分野を超えた出版(論説)

分野を超えた出版(論説)

最近読んだ記事の中に、査読付きジャーナルに研究論文を発表するだけでなく、科学雑誌や新聞も含め、より広い読者に対して執筆活動を行うことの重要性を説いたものがありました。そうすることで、他分野の科学者にも読んでもらえるかもしれません。狭い専門分野の外に出てみれば、結局は誰しも一般人なのです。

研究論文一本あたりの平均著者数という単純な指標を追ってみると、その数は着実に増加を続けているという傾向が明らかです。そのデータを更に調べると、著者の多様性が高まっているという傾向も分かります。しかも、著者の活動場所や出自だけでなく、専門分野の多様性も高まっているのです。なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。その原因の一つとして、現在の最先端の研究が、学際的であることが挙げられます。ほとんどの場合、共同研究では、一個人が単独で持ち合わせていることがとうてい不可能なほどのスキルや知識が必要とされるのです。私は今、エリック・カンデル(Eric Kandel)氏の著書In Search of Memory: the emergence of a new science of mindを読んでいます。長期記憶の生物学的基盤を追求する著者の話が大変興味深く書かれている本書には、何十年にも渡る研究のほぼ全ての段階で、カンデル氏がいかに自分の研究チームのメンバーのスキルや視点によって助けられてきたかが書かれています。この点が、本記事の内容と通じる点です。

科学と人文学の二分化は、目新しいものではありません。C.P.スノーの「二つの文化と科学革命(The Two cultures)」(講演および著書)は1950年代まで遡ります。しかし、情報へのアクセスが容易となり、デジタル化の進んだこの21世紀において、この2つの文化を統合していくために必要なのは、教育的介入だとは思えません。多分野にまたがる大きな研究チーム、これらのチームの間の熾烈な競争、そして情報への容易なアクセスは、多様な専門分野間の溝を埋めることに大いに貢献するでしょう。出版された論文は、諺にある通り、氷山の一角にすぎません。異なる立場からの意見交換、研究チームのメンバー同士で交わされる研究の話、そして科学者の原動力である生来の好奇心による効果は、いずれも表からは見えないものです。

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