若手研究者のための原著論文の書き方指南

若手研究者のための原著論文の書き方指南

学術誌は様々な種類の論文を出版しますが、もっとも価値があるとされる出版物は原著論文(original research article)でしょう。原著論文は科学文献における一次資料であり、未発表の新たな知見を提供するものです。著者は、実験、アンケート、観察などを通して特定のテーマについての研究を行い、原著論文でその結果を報告します。本記事で、原著論文とは何か、またどのように書けばよいのかについての理解を深めましょう。

原著論文とはどのようなものか?

原稿が原著論文とみなされるためには、以下の条件が必要となります

  • 実際に研究を行なった研究者が書いたものであること
  • 仮説あるいはリサーチ・クエスチョン、目的、方法が詳しく述べられていること
  • 結果が報告されていること
  • 結果の解釈が行われ、その意義が議論されていること

注目して頂きたいのは、ポジティブな結果が得られなくても原著論文として出版することができるという点です。研究結果によって仮説の誤りが証明された場合、その研究結果は「ネガティブである」といわれます。しかし、ネガティブな結果も他の研究者にとって有益な、重要な知見を提供するものです。ですから、ネガティブな研究結果も出版されるべきなのです。ただ残念ながら、出版バイアス

を持ち、ネガティブな結果の研究を好ましく思っていない著者や学術誌編集者も多いようです。しかし科学コミュニティは、ネガティブな結果を発表しないと科学の進歩を遅らせることになる、ということに気づきつつあります。そのような中、Journal of Negative Results in BiomedicinePLOS ONEThe All Results Journalsのような学術誌は、研究者がネガティブな結果を出版することを奨励し、出版バイアスに積極的に対抗しようとしています。


原著論文はどのように書いたらよいのか?

新たな知見を提供する研究をして論文を書くのは、気が遠くなるような作業です。最初のうちは、何を研究してどのように進めたらよいのかが分からず途方に暮れ、確信が持てないまま混乱している研究者が大半です。それでも、一歩ずつ進んでいけば、研究をどのように進めて論文を書けばよいのかが見えてきます。研究論文を書く際の重要な段階は、以下のとおりです。

1. リサーチ・クエスチョンを選ぶ

研究を開始するには、まず最初にリサーチ・クエスチョンを決めなければなりません。そのためには、自分の研究分野で出版された文献を相当量読んでいなくてはなりません。定期的に科学文献を読む習慣をつけましょう。そうすれば、自分に興味のある分野で解き明かされるべき課題にはどのようなものがあるのかが分かってきます。これらの課題について考えたら、自分が取り組む課題を決定する前に、アドバイザーと相談してみましょう。リサーチ・クエスチョンを決定する前に、自分の興味と、その研究アイデアが実現できるかどうかの2点について考える必要があります。

2. 文献調査を行う

リサーチ・クエスチョンが決定したら、広範な文献検索(調査)を行う必要があります。文献調査は計画的に行いましょう。自分の研究テーマに関連するすべての文献を順次検索していく方法もありますし、まずは最新の文献を探し、そこからそれ以前の文献にさかのぼる方法もあります。その途中で見つけた重要な引用文献も辿ってみる必要があるかもしれません。書籍やジャーナル論文だけでなく、政府の報告書、オンライン・データベースなどの関連資料も利用しましょう。検索記録をつけておくと、原稿に参考文献や引用を書く際に大いに役立ちます。

3. 論文を構成する

原著論文は通常、特定の構成に従って書かれます。最も一般的な原著論文は、序論(Introduction)、方法(Methods)、結果(Results)、考察(Discussion)で構成されています。これはIMRaD形式と呼ばれます。

  • 序論 (Introduction):背景となる知識を述べ、何に関する研究かを説明する。また研究の目的について説明する。
  • 方法 (Methods):他の研究者が研究とその結果を再現できるように、研究の手順および使用した材料について詳しく説明する。
  • 結果 (Results):研究結果の詳細と全データを提供する。
  • 考察 (Discussion):研究結果を解釈し、その結果が対象分野にもたらし得る可能性について考察する。

参考にした文献は、必ずその情報を論文内に引用しなければなりません。論文の最後に利用したすべての文献の詳細な参考文献リストを付けましょう。


4. 論文の書式を整える

論文を書き終えたら、書式を整えます。一般的に、各学術誌には“house style”と呼ばれる、用字用語のルールや書式を定めた規定があり、自分が投稿する学術誌が指定する書式に合うように、論文の書式を整えなければなりません。これは退屈な作業かもしれません。特に、論文が掲載拒否されて他の学術誌に投稿するためにもう一度書式を整え直さなければならない場合には、特にそう感じるでしょう。煩わしさを少しでも軽減するためには、自分の研究分野でもっともよく使われている書式(スタイル・ガイド)に基づいた、標準的な書式に従うことです。そのスタイル・ガイドの一般的な規定に沿って、論文の書式を設定しておきましょう。そうすれば、実際の投稿時に、学術誌の書式に合わせるために少しだけ修正すれば済むので、多少は楽になるはずです。

疑問やご質問がありましたら、以下のコメント欄をご活用ください。出版エキスパートのアドバイスが必要な場合は、Dr. Eddyに質問してみましょう。

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