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洋書で学ぶ英語表現(4)やり直したい過去がある:The Kite Runner

by • April 30, 2014 • 洋書で学ぶ英語表現Comments (0)4972

こんにちは。エディテージで営業を担当しています屋宮です。

本好きの方なら、「忘れられない冒頭の一節」があるのではないでしょうか? ふとした時に思い出す一節、その一節を口ずさめばパッと筋書きが蘇り、読んだときの思い出が頭の中を駆け巡る、そんな忘れられない一文が。
私にとっての思い出の冒頭は、たとえば

「私は、その男の写真を三葉、見たことがある」(太宰治『人間失格』)

であり、たとえば

「それは人類がはじめて月を歩いた夏だった」(ポール・オースター『ムーン・パレス』)

であり、あるいは

「長い歳月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、おそらくアウレリャノ・ブエンディア大佐は、父親のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思いだしたにちがいない」
(G・ガルシア=マルケス『百年の孤独』)

が挙げられます。

今日、ご紹介する『The Kite Runner』(Khaled Hosseini)も、そうした印象的な一文で始まります(邦訳はハヤカワepi文庫より『君のためなら千回でも(上・下)』カーレド・ホッセイニ著)。

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小説の舞台は1970年代のアフガニスタン。主人公のアミールは裕福な家庭の子として、物質的に何不自由のない環境で育ちます。家には少数民族ハザラ人の召使が住んでいて、その召使の息子であるハッサンは、アミールにとって唯一無二の親友。村一番の凧揚げ名人アミールと、スリングショット(パチンコ)の名手ハッサンは、立場や境遇と言った大人の事情を超えて、友情を深めていきます。ところが、ある冬の日、1つの「事件」が起き、アミールは自らの臆病さゆえ、ハッサンを裏切ってしまいます。2人の友情には亀裂が入り、やがてハッサン一家は村を出ていくことに…。その後、ソ連によるアフガニスタン侵攻が始まり、アミール一家もまた、混乱の中、カブールを脱出し、難民同然でアメリカへの移住を余儀なくされます。

 

20数年後、アミールのもとにアフガニスタンから一本の電話がかかります。「まだ、やり直せる」、「事件」のことを知る父の友人は電話の向こうからアミールに対して、アフガニスタンに戻るよう促します。逡巡の後、四半世紀ぶりに生まれ故郷に帰ったアミール。内戦により元通りにならないほど変わってしまったアフガニスタンの地で彼は、仲違いしたハッサンのその後の運命と、自分の家族にまつわる秘密を知らされます。真実を知ったアミールは過去の贖罪のため、ある重大な決断を下します。

 

読むのが辛くなるほど、悲しいストーリーです。やり直しのきかない過去とその出来事がもたらす影響を、この本ほど正直に、残酷に描いている物語もあまりないと思います。「事件」を巡るアミールの態度は呆れるほどに卑劣です。「なんてひどい奴なんだ」と叫びたくなります。でも、「自分だったら、勇気をもって行動できるか?」と問いかけると、その答えは微妙です。一方で、アミールに対するハッサンの忠誠心は、残酷なまでに一途です。どこまでも強くアミールを信じ、何があってもアミールを赦す、その絶対的な信頼は宗教的ですらあります。そういう最高な友人を時として見捨ててしまうほどに人間は弱く不合理なんだという、私にとっては正直な提示が、何より印象的で、ひどく心を揺さぶられました。この本は、アミールのその後の、過ちに向き合いやり直しを試みる贖罪の本でもありますが、自分の理不尽な行動に苦悶し葛藤する子供時代の描写に、個人的にはより魅力を感じます。

 

『The Kite Runner』は、次のような象徴的な一節で始まります。やり直したい過去がある方には、落涙必至の良い本です。

“I became what I am today at the age of twelve, on a frigid overcast day in the winter of 1975. I remember the precise moment, crouching behind a crumbling mud wall, peeking into the alley near the frozen creek. That was a long time ago, but it’s wrong what they say about the past, I’ve learned, about how you can bury it. Because the past claws its way out. Looking back now, I realize I have been peeking into that deserted alley for the last twenty-six years.”

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masayuki

屋宮正享 / Masayuki Okumiya
カクタス・コミュニケーションズ
営業推進部
勤務地:東京,日本

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