「糖尿病とアルツハイマー病の関係を探る研究」新郷明子先生(沖中記念成人病研究所)

「糖尿病とアルツハイマー病の関係を探る研究」新郷明子先生(沖中記念成人病研究所)

新郷先生のご研究について教えてください。

トレーニングを積み重ねることにより記憶力や学習力が改善されることはわかっていますが、「気を付けていても忘れたり、わからなくなってしまったりするのはなぜか?」という永遠の課題みたいなものがありますよね。脳の機能について研究をしていく中で、糖尿病の患者さんは、アルツハイマー病に罹患する率が糖尿病でない人に比べて高いことが、最近は知られるようになりました。今、私はこの理由を探る研究をしています。糖尿病の治療に携わるお医者様の中には否定的な見解を示す方もいらっしゃいますが、糖尿病とアルツハイマー病との関係を示す報告は、多数あるのです。

 

糖尿病とアルツハイマーの関係について

よく知られているアルツハイマー型の原因として、アミロイドβタンパクが脳の中に異常に出てきて溜まり、神経細胞の働きや生育に障害をもたらすことがあります。それが脳機能そのものを低下することにつながると考えられています。 脳は身体の司令塔です。特に「思考」する生物にとっては、例えばここにアミロイドβタンパクが溜まると、どんな表現であっても、指令そのものがうまく伝わらなくなってしまいます。そういったもののひとつが、アルツハイマー型の痴呆症であると考えられています。しかし実際には、加齢とは関係なく、認知機能に障害が生じることがあります。それは明らかな痴呆とされなくても、記銘力・記憶力の低下であったりもします。多様な種類やレベルがありますが、そこには「糖尿病が背景にあるのではないか」という仮説があります。

血糖値を正常に保つホルモンのひとつに、インスリンがあります。このインスリンの受容体は、脳内の海馬にも多く存在しています。それは、海馬もインスリンを介して機能している、ということです。糖尿病はインスリンの働きや働き方に障害が起きる病気です。また、インスリンが脳で機能しない状態になるということは、脳が「糖尿病様状態」になっているともいえます。そのような時、脳機能が低下するのは必然的であろうから、認知機能、記憶や学習機能などに支障が出るのではないか、という仮説に行きつくのです。

糖尿病のラットを使って認知機能を調べると、「認知機能が低下しているラットが多い」ことが分かりました。ただ、糖尿病の動物は体力的に弱っていることが多く、行動学的な実験に用い続けるには不向きです。そこで頭の中だけを「糖尿病の状態」にしたラットを使って実験をし、仮説を証明しようとしました。結果として、仮説に合致しているデータが出てきました。つまり、糖尿病と認知機能障害には関連性が示唆されることが分かりました。認知機能障害には脳血管障害が強くかかわりますが、ラットの脳の血管はヒトのように複雑ではありません。私の実験結果では、脳血管障害がなくても、認知機能障害は生じる、ということが分かったわけです。

 

最近の脳神経分野における研究のトレンドは?

近年、「認知機能とは何か?」ということを、研究している人がだいぶ増えたように思います。時代の流れか、10年くらい前からしばらくの間、遺伝子の発現様相で機能を解明しようと、DNAアレイを駆使する解析ブームがありました。脳機能そのものに、遺伝子そのものが直接働いているかどうかも、同時にわかり始めました。その前は、いろいろな方法で組織を構成する物質やら成分やらを染め分けて解析する形態学的手法があって、その物質や成分を構成するタンパク質を作っている遺伝子の配列や機能を知る観点からその遺伝子を解析するという、「細胞の中身」を解析することが多かったように思います。しかし、今の「脳科学」のトレンドとしては、「細胞」の解析はもちろん多いですが、「組織」を解析する研究も多くなったように思います。脳はひとつの臓器であって、ひとつの臓器ではないので、どこの面を見るのか、で全く違うものを見ることになりますから、形態学的観察の必然性を伴う、というのが、結局の理由なのでしょうね。また、タンパク質そのものを解析することで、創薬につなげようとする面もありますね。 脳神経科学の研究では、細胞そのものがどの様にして病気になって、どのように症状が出ているのか、という課題の解決へ、着々と進歩を見せています。これまで原因が分からなかったことが、iPS細胞の研究によって解明できるようになったからではないでしょうか。

 

今後注目している研究はありますか?

脳のアンチエイジング、です。お肌がキレイでピチピチでも、頭が冴えていないとだめですよね。これからは頭の中のアンチエイジングを考えていきたいと思います。新しく細胞を増すことができれば良いのですが、それはそれで、神経細胞ゆえに至難の業です。実際のところ、成人であっても神経幹細胞が脳内に存在することが分かっていますが、それを見つけて増やすのは、砂浜でビーズを探してネックレスを作るくらい困難なことです。ですから、増やすことを考えるよりも、あるものを大事にしていくことが大切だというのが私の考えです。この幹細胞が神経細胞に分化できる環境を整えることが脳のアンチエイジングであると考えている研究者もいるようです。この、神経幹細胞に関する研究は、一時ものすごい勢いで多くの人が研究をしていましたが、今はiPS細胞が出てきたので、それまでとは違った様相を見せている気もします。

 

エディテージの論文投稿支援サービスを使ってみての感想は?

まず、初めに感じたのはレスポンスが早いということです。原稿に対する質問に関してもすぐ返事を返してくれたところがよかったと思います。他社では、元原稿の内容を勘違いされて校正された箇所を再び直して再校正を依頼したら、数日間レスポンスがなく、再三問い合わせをしたその結果、それは新しい原稿の扱いになるので新規料金といわれました。再校正も一作業のうち、と聞いていたのに、曖昧だったんですね。エディテージの対応は、曖昧になりやすい再校正作業の内容についても明確でしたし、非常に良いと感じています。

また、評価が「辛い」ので、安心できます。少し辛すぎて落ち込みもしますが、「これをよくするためにはどうしよう」という前向きになれる辛口な評価でした。 前回の論文も評点は辛かったです。初めてお願いした論文投稿支援サービスの「投稿ジャーナル選択サービス」では、こちらが考えていたよりも、インパクトファクターがかなり低いジャーナルを推薦という評価が出ました。それを見て、「どうしよう」「希望先には全く届いていないけど」と思いつつ、「大丈夫だろうか」と迷いながらも、今一度手直しをして希望のジャーナルに出しました。結局はスムーズに採択が決まったのですが、逆に、「大丈夫だと思いますよ」と甘い評価をもらって手直しも慎重にせず投稿して、落とされてしまって遠回りするより、良心的です。本当に良かったです。

 

今後の抱負について

現在行っている研究テーマは、物的証拠と一連のストーリーとしてまとめた後は、教科書的に誰しもが知られるようになる研究がしたいです。歴史に残らなくてもいいから、誰かの頭の中に、何々と言えばこの人、と覚えてもらえるような研究者になりたいです。

 

新郷明子先生のプロフィール:現在、冲中記念成人病研究所に勤務。北里大学卒業後、東京慈恵会医科大学医学部助手、国立がんセンター研究所任意研究員、放送大学を経て、2010年3月まで兵庫大学准教授。専門は、神経科学、分子生物学(分子腫瘍学、分子神経生物学)、細胞生物学。医学博士(大阪大学)。趣味はアウトドア・アクティビティ。

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