する敷居が低かったと感じます。また、セレモニーでは多分野の研究者の方々と交流する機会を頂けて、これからの研究活動に対する意欲が刺激されるよい契機となりました。

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この記事を書いた人

2002年に設立された、カクタス・コミュニケーションズの主力ブランドであるエディテージの目指すところは、世界中の研究者が言語的・地理的な障壁を乗り越え、国際的な学術雑誌から研究成果を発信し、研究者としての目標を達成するための支援です。20年以上にわたり、190か国以上の国から寄せられる研究者の変わり続けるニーズに対応し、研究成果を最大限広く伝えられるよう、あらゆるサポートを提供してきました。
今日、エディテージは専門家によるサービスとAIツールの両方を用いて、研究のあらゆる段階で便利に、安心して使っていただける包括的なソリューションを提供しています。