
エディテージ・グラント2026
Celebrating the 2026 Awardees
未来を切り拓く20名の研究者たち
エディテージ・グラント 2026では、未来を切り拓く20名の研究者が選出されました。本ページでは、受賞者一人ひとりの研究とその研究が目指す未来をご紹介するとともに、エディテージ・グラント2026の取り組みや授与式の様子を記録しています。
応募機関

122
大学/大学院

3
社

17
医療機関

13
研究機関

1
その他
エディテージ・グラントとは
エディテージ・グラントは、自身の研究を通じて社会にインパクトを生み出したいと考える若手研究者を支援するプログラムです。研究資金の提供に加え、メンターシップやキャリア支援、研究成果を社会へ届けるための情報発信などを通じて、研究者の挑戦と成長をサポートしています。
Editage Grant 2026の支援内容
◆大賞受賞者 5名
1名につき100万円を贈呈し、そのうち1名には最優秀賞としてさらに100万円(合計200万円)を贈呈。
◆次点受賞者 15名
1名につき現金5万円と5万円相当のエディテージ・ポイント(合計10万円相当)を贈呈。
◆協賛企業賞
次点受賞者15名の中から、「アカデミスト賞」1名、「博士情報エンジン賞」1名を選出し、それぞれ25万円を贈呈。
入賞者20名への研究支援
入賞者全員に、「Paperpal」をはじめとするAIツールの有料版ライセンスを1年間提供。
一次選考通過者への特典
一次選考を通過した方全員に、エディテージの割引クーポンと「Paperpal」有料版の無料トライアルをご提供。
Partners
Editage Grant 2026では、研究者支援の取り組みに賛同いただいた2社に協賛いただいています。

アカデミスト株式会社

株式会社エマージングテクノロジーズ
2026 Awardees
エディテージ・グラント2026に選ばれた20名の研究者と、その研究をご紹介します。
一人ひとりの研究内容や研究に取り組むきっかけ、研究が目指す未来、社会へのインパクトを通して、それぞれの研究が切り拓こうとしている未来をご覧ください。
Research × Concept Art
エディテージ・グラント2026では、新たな取り組みとして、受賞者が自身の研究を紹介するコミュニケーションツールとなるオリジナルのトレーディングカードを制作しました。
カードには、受賞者一人ひとりの研究内容をもとに制作したコンセプトアートを使用しています。専門性の高い研究の魅力や、その研究が目指す未来をビジュアルで表現することで、研究をより多くの人に身近に感じてもらうことを目指しています。
コンセプトアートは、各受賞者の研究紹介とともに掲載しています。
受賞者詳細
最優秀賞

川合 菜月(かわい なつき)
所属:ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)/長崎大学 熱帯医学・グローバルヘルス研究科 Joint PhD Programme 博士課程学生(Joint PhD Candidate)
研究テーマ:「生きた教材」と呼ばれる日本の学校給食の知恵を活かし、国際援助に依存せず地域の農業と学校を繋ぐ持続可能な学校給食モデルを、アフリカで設計・検証する研究を行っています。栄養課題が最も深刻な西中央アフリカ地域を対象に、輸入食材ではなく地元で採れる食材や地域の知恵、文化的背景を組み合わせ、子どもたちの栄養改善と地域の農業を同時に支える仕組みを作ることを目指しています。
研究紹介・動画を見る(クリックすると開きます)
研究について:
本研究は、子どもの栄養不足が深刻なセネガルにおいて、家庭の食事で不足する栄養を給食で補う地産地消型のモデルの設計と、その実装条件の解明を目的としています。現在の給食は輸入食材に頼り、地域の伝統食材が活用されていません。第一段階では、家庭の食事実態から不足栄養素を特定し、栄養・環境・経済の三側面から地域食材を活かした献立案を構築します。第二段階では、調理担当者や農家などへの聞き取りから、導入時の障壁と解決策を検討します。科学的な設計と現場の実践を統合し、他の途上国へも広がるモデルを目指します。
研究の背景と課題:
アフリカの学校給食の多くは外国からの支援で成り立っており、支援が減れば給食が止まる現状があります。セネガルでは給食提供率が15%未満に低迷し、輸入食材への偏りから低栄養と肥満が同時に起きています。国内でまだ活用されていない伝統食材を取り入れ、支援に左右されず地域の力で続く仕組みづくりが必要です。
研究が目指す未来:
セネガルでは、学校給食を国の制度として整える動きが始まっています。本研究成果をその制度づくりにつなげ、一時的な食糧支援ではなく、地元の農業と学校が子どもの健康を支える給食を根づかせたいと考えています。子どもたちが健やかに成長し、地域が潤う。その循環を、同様の課題を抱える途上国の国々へ広げていきます。
受賞者からのメッセージ
「アフリカには食べ物がない」。その印象とは裏腹に、現地には見過ごされた豊かな食文化があります。食を通じた幸せは日本もアフリカも同じ。健康と食文化を守る給食を、現地の人たちと一緒に作っていきたいです。
大賞

立田 渉(たつだ わたる)
所属:OpenAI Forward Deployed Engineer
研究テーマ:古代の人々はいかに巨大な記念碑を建設したのか、メキシコのマヤ低地に位置するアグアダ・フェニックス遺跡の発掘調査を通じて、大規模な建設活動の解明を目指しています。
研究紹介・動画を見る(クリックすると開きます)
研究について:
メキシコのアグアダ・フェニックス遺跡の大基壇は、中米で最も古い記念碑建築の1つで、エジプトのクフ王のピラミッドを上回る体積を有しています。ところが、この建物が造られた時代には、明確な王権や顕著な身分差が存在した証拠は見つかっていません。では、誰がどのように多くの人々を集め、大基壇を完成させたのでしょうか。私は現地での発掘調査から建設時期や人々の活動を調べると同時に、地形解析やシミュレーションを通じて人々の建設活動を検証し、こうした協働が中米の初期文明の形成において果たした役割を探究しています。
研究の背景と課題:
従来、記念碑の建設には、定住社会や階層的な権力による大規模な労働動員が必要だと考えられてきました。しかし、アグアダ・フェニックス遺跡では大基壇が存在する一方、明確な王権や定住、不平等の証拠が見つかっていません。人々がどのように協働したのかを解明するには、発掘調査による一次資料が不可欠です。
研究が目指す未来:
本研究は、強制的な権力だけでは説明できない大規模な集団活動の仕組みを検証し、古代の人々がどのように協働してきたのかを解き明かします。そして古代の人々が互いを受け入れ、協働してきた可能性を示すことで、分断が加速する現代社会において、共創社会を実現するための手がかりを提示することを目指します。
受賞者からのメッセージ
私はメキシコで遺跡を発掘しています。海外での考古学調査は、安全や成果が保証されず、粘り強さが必要です。エディテージ・グラントは分野を問わず、用途や期限の制限もない助成です。ぜひ挑戦してみてください!
大賞

山本 峻大(やまもと しゅんた)
所属:慶應義塾大学医学部呼吸器内科 大学院生
研究テーマ:呼吸音をAIで解析し、努力を要する呼吸機能検査に代わって気流閉塞を簡便に検出し、COPDの早期発見につなげるスクリーニング技術の開発
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研究について:
喘息やCOPDの診断に使う呼吸機能検査は、患者が全力で息を吐き、専門の技師が付き添う必要があります。そのため、設備や人員が限られる健診や診療所では十分に実施されず、症状が出にくいCOPDの発見が遅れる一因となっています。私は、胸に聴診器を当てて得られる呼吸の音をAIで解析し、息の通りにくさを簡便に見つける技術を研究しています。将来は、全力で息を吐く難しい検査を受けなくても、短時間の測定で詳しい検査が必要な人を見つけ、禁煙や治療に早くつなげられる仕組みの実用化を目指しています。
研究の背景と課題:
喘息やCOPDの診断には呼吸機能検査が必要ですが、全力で息を吐く必要があり、専門技師や設備も要するため、健診や診療所では十分に普及していません。特にCOPDは初期症状が乏しいため、早期発見と治療につなげる簡便な検査が必要です。
研究が目指す未来:
健診や診療所で、聴診器を当て、短時間の呼吸音を測定するだけで肺の異常を見つけ、詳しい検査が必要な人を早期に医療へつなげられる社会を目指します。COPDを症状が現れる前に発見し、禁煙や治療によって肺機能の低下を防ぎ、住む場所にかかわらず呼吸器医療を受けられる未来を実現します。
受賞者からのメッセージ
呼吸器の病気は、症状が現れる前に見つけることが大切です。呼吸の音をAIで読み解き、誰もが身近な場所で早期発見の機会を得られる未来を、日本から実現したいと考えています。
大賞

FANG Tong
所属:大阪公立大学 特任研究員
研究テーマ:多硫化カリウム融液を用いた常圧合成による新規カリウムイオン伝導性硫化物固体電解質の創製
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研究について:
全固体電池は安全な次世代蓄電池として期待されている。しかしその心臓部であるカリウムイオン伝導性固体電解質の報告は世界でわずか数例に限られる。従来法では原料を真空封管する必要があり、合成条件と探索範囲が制限されてきた。本研究では多硫化カリウムの融液を溶媒兼原料として用い、封管なしの常圧合成法を世界で初めてカリウム系に適用した。これにより従来の高温法では得られない新しい結晶構造を持つ準安定相の発見に成功し、新材料探索の道を切り拓いた。
研究の背景と課題:
リチウムの資源制約を背景に、資源豊富なカリウムを用いた全固体電池の開発が求められている。しかしカリウム系固体電解質の報告は世界で数例にとどまり、材料探索は始まったばかりである。従来の合成法は真空封管が必須で、条件の自由度が低く、未知の結晶相へのアクセスが困難であった。
研究が目指す未来:
本研究の多硫化カリウム融液合成法が確立されれば、これまで到達できなかった未知の結晶相を自在に作り分けることが可能になる。高いイオン伝導性を持つ新材料の発見と全固体カリウム電池の実現により、安全で低コストな大型蓄電技術の基盤を築きたい。
受賞者からのメッセージ
カリウムイオンは大きい。だから誰も期待しなかった。でも大きいからこそ、硫黄と鎖をつくり、他の人が通れない道が生まれました。この白紙の地図を、もっと速く埋めていきます。
大賞

加賀谷 尽(かがたに じん)
所属:慶應義塾大学病院 呼吸器内科 助教
研究テーマ:自然免疫の過剰な反応を抑える新たな制御機構を明らかにし、治療につなげる研究
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研究について:
免疫には、病原体を排除する「アクセル」と、行き過ぎた反応を抑える「ブレーキ」の両方が必要です。獲得免疫では、Tregという細胞がブレーキ役を担うことが知られています。一方、素早く反応する自然免疫では、こうしたブレーキの仕組みはまだ十分に分かっていません。私は、炎症を促す自然リンパ球ILC2に着目し、この細胞を手がかりに自然免疫のブレーキとなる仕組みを明らかにし、新しい治療につなげる研究を進めています。
研究の背景と課題:
近年、喘息などのアレルギー疾患では、獲得免疫だけでなく、ILC2などが担う自然免疫も病態の悪化に重要な役割を果たすことが分かってきました。しかし、その過剰な反応を十分に制御する方法は未だ確立されておらず、新たな治療の考え方が必要です。
研究が目指す未来:
自然免疫の「ブレーキ」を自在に働かせる仕組みを明らかにし、喘息をはじめ、現在の治療では十分にコントロールできない全身のさまざまな炎症性疾患への応用を目指します。長く病気に苦しむ患者さんが、病気に奪われた日常や人生を取り戻せる未来につなげたいと考えています。
受賞者からのメッセージ
まだ誰も十分に解き明かしていない「自然免疫のブレーキ」。簡単な挑戦ではありませんが、一歩ずつ答えに近づき、新しい医療の可能性を切り拓いていけたら嬉しいです。
アカデミスト賞

Min Soo SHIN
所属:筑波大学 / 産業技術総合研究所 博士課程学生
研究テーマ:和紙や韓紙などの伝統紙から非破壊的に古代DNAを抽出し、次世代シーケンシングを用いて東アジアにおける製紙技術の伝播史を科学的に解明する研究。
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研究について:
私たちの生活に身近な「紙」は、作られた時代や地域の気候、職人の技術を記憶する「生物学的な記録媒体」です。しかし、現在デジタル化や原料植物の交雑により、その固有の歴史的価値が失われつつあります。本研究では、紙の繊維の中に残っている微量のDNAを取り出し、最新の遺伝子解析装置で読み解きます。この手法により、紙の原料となった植物が昔どのようなルートで海を渡り伝わってきたのかを、歴史文献の解読ではなく、科学的な証拠に基づいて客観的に検証します。
研究の背景と課題:
古代の製紙技術の起源や伝播ルートの研究は、これまで歴史的な文献の解読に頼ってきました。しかし文献には記録の欠落や書き手の主観が混じるため、客観的な検証が困難です。さらに現在、純粋なカジノキ原種は交雑により固有の遺伝情報を喪失する危機に瀕しており、早急な科学的保存とデータの解明が不可欠です。
研究が目指す未来:
本研究により、気候変動や近代化の波で消えゆく人類の貴重な文化遺産を、客観的な事実として次世代へ継承することが可能になります。歴史学と分子生物学を融合した「考古遺伝学」という新たな学問分野を確立し、東アジアから世界へ広がる人類の技術交流ネットワークの全貌を科学的に明らかにしていきます。
受賞者からのメッセージ
衰退しつつある「紙」は、人類の歴史を記憶する生きたタイムカプセルです。不可能とされた伝統紙からのDNA抽出を通じ、文系と理系の壁を越えて新たな歴史の真実を紐解く私の挑戦にぜひご注目ください。
博士情報エンジン賞

八重樫 健吾(やえがし けんご)
所属:北海道大学大学院環境科学院 博士後期課程
研究テーマ:持続的な漁業を実現するために必要な魚を必要な分だけ獲る選択的漁獲を可能にする制御技術の開発
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研究について:
本研究は、海の中で直接見ることが難しい漁網の形や動きと、網に対する魚群の反応をコンピュータ上で再現し、漁獲をより正確にコントロールする技術の開発を目指すものである。将来は、操業中の網や魚群の状態をリアルタイムに把握し、漁業者の経験や勘をデジタル技術で支援することで、「必要な魚を必要な分だけ獲る」漁業を実現したい。これにより、乱獲や混獲を減らし、水産資源の保全と漁業者の負担軽減を両立し、持続可能な水産業と日本の豊かな魚食文化を次世代へつなぐことを目指している。
研究の背景と課題:
世界的な水産物需要の増加に伴い、乱獲や混獲による水産資源の持続性低下が課題となっている。従来の選択的漁獲では漁具の複雑な水中挙動や魚群の反応を十分に考慮できないため、漁具動態と魚群行動を統合したシミュレーションによる高精度な漁獲制御技術の確立が求められる。
研究が目指す未来:
網の動態と魚群行動をリアルタイムに把握・予測し、漁業者の経験をデジタル技術で支える漁業の実現を目指す。必要な魚を必要な分だけ獲ることで、資源を守りつつ操業負担を軽減し、持続可能な水産業と豊かな食文化を将来世代へつなげたい。
受賞者からのメッセージ
水産分野の研究では、生物的な研究だけでなく、漁網や生簀網の動態の解析といった物理的な側面からの研究も重要です。近年の自然環境の変化に対応するために、デジタル技術を用いた技術革新を目指しています。
入賞

大西 卓磨(おおにし たくま)
所属:国立病院機構埼玉病院小児科 小児科医師
研究テーマ:川崎病はなぜ発症し、なぜ一部の子どもだけが重症化するのか ― 双子・きょうだいの「不一致ペア」を用いた遺伝・環境・感染トリガーの分離
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研究について:
川崎病は、主に乳幼児がかかり全身の血管に炎症が起きる病気です。心臓の冠動脈に瘤ができる後遺症を負うお子さんもいます。原因を探すとき、これまでは患者と血縁のない健康な子どもを比べてきました。しかしその方法では遺伝も家庭環境も違うため、差が見つかっても引き金なのか元々の違いなのか区別できません。そこで私は比較の相手を変えます。発症した子と、発症しなかったその双子・きょうだい。二人は多くを共有するため共通の背景は打ち消し合い、違っていた要因だけが残ります。
研究の背景と課題:
日本は川崎病の罹患率が世界最多で、年間約15,000人が発症します。季節性や流行があり、感染が引き金であることはほぼ確実ですが、原因となる病原体は明らかになっていません。遺伝・環境・感染が絡み合い、その寄与を分けて取り出す方法がなかったからです。
研究が目指す未来:
引き金が特定できれば、発症してから治すのではなく、発症を防ぐ道が開けます。重症化しやすい子どもを早く見分け、治療を強めることもできます。日本で見つかった病気の原因を日本で解き明かし、冠動脈後遺症を負う子どもを、世界中で一人でも減らしたい。
受賞者からのメッセージ
小児科医として、子どもたちを苦しめる原因不明の病気の謎を解き明かしたい。
入賞

島袋 朱里(しまぶくろ あかり)
所属:筑波大学システム情報工学研究群 博士後期課程1年
研究テーマ:新たな睡眠支援手法の提案に向けて、リアルタイムに計測した心拍よりも少し遅いテンポの心音を提示し、意識的に呼吸や心拍を整えようとしなくても、自然に心身の落ち着きを促すマインドフルネス体験のデザインについて研究しています。
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研究について:
眠れないとき、「早く眠らなければ」と意識するほど頭が冴えてしまうことがあります。そこで私は、本人の心拍に合わせながら少し遅い心音を聞かせるシステムを開発しています。音を自分の心拍のように感じることで、呼吸法などを頑張って行わなくても、自然に身体へ意識が向き、落ち着いた状態へ移行できる可能性があります。これまで120名規模の実験で内的集中や主観的なマインドフルネス状態との関係を確認しました。現在は心拍変動や脳波なども用い、その仕組みと入眠支援への応用可能性を検証しています。
研究の背景と課題:
入眠困難では、「眠れない」という不安や身体への過度な注意が覚醒を高め、さらに眠りにくくする悪循環が起こります。マインドフルネス等は有効ですが、呼吸や心拍を意識的に整える努力自体が負担となる場合があります。そこで、頑張らなくても自然に落ち着ける支援が必要です。
研究が目指す未来:
将来は、特別な装置や難しい訓練を必要とせず、スマートフォンやウェアラブル機器で日常的に使える睡眠支援へ発展させたいと考えています。眠ろうと頑張るのではなく、自分の身体感覚を手がかりに自然な眠りを取り戻し、不眠に伴う生活の質の低下や社会的負担の軽減につなげることを目指します。
受賞者からのメッセージ
「眠るために頑張らなくてよい」睡眠支援を目指しています。音と身体感覚の錯覚を活用し、薬物療法や本人の努力だけに頼ることなく、不眠の悩みを軽減できる社会の実現を願っています。
入賞

松岡 拓実(まつおか たくみ)
所属:名古屋大学 工学研究科 物質プロセス工学専攻
産業技術総合研究所 マルチマテリアル研究部門 センシング材料研究グループ 博士後期課程3年
研究テーマ:溶液プロセスによるナノ結晶創製と、生体ガス診断に向けた高感度ニオイセンサの開発
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研究について:
人の呼気や皮膚からは、健康状態や疾患と関係するさまざまなガスが放出されています。しかし、それらの多くは極めて低濃度で存在し、さらに呼気は高湿度であるため検出が困難です。私はセンサ基板上に酸化物半導体ナノクリスタルを直接成長させる独自の材料技術を開発し、従来より高感度かつ高耐湿なガスセンサを実現しています。この技術により、糖尿病や代謝状態の評価などに活用できる非侵襲診断デバイスの実現を目指しています。
研究の背景と課題:
高齢化や医療資源の不足により、誰もが容易に健康状態を把握できる診断技術の重要性が高まっています。呼気や皮膚ガスを用いた診断は、身体的負担が少ない有望な技術ですが、疾患と相関性のある生体ガスは極微量かつ高湿度環境中に存在するため、高精度に検出できるセンサの開発が求められています。
研究が目指す未来:
ナノ結晶の直接成長技術を発展させ、生体ガスを高精度に検知できる次世代センサを実現し、採血や大型検査機器に頼らず、誰もが日常的に健康管理できる社会を目指しています。病気の早期発見や健康モニタリングを可能にし、人々の健康寿命の延伸と医療負担の軽減に貢献したいと考えています。
受賞者からのメッセージ
この研究は、これまで出会ったすべての方々の支えの上に成り立っています。ナノ結晶の自由自在な材料設計を通じて、ニオイセンサの社会実装と新たな応用開拓に挑戦していきます。
入賞

松田 汐利(まつだ しおり)
所属:東京科学大学 総合研究院 未来産業技術研究所 助教
研究テーマ:蛍光標識した細胞から発せられる光を3次元観察するための計測技術に関する研究
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研究について:
生体機能は、複数の駅(細胞)が路線でつながり、都市全体の交通網が成り立つように、さまざまな細胞がつながり、相互に作用することで成り立っている。そのため、生体機能を解明するには、限られた範囲だけでなく、広い範囲に存在する細胞を観察し、細胞同士の位置関係やつながりを捉えることが重要である。本研究では、蛍光標識した細胞から発せられる光を3次元的に観察するための計測技術を開発する。これにより、これまで捉えることが難しかった広い範囲の細胞を可視化し、細胞同士のつながりや働きを理解することを目指している。
研究の背景と課題:
細胞を広い範囲で観察する際の大きな障壁となるのが「光の散乱」である。細胞や組織の内部では、光がさまざまな方向へ散らばるため、蛍光標識した細胞から発せられる光を正確に捉えることが難しい。そのため、散乱光の影響を低減させ、広範囲の細胞を3次元的に観察できる技術が必要とされている。
研究が目指す未来:
高性能な顕微鏡には、高価で、操作が複雑で、大型であるといった課題があります。本研究で確立する技術をもとに、低コストで小型かつ扱いやすく、誰もが手にしやすい顕微鏡の実現を目指します。これにより、将来的に多くの人々が高度な観察技術を利用でき、生体機能の理解に関する研究を加速する社会の実現に貢献します。
受賞者からのメッセージ
受賞にあたり、研究を支えてくださった方々に感謝いたします。この研究は一人ではできず、多くの方に支えられています。皆様も周囲への感謝を忘れず「ありがとう」を言葉にして伝えることを大切にしてほしいです。
入賞

富本 佳奈(とみもと かな)
所属:岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 医歯薬学専攻 大学院生
研究テーマ:末梢から始まる神経変性疾患、特にパーキンソン病の病態解析とその保護、治療戦略の創出
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研究について:
最近の研究では、パーキンソン病は脳の神経変性に先行して末梢、特に腸管での神経変性が起きる人もいることがわかっています。そのため、腸管でパーキンソン病の「始まり」を捉えることが大切になります。そこで私たちは、疾患モデル動物や胎仔由来の初代培養細胞を使用し、腸管で起きている反応を見ています。腸内細菌や炎症細胞、腸管神経叢と腸管グリアなど、さまざまな視点から腸管先行性神経変性疾患の病態機序を探っています。また、腸管で起きた変性がどのようにして脳に伝達するのかも今後検討していく予定です。
研究の背景と課題:
末梢、特に腸管症状が起きてからパーキンソン病と診断されるまでに10年以上もかかる人がいることがわかっています。この長い期間の初期段階から治療を始めると病気の進行を抑えられたり、病気自体が治る可能性もあると考えています。
研究が目指す未来:
現状の医療でのパーキンソン病の治療は、減少した神経伝達物質を補填する対症療法しかありません。病気を治す疾患修飾療法の道を切り開くことができると、より早期からの検査法、治療法を使うことができて、健康寿命の延伸につながります。
受賞者からのメッセージ
将来、パーキンソン病になる人は増えていくと思います。高齢化とともに加齢関連疾患、神経変性疾患の罹患者数は増加していく一方です。他人事とは思わず、少しでも病気のことを知って欲しいと思います。
入賞

Wai Cheng WONG
所属:The University of Osaka PhD Student
研究テーマ:ショウジョウバエの脳非対称多型が維持される機構について、異なる遺伝基盤と生態学的トレードオフの観点から解明する研究。
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研究について:
人間の右利き・左利きのように、ショウジョウバエの脳にも構造の左右差(非対称性)に多様性(多型)が存在します。通常、自然選択により有利な型へ統一されやすいにもかかわらず、なぜ多様な型が共存し続けるのかは未解明でした。本研究では、異なる脳の型がそれぞれ独自の遺伝的背景を持つこと、そして環境適応における長所と短所(生態学的トレードオフ)を持つことに着目し、集団内で脳の多様性が長期的に維持される進化メカニズムを解明します。
研究の背景と課題:
生物の集団において、脳構造や行動の多様性がどのように維持されるのかは進化生物学の大きな謎です。脳の非対称多型は単一の遺伝要因だけでなく、環境適応との兼ね合いが関与すると考えられますが、その具体的な遺伝基盤と生態学的維持機構を結びつける実証的理解が不足しており、解明が求められています。
研究が目指す未来:
脳の多様性を支える遺伝的・生態学的基盤の解明は、生物が変化する環境に適応する原理の深い理解につながります。将来的には、ヒトを含む動物の個性や認知機能の多様性が生まれる進化学的ルーツの理解を深め、神経科学や多様性を尊重する社会づくりへの知見の還元に寄与します。
受賞者からのメッセージ
小さなハエの脳の左右差から、生命が多様性を維持する普遍的な仕組みに迫っています。「違い」が存在し続ける進化の面白さを、遺伝と生態の両面から解き明かしたいです。
入賞

米谷 雅俊(こめたに まさとし)
所属:鎌倉市立腰越中学校、神奈川県立鎌倉高等学校 非常勤講師
研究テーマ:相模湾真鶴沿岸で進む海藻相の貧困化(磯焼け)と南方系ホンダワラ類の北上定着を記録し、水温上昇との関係および南方系種による新たな藻場形成の可能性を検証する研究。
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研究について:
神奈川県真鶴町の海では、正反対の変化が同時に起きています。かつて190種以上あった海藻は「磯焼け」で激減し、約40種にまで減少しました。藻場は魚介類の産卵場でもあり、喪失は漁業に打撃を与えます。一方、沖縄や九州にしかいなかった南方系の海藻(ホンダワラ類)やサンゴが真鶴で見つかり、海水温上昇による海の熱帯化を示しています。本研究では海藻相の変化と水温の関係を調べるとともに、北上した南方系海藻が新しい藻場を形成できるかを、培養や着底実験で確かめています。
研究の背景と課題:
真鶴沿岸では磯焼けにより海藻が激減し、藻場を産卵場とする漁業資源が失われつつある。同時に南方系海藻の北上定着も確認され、海水温上昇による海の熱帯化が疑われる。しかし、海藻相の変化の記録や南方系ホンダワラ類の生態学的データは乏しく、科学的検証が急務となっている。
研究が目指す未来:
海の変化を正しく捉え、南方系海藻によって新たな藻場を形成するという選択肢を示すことで、磯焼けからの回復と漁業の再生に貢献したい。真鶴町立博物館の学芸員となって研究を継続し、市民が海を自分事として考える海洋リテラシーを育み、変化する海と共生する地域社会の実現を目指す。
受賞者からのメッセージ
真鶴の海は今、大きく姿を変えています。この変化を記録し、伝え、次の世代につなぐことが私の使命だと思っています。ぜひ一緒にこの海の未来を考え、見守ってください。
入賞

山形 海斗(やまがた かいと)
所属:広島大学大学院先進理工系科学研究科 特任助教
研究テーマ:中大規模木質構造の安全かつ合理的な設計に向け、木材・接合部のせん断性能に関する基盤データを蓄積するとともに、接合部を簡易に評価できる新たな試験方法を提案しています。
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研究について:
木質構造では、木材同士をつなぐ「接合部」に地震時のせん断力(ずれさせる力)が集中します。本研究では、この接合部のせん断性能を簡便に検証できるよう、力の伝達を模擬した新たな材料試験方法を提案しています。対象は、大型ネジや多数本のピンで力を伝える、通常の材料試験では扱えない接合部です。試験方法の提案に加え、せん断抵抗が生じる仕組みの解明や、より小さな試験でも性能を正確に評価できる手法の確立を目指しています。複数の試験方法の比較、多様な計測、コンピュータ解析を組み合わせ、多角的に取り組んでいます。
研究の背景と課題:
中大規模木質構造の建設が進む中、木材のせん断破壊やせん断性能が構造設計における部材断面を左右する懸念が高まっています。しかし木材・接合部のせん断性能は未解明な点が多く、現状では大きな安全率を見込んだ設計に留まっています。せん断抵抗機構の解明は、設計の安全性と合理性の両立に不可欠です。
研究が目指す未来:
本研究は、学術的には木材の材料学的知見の蓄積と物理現象の解明に、社会的には中大規模木質構造の合理的な設計に寄与します。せん断性能の解明により過大な安全率を緩和できれば、大空間を有する木造建築の実現が容易になり、脱炭素社会に向けた都市の木造化・木質化を後押しできると考えています。
受賞者からのメッセージ
木材のせん断性能は、材料学と建築構造学の境界にある魅力的なテーマです。両分野をつなぐ視点から解明を進め、より大きく、より安全な木造建築が当たり前に建てられる未来に貢献したいと考えています。
入賞

Donny LUKMANTO
所属:筑波大学(医学医療系) 特任助教
研究テーマ:ダイレクトリプログラミングによる緑内障視神経再生治療法の開発
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研究について:
網膜は光を電気信号に変換して脳へ伝え、視覚を成立させます。哺乳類では網膜神経の再生は起こりませんが、魚類などでは「ダイレクトリプログラミング(脱分化を経ずに、ある細胞を別の細胞へ直接転換する仕組み)」によって神経を再生できます。私はこの技術を応用し、将来的には哺乳類の網膜でも神経を再生させ、失われた視機能を取り戻す手法の開発を目指しています。
研究の背景と課題:
緑内障は、網膜神経節細胞(RGC)の喪失により視覚障害を引き起こす、日本における中途失明原因の一つです。既存の治療法は進行抑制にとどまり、失われた視機能を回復させることはできません。高齢社会においてQOLを維持するため、損傷したRGCを根本的に再生させる技術の確立が急務です。
研究が目指す未来:
本研究は、低分子化合物を用いた細胞変換により、一度失われた視神経を安全に再生する技術の開発を目指しています。将来的には、緑内障治療を単に病気の進行を遅らせるものから、視機能を回復させる医療へと変革し、患者が美しい世界を再び見られるようにすることを目指します。
受賞者からのメッセージ
視力は決して当たり前のものではありません。緑内障や加齢で視力を失う人々を救うため、網膜再生に挑んでいます。誰もが希望ある未来を共に見つめられる社会を創りましょう!
入賞

工藤 綾乃(くどう あやの)
所属:麻布大学 獣医学部 小動物外科学研究室 助教
研究テーマ:獣医療従事者の吸入麻酔ガス曝露の実態を評価し、現場で実践可能な曝露低減策と対策指針の確立を目指す。
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研究について:
動物の全身麻酔では麻酔器や回路からの漏れ、麻酔後の呼気により、獣医療従事者が余剰麻酔ガスを吸入してしまう現状があります。しかし、獣医療では動物の安全確保が優先され、曝露対策は後回しにされています。本研究は、麻酔中の曝露量を測定し、麻酔方法、作業工程、換気・排気設備との関連から曝露しやすい場面を明らかにします。さらに、機器の点検や局所排気などの対策前後で曝露量を比較し、現場で実践できる低減策を検証します。成果をチェックリストと対策マニュアルにまとめ、全国の獣医療現場で活用できる形で公開します。
研究の背景と課題:
獣医療では全身麻酔が日常的に行われる一方、余剰麻酔ガスに獣医療従事者が曝露するリスクがあります。しかし国内では、曝露量や健康影響の実態、有効な対策に関する知見が極めて限られています。動物だけでなく、動物を守る人の健康も守るため、科学的根拠に基づく曝露対策の確立が必要です。
研究が目指す未来:
「麻酔ガスの臭いがするのは当たり前」という現状を変え、獣医療従事者が安心して働き続けられる環境を実現したいと考えています。研究成果を全国の動物病院で活用できる曝露対策のスタンダードへ発展させ、「動物を守る人を守る」ことが獣医療の新しい常識となる未来を目指します。
受賞者からのメッセージ
動物の命を守る獣医療従事者自身も、安全に継続的に働ける環境を目指したいと思っています。吸入麻酔ガス曝露に対する認知と対策を、研究と教育の力で日本の獣医療に根付かせたいと考えています。
入賞

丸山 莉生(まるやま りお)
所属:理化学研究所 環境資源科学研究センター 細胞機能研究チーム 東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻 博士後期課程1年
研究テーマ:針葉樹の不定胚形成誘導過程におけるトランスクリプトーム解析および形質転換体の機能解析により、制御因子を特定する。
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研究について:
植物は、傷害などを契機に体細胞が分化全能性を回復し、器官や個体を新たに作り直す高い再生能力を持つ。中でも、受精を経ずに体細胞から胚を新生する不定胚形成は、植物に特徴的な再生様式である。針葉樹の不定胚形成において、その分子機構はほとんど分かっていない。本研究では、スギの不定胚を誘導する安定した実験系を用いて、誘導の各段階で働く遺伝子をRNA-seqで網羅的に調査する。さらに、候補遺伝子を過剰に働かせたり機能を失わせたりして、不定胚形成への影響を検証し、針葉樹の再生を制御する因子の特定を目指す。
研究の背景と課題:
予備解析から、被子植物で不定胚形成を担うLEC1/LEC2、BBM等の遺伝子に関して、針葉樹で明確なオルソログが存在しないことが判明した。これは、針葉樹は被子植物とは異なる分子経路で全能性を再獲得する可能性を示す。その分子機構解明にはゲノム情報と形質転換系が整備されたスギを用いた本研究が必要である。
研究が目指す未来:
本研究は、植物の再生機構は普遍的であるという通念に挑み、系統群ごとに異なる全能性獲得原理を明らかにする。また、針葉樹に特異的な因子の同定により、再生を誘導できる組織や遺伝子型が限られる現状を打破し、成木組織からの再生やそれに基づく優良ゲノム編集個体の作出につながると期待される。
受賞者からのメッセージ
針葉樹は、私たちがまだ知らない独自の再生の仕組みを持つ可能性があります。モデル植物の研究では解明できないその謎を解き明かし、植物科学と森林育種の未来につなげたいです。
入賞

北名 美雨(きたな みう)
所属:広島大学・日本学術振興会 博士課程後期1年・特別研究員DC1
研究テーマ:視力や視野に応じた文字形状を明らかにして、誰もが必要な文字情報にアクセスしやすい環境整備を行います。
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研究について:
私は、弱視者にとって読みやすい文字の条件を明らかにするため、文字の大きさに加えて幅と高さの比率に注目しています。視線計測や読み速度の測定を通して、どのような文字形状なら一度に認識できる文字数が増え、無理のない姿勢で速く読めるのかを調べます。さらに、教科書や薬の箱、公共表示など面積が限られる場面でも活用できるよう、視覚特性に応じて適切な文字条件を提案するツールの開発につなげ、教育と生活の両面で役立つ形を目指しています。
研究の背景と課題:
弱視者への支援では文字を大きくする工夫が行われていますが、拡大すると教科書は冊数が増え、持ち運びや費用の負担も大きくなります。一方で、薬の箱や表示は面積が限られ、文字が小さくなって読みにくくなる課題があります。そこで、限られた面積でも読みやすい文字で必要な情報量を届ける研究が求められます。
研究が目指す未来:
この研究によって、見え方の違いに応じて文字環境を科学的に調整できる社会を目指します。教育、医療、公共表示、商品表示などで、必要な情報を無理なく読める仕組みが広がれば、学びや安全、社会参加の機会をより公平に支えられます。
受賞者からのメッセージ
このたびは、受賞者に選んでいただき感謝いたします。読みにくさは、本人の努力だけで解決する問題ではありません。見え方に合う文字環境を整えることで、誰もが必要な情報にアクセスできる社会を目指しています。
入賞

中川 茉莉(なかがわ まり)
所属:東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野 医員
研究テーマ:クラウンやブリッジ(被せ物)、義歯(入れ歯)、インプラントといった補綴歯科治療が食事内容や食事性炎症指数にどのような変化をもたらすのかを明らかにする。
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研究について:
クラウンやブリッジ(被せ物)、義歯(入れ歯)、インプラントといった補綴歯科治療により、咬合支持(噛み合わせ)が回復することで、食事の質がどのように変化するのかを追跡します。具体的には、食事内容から炎症に関連する食品や栄養素の摂取バランスを評価し、食事性炎症指数の変化を検討します。歯・お口の健康を保つことと、より健康的な食生活とのつながりを探ります。さらに、口まわりの機能や食事、全身の病気との関連についても明らかにしたいと考えています。
研究の背景と課題:
「歯」は日々美味しく食べる上で欠かせない存在である。歯の数が減少すると口腔機能が衰え、硬い食品や繊維質の多い食品を避けるようになり、糖質・脂質摂取量が増加することが示されている。しかし、お口の状態と食事内容の関連については十分に分かっていない。歯科治療と食生活をつなぐ新たな視点が必要である。
研究が目指す未来:
「歯・お口の健康を保つこと」が「健康をつくること」につながる歯科医療の実現を目指す。将来的には、口腔機能に応じた食支援や食品開発を通じて、誰もが無理なく健康的な食生活を続けられる社会をつくりたいと考えている。そして、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸、医療費の抑制に貢献したい。
受賞者からのメッセージ
歯科治療は、噛めるようになるだけではありません。食べられるものが広がり、食事の質が高まれば、健康そのものを支えられる可能性を秘めています。口と全身、「食」をつなぐ新しい歯科医療の形を目指します。
Award Ceremony
祝賀パーティーでの様子を写真でご覧いただけます。






















授与式当日のプログラムや受賞者の様子をレポート形式で掲載を予定しています。
Behind the Artwork
研究から、一枚のアートが生まれるまで
研究から、一枚のアートが生まれるまで
研究内容から、どのように一枚のコンセプトアートが生まれたのでしょうか。
研究テーマやその背景、研究が目指す未来を読み解き、アイデアや構図を検討しながら、一枚の作品へと仕上げていきました。
ここでは、初期のラフスケッチから完成作品に至るまでの制作プロセスをご紹介します。
From Sketch to Artwork
制作初期に描かれたラフスケッチと、そこから生まれた完成作品をご紹介します。アイデアがどのように一枚のアートへと形になっていったのか、その過程もあわせてご覧ください。


制作は、まず20件すべての研究概要を読み、それぞれの研究の「核」を探すところから始まりました。そして、トレーディングカードのコレクションのように、並べたときにも一枚一枚の個性が際立つよう、研究を象徴する英単語をタイトルに設定しました。頭文字が重ならないようA〜Zの中から言葉を選び、研究の特徴と響きの両方を考えました。
そこから、研究内容をどんなモチーフや比喩で表現できるかを考え、ラフスケッチへ。初期ラフはあえて赤と青の2色だけで描き、アイデアや構図を確認することを重視しました。研究者にラフを確認していただいた後、完成版では色彩の幅を増やしつつ、シリーズとしての統一感を保つため、ラフから引き継いだ青と赤を基調色として残しました。
Creator’s Comment
コンセプトアートの制作を振り返り、研究をビジュアルで表現するうえで難しかったことや工夫したこと、作品に込めた思いなどをお聞きします。
大内田 美沙紀
北海道大学 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP) 特任助教
博士(理学)。広島大学大学院理学研究科物理科学専攻。2010年に渡米し、ワシントン大学にて人類学修士号を取得する傍ら、サイエンス・イラストレーションの専門コースを受講。修了後、コーネル大学鳥類学研究所やスミソニアン自然史博物館で経験を積み、2016年に帰国。サイエンス・コミュニケーター/イラストレーターとして京都大学iPS細胞研究所にて約5年半勤務後、2022年7月より現職に至る。
【コメント】
私は北海道大学CoSTEPで、ビジュアルを使った科学技術コミュニケーションを実践・教育しています。今回特に魅力を感じたのは、完成したコンセプトアートを「見る」だけでなく、トレーディングカードのように研究者同士で交換し、そこからコミュニケーションを生み出そうというアイデアです。
専門分野が異なる研究を言葉だけで伝えるのは簡単ではありませんが、一枚のビジュアルには「これは何だろう?」と興味を引き、会話のきっかけをつくる力があります。
ちょうどエディテージ・グラント 2026の祝賀会と同じ月に、CoSTEPでも、研究などを題材にインフォグラフィックを制作する3日間の集中演習を実施する予定です。
今回制作した20枚のカードが、研究者同士の新たなコミュニケーションのきっかけとして、実際にどのように使われていくのか、とても楽しみにしています。

Looking Ahead
研究のその先へ
エディテージ・グラント2026で選ばれた20名の研究者は、それぞれの研究を通じて、新たな可能性に挑戦しています。エディテージはこれからも、研究者が研究を前に進め、その成果を世界へ届けていくための活動を支援していきます。
