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「世界に認められる獣医学の専門医へ」加藤久美子先生(くみ動物病院)

Editage Insights | 2014年1月23日 | 14,654 ビュー
加藤久美子先生

加藤先生のご経歴、研究に関して教えてください。

大学卒業後の4年間を一般の獣医師として勤務し、その後、夫と動物病院を開業しました。勤務医として働いている間、毎日の診療と生活に追われて働く周囲の医師たちの姿を目にし、「キラキラと輝きながら獣医師としてあり続けるにはどうすべきか?」、「専門医として診療できる分野がほしい」と考えるようになりました。現在では日本でもようやく専門医になるための教育制度、認定基準が整ってきていますが、私が学生だった頃の日本の獣医学の教育制度では、獣医師の国家試験を合格することが大前提であり、臨床医をめざすのであっても動物全般の診療がメインでした。そのため、卒業後は犬猫などの小動物の一般臨床を行い、興味のある動物の歯科学と皮膚科学の専門分野は、独学で知識を身につけるしかありませんでした。しかし、独学や先生方のセミナーを聞いているだけでは頭打ちになってしまうと思い、専門教育制度が充実している海外の専門医の先生のところで、何かをつかみたいと考えるようになりました。「世界に認められる専門医として進んでいきたい」、「何処を、誰につつかれても王道で行きたい」。こういった気持ちが、開業医として病院経営をしながらも、勉強を続けていくエネルギーになりました。

 

専門医を目指し、1996年にニューヨークにあるアニマル・メディカルセンター(AMC)のティーチング・ホスピタルで研修を受けるため渡米することを決意しました。現在では既にこの教育システムは廃止されていますが、ここには、インターナショナル・グラジュエートコースがあり、世界中から獣医師免許を持った先生方が、アメリカの獣医師免許を得るための講義を受講しに来ていました。まず、10週間の集中講義を受けた後、AMCにて臨床研修を行います。10週間の講義では、もともと興味があった歯科学や皮膚科学以外の専門科目も受講し、受講後には歯科学や皮膚科学よりも眼科学に惹かれ、獣医眼科学の勉強を本格的にしていきました。眼科学は渡米してから勉強を始めた分野で、現地の先生方に基礎から習いました。当時は、2名の米国獣医眼科専門医がAMCに勤務していましたが、このうちの一人のAlexandra van der Woerdt, DVM, MS, DACVO, DECVOの下で継続的に獣医眼科学を学びました。現在も彼女との交流は続いており、ありがたいことに共同研究や執筆論文へのアドバイスなども頂いています。この先生方たちの影響は非常に大きいものでした。そして、2011年にはAsian Society of Veterinary Ophthalmologyが設立され、この学会で獣医眼科の専門医として認定されました。

 

くみ動物病院での診察と運営をしながら、どのようにして米国で勉強されたのですか?

病院経営をしていましたので、学生として大学に入学するという長期留学ができないという状況でした。日本で仕事をしてお金を稼いで米国でビザを取得せずに滞在できる3か月間以内の短期間で勉強をし、戻ってくるという形で勉強をしていました。動物病院にはハイシーズンとオフシーズンがあり、特に犬の場合は、フィラリア(寄生虫の1つで、蚊の媒介によってイヌの心臓に寄生)の予防接種のオフシーズンになる秋から冬の間に行くのがメインでした。冬以外にも少しでも時間があれば、van der Woerdt 先生がいるAMCに行き、診療や助手としても手術に立ち会わせてもらい、解らないことはその場で質問をしたり勉強をして日本に持ち帰り、自分の臨床に活かして、また勉強に戻る、という生活を1999年9月まで、約4年間続けていました。年に3回くらいAMCを訪れて勉強していました。

学校選びは、仕事をしながら勉強ができる学校が限られていたので、短期滞在で勉強できる環境がある病院を探しました。その中で、私を受け入れてくれた先生がいらっしゃるティーチング・ホスピタルを選びました。

 

現地では英語をどのようにして勉強されたのですか?

米国に行ってからです。「習うより、慣れろ」という感じでした。実際に講義を受け、英語を使いながら耳が慣れていったという感じでした。ライティングに関しては、地道に読み書きを繰り返してやっていきました。

 

獣医免許取得後、Diplomate(専門医)になるための過程を教えてください。

日本ではまだシステムが確立されていませんが、米国では専門医になるにはいくつかの段階があります。まず、獣医大学を卒業してから獣医師免許を取得し、1年間インターンとして働きます。その後、3年間レジデントとして、専門医の先生のもとで働きます。それからDiplomate専門の試験があってそれに受かった人がDiplomateと名乗ることができます。米国の眼科医の場合は、年に5~6人しか受からない狭き門です。

 

先生は帰国された現在でも臨床をしながらも研究をし、論文発表をされていますね。

そうですね。米国の眼科専門医の先生方からご指導いただき、レジデントとしての教育を修了することができました。1999年の10月からは論文博士を取るために東京大学の農学部に所属している動物医療センター(VMC)に眼科医として入りました。ここでは眼科臨床を行いながら論文を執筆するという目的で、高度医療科学研究室の研究生として在籍しました。米国に行った当初は私個人のために眼科学の勉強をしていました。しかし海外の専門医の先生方が、日本からの一訪問者の獣医師に専門の眼科学を基礎から教えてくださいました。米国で出会った先生方のおかげで、帰国後は米国で学んだ眼科学を次の世代に伝えていかなくてはいけないと気が付きました。これがきっかけで研究をし、論文を書き続けています。米国での経験は技術習得や研究だけではなく、それを取り組む先生たちの姿勢と日本人の姿勢の違いにショックを受けました。その違いを埋めるためにもう一度大学に入らなければいけないと感じました。

 

アメリカでのショックとは具体的には?

基礎的な勉強の厚みが違うと感じました。我々も6年間勉強をやっているのに……。アメリカにはベットスクールという教育機関があり、一般大学の卒業後にベットスクールで4年間勉強をしています。この4年間の違いで、獣医になる前の知識量が全然違います。通常の大学を卒業してから、さらに獣医師になりたいもののみがベットスクールに入学する教育システムの違いがあるからだと思いますが、ハンマーで殴られたくらいのショックがありました。アメリカの大学の教授の先生方は「専門医の集まり」という感じですが、日本であると、オールラウンドの知識がある先生方が教えているので、伝わってくる知識も広く浅くの知識になってしまうと思います。アメリカでは高名で教授クラスの先生方でも常に自らが研究し、論文を執筆し続けている先生が通常のように沢山おられ、このような日本との教育環境の違いにショックを感じました。また、獣医になろうとして大学に入学する動機は同じでも、アメリカの学生の場合は明確に「どんな獣医になりたいのか」と、先のことまで考えながら勉強している事が大きな違いの1つの要因になると思います。日本の学生は10年、20年先を考えている学生が少ないと感じます。自分で知識を取りに行くという姿勢で勉強している人が少ないのではないかと思いました。

 

Editageを長く使われていますが、その理由は? また、ご要望はありますか?

今まですべての論文がアクセプトされています。リジェクトをされずに、リバイスをしながらもアクセプトされているのでエディテージを使い続けています。国際学会で初めて会った研究者や先生方と、どのようにしてコミュニケーションをとるのか良いのか、その練習の場としてのラボ、ワークショップなどをエディテージに提供してもらえるといいですね。

 

今後の抱負は?

眼科専門医ですので、臨床だけではなく、どのようなメカニズムで疾患が起きているのかということを、解明したいです。私はイヌの緑内障を研究しています。緑内障の臨床での症状についての報告は多くありますが、発症するメカニズムについて遺伝子解析を通して解明をしたいと思っています。また、個体によって、薬に対する反応が違うので、その原因も明らかにしたいです。人間と同様、同じ種の犬や猫であっても、効く薬とそうでないものがあり、ペットにもオーダーメイドの医療があるのです。

また、「今後どうなっていくのか?」ということを一番心配しているペットの飼い主様に、現状を確実に理解できるような明確な説明と、選択できる治療の紹介、その予後と今後の見通しについてこと細かく伝えていきたいです。教科書など、一般的に知られている現象が一体どのような仕組みであるのか、そして、治療方法は本当に適切であるのかどうかを明確にしていきたい。今まで盲目的に信じられてきたことが本当に真実で適切なのかを明確にしたい。その上で、今後そのペットにどの様な事が起こり得るのか。先の見えるような診察をしていきたい。そのため、臨床と研究を併用していくことが私の目標です。

 

若手研究者へのアドバイスをお願いします。

どういう医者になりたいのかというのを早い段階から持つべきだとおもいます。視野が狭いと、どのようになりたいのかというのがわからないと思います。視野を大きく広げて、できるだけ多くの影響を受けに様々な場へ出ていき、人脈を広げてほしいです。国内でも、海外でも、できるだけ多くの先生たちと出会い、話しをすることが大切であると思います。今までの学会は欧米の先生たちが中心でしたが、今はアジアの学会もあり、世界中に輪が広がっています。多くの人たちと出会うことによって、自分は何がしたいのか、何に興味があるか?という事が、だんだん見えてくると思います。

 

加藤久美子先生のプロフィール:出身は埼玉県。北里大学大学院獣医学専攻卒業。趣味はシュノーケリング、ゴルフ。病院のサイト:くみ動物病院

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