科学の進歩を促すため、官僚主義からの脱却を宣言:中国

科学の進歩を促すため、官僚主義からの脱却を宣言:中国

中国は、科学研究における世界的リーダーへの階段を着実に上っています。同国での研究は2002年以降急速に増加しており、現在の論文数は世界第2位です。また、科学の進歩を加速させるために多額の投資を行なっており、研究開発費(R&D)は米国に次いで第2位です。しかし、研究とイノベーションに投資した分の見返りが十分ではないと認識するようになった中国政府は最近、科学技術分野で最大の効果を発揮できるよう、現在の研究システムの改善に乗り出しています。


このような流れの中、新しい動きがありました。2016年6月初旬、中国共産党中央政治局と国務院は、イノベーションを中心に据えた開発のための国家戦略を発表しました。この戦略は、多くのイノベーションを呼び起こすための刺激策であり、その効果を高めるための投資拡大が約束されています。中国の習近平国家主席は5月に開催された科学技術に関する国家大会で、2020年までに世界で最も革新的な国の仲間入りを果たし、2030年までにイノベーションにおける世界のリーダーとなり、2049年までに科学技術における世界のリーダーとなることを宣言しました。李克強首相は同大会で、科学技術に対する情熱を高めて展望を持つ必要があること、そして研究者が革新と進歩を実現できるような環境を整える必要性があるという認識を示しました。科学の進歩が阻害されたり、研究者と科学者の可能性が制限されたりすることのないよう、中国政府は科学・研究への資金助成において、官僚主義からの脱却を図ると発表しました。


中国では長年、時代遅れの管理規定や規則が科学への資金助成の足かせとなっています。研究と資金助成の管理について、先進国との間にはまだ溝があります。研究資金助成に関する規定が柔軟性に欠けるため、第一線の研究者には、中国が魅力的に見えないのです。さらに、助成金獲得のプロセスが官僚主義的で時間がかかるため、研究者の生産性を低下させています。これらの問題が、長きにわたって大学に負担を強い、科学者の情熱に水を差してきました。管理上の障壁を取り払おうとする今回の取り組みは、潜在能力を高め、イノベーションの増加を実現するとともに、「全要素生産性」を改善しようとするものです。


規制の改定によってどのような変化が提案されているのか、詳しく見てみましょう。


1. 資金助成における官僚主義の撤廃:
研究助成金を得るために必要な事務手続きを減らす。助成金の使途の柔軟性を高める。新規則では、研究者が研究に専念し、事務手続きで忙殺されることがないよう、高度な財政システムの必要性を強調している。
 

2. 大学の自主性に対する一層の尊重と、支援額の増加

大学や研究機関の研究開発プロジェクトにおける自主性をより尊重する。大学での研究目的の備品購入に対する制限を緩和する。大学・研究機関・企業に対し、長期的な財政支援以外にも、研究を支援するラボや科学技術センター開設のための財政支援を行う。


3. 研究者の報酬増加
研究者への対価(もしくは金銭的報酬)における比例計算の上限を撤廃する。改定後の規定では、研究者への金銭的報酬は、直接経費(備品調達費控除後)の前年比5%以内から20%以内に引き上げられた。また、大学院生や客員研究員を含め、研究プロジェクトの参加者全員への給与支払が可能となる。


4. 研究者の旅費の払い戻しの簡便化
中国の研究者にとって旅費の払い戻しは大変な作業で、領収書等に関する複雑で厳しい規則があった。新規制では、研究者がフィールドワークや学会などの出張に出やすくなる。大学独自の旅費返還規定を作成することが許され、出張に伴う請求書の処理手続きの負担が緩和される。


 

大学や政府機関は、新しい規制を歓迎しています。これまで大学に巣食い、研究の進展を阻んできた重要な諸問題が解決されるという期待があるためです。学術界も、この動きが研究者のやる気を鼓舞し、今まさに必要とされている研究とイノベーションに必要な熱意を創出するものと受け止めています。

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