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科学を読む(4)非科学者はSTAP細胞問題をどう読むべきなのか・その2 人に見えないドラゴン

by • March 25, 2014 • 科学を読むComments (0)1940

科学者でも、ましてや再生科学者でもない研究者、一般市民は、今のSTAP細胞問題をどう理解し、考えるべきなのか?

STAP報道問題、3日に1回は新しいニュースが新聞で取り上げられるほど余波が続いています。ところでこの事件報道、サイエンスに強い系の一般の皆さんだけでなく、ぜんぜん分野の違う科学者の方々にとっても、再生医療研究のかなりニッチな知識がないと本当のところはよくわからない内容じゃないでしょうか?

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「これから論文を書く若者のために」 酒井聡樹著(共立出版)

私なんかこの2ヶ月100本以上のSTAP関連記事は読みましたが、仕事柄この業界にかかわっているサイエンス好きなだけのバリバリ文系人間なので、ちょっとでも論文の内容に突っ込んだ記事を読むと頭の中はこんな感じです。

「STAP細胞研究に関するNature論文に捏造疑惑。論文の中で多能製獲得の根拠として挙げられた画像のほにゃららのほにゃららの部分がほにゃららで画像の一部が修正されている疑惑が浮上している。今回刺激惹起の実験に使われたT細胞ではDNAの組み換えがなんたらかんたらで初期化の証拠としては本来どーたらこーたらでほにゃららであるべき。さらに論文の一部が別の論文からの引用を欠いた転載であることがわかった。さらに、著者の過去の博士論文の内容が米国ウェブサイトと同一であることがわかった。」

これって普通の犯罪事件や倫理問題と違って、一般通念じゃなくて科学業界の通念を教育した上で、そもそも何がいけないのか?ってとこからスタートしなきゃいけない事件報道なわけです。いや~、自分のような人間にこの事件の真髄を限られた紙面でわかるように伝えなきゃいけないわけですから、科学報道ってかなりチャレンジングですよね。科学ってそもそもが目に見えないものに対する仮説なわけですから、「ほらね」と見せられるものって限られてるわけです。研究者の皆さんや科学コミュニケーターの方々の日々のご苦労を、この事件に対する自分の理解できなさから身にしみて感じました。

上記のほにゃらら文でもあるように、一般人や他分野の人間にとって、実験に使われたT細胞のDNA組み換えの問題なんてなんのことだかよくわからないので、STAP細胞実験の成功そのものの真実よりも「結果の捏造」「論文コピペ」という部分だけが入ってきます。この事件の最も深刻な問題は論文の捏造自体なのか、それともSTAP細胞の存在の有無なのか、それ以外なのか。波及的芋づる式にさまざまな問題が浮上して中心軸がわからなくなりがちですが、わからないなりにどう本質を理解するかは個人の努力しだいかもしれません。

賛否両論あると思いますが、私個人がこの事件からTake Awayにするべきだと思う点の1つは、「論文には作法がある」です。学生時代に論文執筆で苦労していたとき、表題の酒井聡樹先生のウェブサイトに掲載されていた「これから論文を書く若者のために」というコンテンツに感銘を受け、それこそサイトを丸ごとコピペ印刷して持ち歩いていたことがあります。後に書籍化されヒットしましたが、酒井先生はこの文章の中で「論文を書くということは、人に見えないドラゴンを見た!見た!と叫ぶことに似ている」と書かれていました。

STAP論文の疑惑が持ち上がったときに真っ先に思い出したのはこの言葉でした。論文を発表するということは大なり小なり自分以外の誰もまだ見たことがない発見を人に語ること。長旅の先、世界の果てで伝説のドラゴンに出会ったとしても、証拠を持ち帰らなかったら「よくできたお話」にしか聞こえません。そのために、論文のイントロ、マテメソ、リザルト、ディスカッション、それぞれで証拠と丁寧な解釈をいかに丁寧に積み上げるかが重要です。たとえ発見がまぎれもない真実で、この世にドラゴンが存在したとしても、みんなが信じてくれなかったら存在しないのと同じです。「私は見た」は通用しない、それが科学の作法です。

「人に見えないドラゴンと戦う準備はできましたか?」と酒井先生は最後に投げかけます。STAP細胞の発見に関しては、こうなった以上、旅の仲間を大勢に増やして村人全員でドラゴン狩りに行くしかないでしょう。今まさに理化学研究所も研究コミュニティもそれをやろうとしているのだと思います。ドラゴンが本当にいるのなら、絶対見たいですよね。

※カクタスでも、共催しているScience Talksの活動の中で「[STAPフォーラム] STAP細胞研究問題から見える、日本の研究システムの問題点と解決策は?」というトピックを立てて、研究者の皆さんからの意見やアイディアを募集しています。ぜひご協力ください。

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加納 愛/Ai Kanoh
カクタス・コミュニケーションズ
グローバルブランディングチーム
シニアマネージャー

勤務地 Mumbai, India

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