ワークショップ: 東京大学天文学科でのワークショップ:講師の覚書

東京大学天文学科でのワークショップ:講師の覚書

この記事は講師のメアリー・ニシカワ(Mary Nishikawa)が書いたものです。2時間にわたる講義の最重要ポイントがまとめられています。

 

講師の覚書:
ここで宇宙学者と理論物理学者の方に講義をすることになっていました。どうしたらよかったでしょうか。いろいろ調べてきて、彼らの研究分野が実験宇宙学だとわかりました。大学の新入生だったとき、哲学の教授が宇宙学者だったことを思い出しましたが、宇宙の始まりについて哲学的に考えたり、他の世界の存在について考えたりすることは、彼らのテーマにはなりそうもありませんでした。

 

いろいろ調べたところ、意外なことがわかりました。彼らは実験データを使って他の宇宙の存在を予測しようとしているのです。なんてすばらしいことでしょう。

 

さて、彼らの研究の結果を報告するということについてです。これは、私が予想していたこととはちょっと違っていました。特に、私は生物医学の経歴をもっていたからです。

 

データはアメリカ、日本、オーストラリア、ヨーロッパ、その他の国の国立天文学データセンターから継時的に収集されています。一つのセンターで収集されたデータは、別のセンターによる確認が必要です。こういう形での協同から、非常に多くの著者が名を連ねる論文が生み出されるのです。時には著者リストだけで1ページになることもあります。ですから、質問は「研究論文を書くとき、その分野で頭角を表すにはどうしたらよいか」になります。

 

1つの方法は論文の第一著者になること、そしてもう1つは、誰もが語り、証明あるいは反証しようとするような奇抜な説を立てることです。さらにもう一つ、ある理論を思いつき、みんなが解きたいと思うような詳細にわたる計算によって裏づけることです。 

 

最後に、一番簡単なのは、リサーチ・クエスチョンを作るときに、現在時制で書くということです。

なぜ現在時制で書くのがそんなに重要なのでしょうか?
現在時制は、書き手は自分が書いたことを心から信じている、ということを物語っているからです。あなたは、自分の説が真実であることが証明され、真の命題になることを確信しているのです。

ですから私はいつも、どんな分野の研究者に対しても、自分の研究を信じなさい、価値のある説を立てなさい、研究の結果が失敗に終わったり自分の説が正しくないことがわかったりしても、心配しないようにしなさい、と言っています。現在時制で書きましょう。

 

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このセミナーが終わる頃には、参加者はみな、動詞の時制は宇宙学と同じくらいわくわくすると確信していたと思います。少なくとも、そうだったらといいなあと思います。

正確に使われている言語は本当に大事であり、報告している研究と同じくらい(言語)表現には価値があるということがわかります。私たちの言葉は永遠に残り、永遠に残るがゆえに、自分を誇れるために書けるよう最善をつくし、自分が書くものを誇りとしなければなりません。